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読書の記録(34)『リスペクトーR・E・S・P・E・C・T』 ブレイディみかこ 筑摩書房

手にしたきっかけ

ブレイディみかこさんの本だったので読んでみようと思った。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』や『両手にトカレフ』は10代が主人公だった。『リスペクト』はシングルマザーが主人公なので、今まで読んできた本とは違った目線で楽しめると思った。

心に残ったところ

2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件をモデルとした小説。ホーム・シェルターに住んでいたシングルマザーたちが、地方自治体の予算削減のために退去を迫られる。人種や世代を超えて女性たちが連帯して立ち上がり、公営住宅を占拠。一方、日本の新聞社ロンドン支局記者の史奈子がふと占拠地を訪れ、元恋人でアナキストの幸太もロンドンに来て現地の人々とどんどん交流し…。
「自分たちでやってやれ」という精神(DIY)と相互扶助(助け合い)と、シスターフッドの物語。

リスペクトーR・E・S・P・E・C・T  カバーのそでの部分

中学生のころに夢中になった『ぼくらの七日間戦争』シリーズを読んでいたときのワクワク感を思い出した。理不尽なことに対して、仲間と協力して、それはおかしいと言う。新たな困難が出てきても、友達が友達を連れてきたり、新たなアイデアで乗り越えていく感じが似ていると思った。

ジェイドが仲間と声を上げたことで、史奈子の心も動き、周りの人々も巻き込み、状況が変わっていった。

普通に働いて、普通に給料を得て、普通に子育てをするということがなぜできないんだろう。この本のように、安全で安心して住む家を突然失ってしまうなんて、これも個人の努力や自己責任の範疇なんだろうか。

「私はここにいる。ただ、まっとうな、人間的な暮らしがしたいんだ!」と声を上げることの大切さをジェイドが教えてくれたように思う。

カルテに書いた『わたしはオオカミ』を読んだときの感覚にも似ていると思った。「慎ましく生きる」のも生き方としてはありなのかもしれないけれど、全てにおいてそうである必要はないのでは?と考えるようになった。自分の仕事に対する対価や評価を求めるのは別に恥ずかしいことではないと思えるようになった。

世間で言う当たり前はなぜ当たり前なのか、誰かにとって都合がいいようにできているのではないのか、という視点は以前の私の中にはなかった。みんながそうしているから、国がそう言っているから、などと思考停止になっていないか、と揺さぶられた。


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