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15.そして一人旅が始まる ーイラン編2~ゼロからの始まり

深夜の森の中、しがみついていた車がスピードを出したら
あっさり吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる。

ぽつん、と一人暗闇に置き去り。
車から振り落とされた時に打った手がジンジンする。

この時、自分がどう反応したのか?自分でも驚きだけど
まず1番に出てきた感情は「怒り」だった。
「ふざけんじゃねー!!」と大声で暗闇の中怒鳴っていた。
そうとうアドレナリンが出ていたんだと思う。

我に返って、まずは身に付けていたポーチの中に
パスポートと現金US$200、トラベラーズ・チエックの控え
がある事を確認。
怪我も無いし、取り敢えず
この森の中から何とかして脱出出来れば
何とかなる、と自分を奮い立たせる。

窮地に立って「自分がどう反応するか?」考えた事も無かったけど
意外と泣きわめいたりする事もなく
前に進んで何とかしよう、とする自分の火事場の馬鹿力に驚いた。

遠くの方で犬の鳴き声がする。正直、怖く不安で心が折れそうになる。
「一刻も早くこの山を脱出せねば、」と方向も全く分からないけど
自分の直感に従って取り敢えず歩き始める。

この時の心境は複雑で、
「あの真夜中のドライブの状況が終わって良かった」という安堵と
「なんで、こんな目に合うんだろう?」と自分を責める気持ち、
旅の始めから僕を苦しめていた200本のフィルム、約30kgの
荷物の重さから解放され、もう写真を撮らなくても良い、という解放感。
「これからどうなるんだろう?」という不安。
「この山から無事下山出来るだろうか?」という懸念。
色々な感情が入り混じっていた。

でも、出来る事はただ歩き続ける事だけ。
真っ暗の闇の中、一人は本当に怖いので
大声で歌を歌いながら前に進む。

1時間くらいだろうか?方角も分からず闇雲に歩いていると
なんと、遠くに明かりが見えてきた!
この時は、心の底から嬉しかった。
「やっと文明に出会えた、きっと人間が居るに違いない!」と
希望が湧いた。

明かりを目指して歩き続けた。
その明かりの場所は工事現場だった。
もちろん、暗い山から荷物も持たない日本人が
早朝に一人で歩いている事に工事現場の人達もビックリしていたが
ひとまず休ませて貰い、日が昇って明るくなるのを待つことにした。
人に会えた安心感。
「これで無事に助かった!」と胸を撫で下ろす。
力が抜けて全く立ち上がれなかった。

しばらく横になっていると段々空が明るくなってきた。
これ位明るくなれば道も分かるだろうと前向きになり
道路を目指して歩き始める。

そしてとうとう、舗装された道路に出た。
乗り合いの小さなバスを見つけ何とか手持ちの米ドルで乗せて貰う。

行き先は全く分からなかったが、結果僕が最初に意図していた
イスファハンの街中に無事に着いた。

深夜何時間もグルグル回ったので、相当遠くの山に置き去りにされたと
思っていたが、バスで15分位の山に置き去りにされたのも
運が良かった。






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