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カルテに書いた本 転職してから(児童書)

2023年6月、いわた書店の一万円選書に当選しました。
どんな本が好きなのか、noteにも残しておこうと思いました。
幼い頃から今までを振り返って、時系列で書いています。

以前書いた記事はこちら

転職してから、久しぶりに絵本や児童書を読むようになりました。その中で、好きだなあと思ってカルテに書いたのが以下の3冊です。小学生の読書感想文にもおすすめです。

17冊目『ルドルフとイッパイアッテナ』 斉藤洋 講談社


司書になって2~3ヶ月がたった頃、5年生の担任の先生から、「ゾロリを卒業した子たちにおすすめの本を紹介してもらえませんか。」というリクエストがありました。私が子どもの頃にはまった本は背の色もあせていて、ちょっと古い感じもありました。本屋で見かけたのか、図書館で見かけたのか、そのあたりの記憶もあいまいです。存在は知っていたのですが、読まないままこの歳まできてしまいました。タイトルと絵のイメージから、外国を舞台とした猫の話と思い込んでいました。奥付を見ると、『1987年5月23日 第1刷発行』とあります。この本が出たときは私は11歳。近所の図書館の分室に足繁く通っていたときには、この本のことは知りませんでした。

読んでみると、なんで今までこの本をスルーしてきてしまったんだろう…とちょっぴり後悔。ハラハラするような冒険要素もあり、すっと心のなかに入ってくる哲学的な要素もあります。児童書にしてはなかなかのボリュームでしたが、一気に読みました。使われている言葉は難しくないのに、お子様向けでもなく、子どもから大人まで一緒に楽しめます。

この本の紹介をすると、たいていのクラスで何人か読んでいる子がいます。面白いのは、その子たちが貸出手続きのときや、返却本を片付けているときなど、ちょっとした時に、「読んだことあるよ。」と、感想を言いにくること。ルドルフが遠くの街まで来たいきさつ、イッパイアッテナという名前の由来、デビルとの決闘シーン…。よく覚えていて、つい最近読んだ本かのようにいきいきと語ってくれます。それだけ印象に残りやすい本なのだろうと思います。

主人公が冒険をして、メンターともいうべき他者と出会い、自分を見つめ、心身ともに成長していく、という物語の王道の話です。だから、自分と重なる部分を見つけて共感したり、自分だったらが行動できるかと考えてみたり、様々な読みができるのでしょう。そして読み終わったら「自分はこの部分がおもしろかったんだけど、あなたはどう?」と聞きたくなる本なのだと思います。

いやあ、子どもの頃に読みたかった。
でも、大人になってから読んでも、圧倒的に魅力的な本でした。

『18冊目 空から見える、あの子の心』シェリー・ピアソル 作 久保陽子訳 童心社

教員をしていたとき、いろいろな子どもたちと出会いました。中にはこちらの想像をこえた行動に出る子もいました。物語を読んでいると、そうそうこういう自由な感じの子いたなあ、私にはない発想だなあ、とのんきに楽しめます。しかし、実際の学校生活ではトラブルやけがにつながりそうなときもあり、そんなに悠長にしていられませんでした。その場その場でとりあえず対応していましたが、当時の私はその子らのことを本当に理解していなかったのかもしれません。この本の主人公もそんなタイプの子です。

大人の知らないところで友達とつながって成長していく子どもらに心を動かされます。理解ある大人との出会いも大きいとは思うのですが、同年代の子との関わりもやっぱり大きいと思います。子どもらが関わって成長していく過程は学校ならではだと思います。

勉強が苦手な子、友達関わるのが苦手な子にも読んでもらいたいのですが、子どもよりも、子ども関わる大人にもぜひ読んでほしい本です。教育書もいいのですが、当事者の思いを知るのはこういった物語の方がいいのかもと思ったりします。

リンダ・マラリー・ハント『木の中の魚』講談社を読んだときにも同じように感じました。こちらの本は生徒が読書の記録に「おもしろかった」と書いていて、気になって読んだ本です。


『19冊目 しずかな日々』 椰月美智子 講社 青い鳥文庫

この本は昨年秋の学校図書館司書の研修で、高学年におすすめの本を持ち寄るときに読みました。他の司書さんのオススメで、山本悦子『神隠しの教室』(童心社)を知り、その本が第55回野間児童文芸賞を受賞していることを知りました。この賞をとっている本、なかなかおもしろいんちゃう?と気づき、それから野間児童文芸賞を受賞した本を何冊か読みました。その中でも印象に残ったのが『しずかな日々』でした。

大人の都合で振り回されるのは、一人では生きていけない子どもです。友だちやおじいさんと過ごしながら、少しずつ大人になっていきます。何でもできて、いつでも強くて正しい、そう思っていた大人が、実はそうでもないことに気づくのって、ちょうどこの物語の主人公と同じ小学5年生ぐらいのときなのかもしれません。

私はもう大人になってしまって、僕の気持ちも、友だちの気持ちも、お母さんの気持も、おじいさんの気持ちも、先生の気持ちも、わかるなあ~と読みました。でも、もし5年生のときの私が読んでいたら、ぼく=枝田光輝に感情移入して、「大人って勝手、ひどい」としか思えなかったかもしれません。もしくは、妙に冷めて「大人って、そんなもんよね」と思っていたかもしれません。

かつて子ども時代を過ごした大人が読むのと、今子ども時代を生きている子どもが読むのとでは感じ方に違いがあるのかもしれません。たとえ感じ方に違いがあったとしても、その壁をするりと越える力が本にはあるように思います。時代をこえて、世代をこえて、人とつながることができるツールが本だと思っています。

今、学校図書館司書という仕事をしていて、本が私と子どもたちををつないでくれるということに面白さを感じます。年齢が離れていても、今までにしてきた経験が違っても、育ってきた生活環境が違っても、本を介して対等に話ができる。本って最強のツールでは?と思います。

本好きの子に薦めてはいるのですが、字の詰まった感じがするからか、あまり読んでもらえません。あなたはどう感じた?と聞きたくて、「面白い本なにかありませんか?」と聞かれるたびにオススメしています。


まとめ

私が児童書を読んでいた頃から3~40年は経っているのですから、新しく魅力手な作家さんが出てくるのも当たり前ですね。久々に読む児童書は面白いです。YAも面白い。読みたい本がありすぎます。



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