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「男の方(かた)/女の方」「男の人/女の人」「男性/女性」「男/女」

先日、東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子さんが、テレビのインタビューに答えて
「男の方(かた)に勧めたいのは…」と言っていて。

「おとこのかた」って久しぶりに聞いた!
ていうか、ほぼ忘れていたかも?!

と、話の内容よりむしろそっちに引っ張られてしまいました。

「男の方(かた)」は滅びつつある?

接客用語としては今も健在のようですが、日常会話のなかで「男の方」って、特に若い人はほとんど口にしないでしょうし、生では聞いたこともないのでは?

少なくとも私はここのところ聞いたことがなかったので、本当に新鮮、それと同時に、すごく素敵な響きだなぁと思いました。

(なお…対語として「女の方」ももちろんあるわけで、このときも上野さんは、そのあと「女の方には…」と話を続けた気もしますが定かではなく…最初に聞いたのが「男の方」だったので、男バージョンで書いているだけです)

「男の方」は、男性を丁寧にいう言葉です。
ちなみに…

男の方 (すごく丁寧で上品)

男の人 (丁寧)

男性  (事務的な分類)

男   (いろいろなニュアンスを含む)

というのが私の感じ方です。異論はあると思いますが。

ニュースで「男」「女」は犯人用語にされてしまった

数十年前は、「男」「女」はごく普通の言い方で、会話で出てくるとしたらこの言葉が多かったと思います。「男性女性」は、あまり使わなかった。
でも気がついたらテレビのニュースで、「犯人の男」「現場から逃げた女」など
犯人を男・女
と表現し、逆に
被害者や、それ以外の人のことは男性・女性
と言うようになっていました。

そしてこれが定着するに従って、妙に「男 女」が乱暴な言葉扱いされるようになっていった気がします。

昔は自分の話として「女3人で旅行に行った」と言ったし、一般的な話の中では
「男の人は◯◯な傾向があるわよね」などという言い方もしました。
しかし今はそのどちらも「女性」「男性」ということが多くなっています。
逆にいうと、「男(女)の人」「男 女」という言い方がかなり減ったのではないか。

「男 女」を表す言葉を、もう少し使い分けたい

昔の言い方を知っている私などは「男 女」に悪い印象はさほどなく、むしろ男女とも、色気がある(むろん褒め言葉として)というニュアンスにはこれを使いたい、と積極的に思う方(ほう)です。
たしかに雑誌などではまだ「〇〇な男のファッション」というのは使われるし、最近かなり減ったと思いますが「いい女」(これの意味するところについてはまた別の議論がありますが、そこには踏み込みません)という言葉も存在しています。おそらく減る傾向にあると思いますが、私としては消滅しないよう踏みとどまって欲しいなと。

ニュースで犯罪者を男/女というのだから、それがよくない印象になっていくのは仕方ないでしょう(諦め)。
でも「男の人」「女の人」という言葉も減って、あらゆるシーンで「男性女性」に統合されていくのは、なんだか寂しい。

というようなことを、上野さんの「男の方」という言葉を聞いて、改めて思いました。
男の方、男の人、男性、男。それぞれにニュアンスがあるし、同じ言葉でも文脈でいろいろな表情を見せてくれる。
男/女の言い方バリエーションは奥が深い!

だから、個人的には細かく使い分けていきたいなぁと思っています。

とはいえ今日日(きょうび)、日常会話で「男の方(かた)って…」なんて、なかなか言えませんよね(笑)。
上野さんクラスの風格と知性があってこそ自然なのでしょうが…使う人を選ぶ言葉かもしれません。

それがするするっと言える人間になれ。と、いちおう自分には言っておくことにします。



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