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観るか迷っている方へ。『君たちはどう生きるか』は、シンプルな映画です。

はい、タイトルの通りです。

宮崎駿の最新作、『君たちはどう生きるか』が公開されました。

「賛否両論!」
「難しい!」
「わけがわからん!」
「つまんない!」
「面白い!」
「泣いた!」
「どこで泣くんだよ!」
「駿の自叙伝!」

色んな感想、表現が飛び交っております。
考察動画や考察noteもバンバン出てます。
みなさんがネタバレに配慮しながら(素晴らしいことですね)、上記のようなネタバレにならない感想のみを話した結果、まだ観てない人の間で「なんか難しそう……」「私が観て理解できるかな……」という空気が漂っているのを感じております。

今回はそんな、「君生き、ちょっと気になってるけど意味不明な作品だったらどうしよう。お金を払ってハズレ引くのは嫌だな」と観るか躊躇っている方々のために、このnoteを書きました。

※軽微なネタバレがあり。
君たちはどう生きるか のシンプルなあらすじ

「君生きはなぜシンプルなのか」「どこがどういう理由で難しいと言われているのか」をお伝えするため、若干ネタバレします。すみません。
ネタバレの塩梅としては
「桃太郎という話は、とある特殊な生まれの男の子が、工夫を凝らしてお供を集め、あるものを退治しに行くというあらすじです」
程度です。





難しいだなんだと言われているこの映画ですが、話の筋は至ってシンプルです。

あるトラウマを抱えた主人公がいます。新天地へ行くも、人間関係は上手くいかないし、トラウマには苛まれるし、心を開ける人もいなくてモヤモヤした日々を過ごします。
中でも、距離感に困る人がいました。その人との間には溝がありました。
けどその人が行方不明になり、男の子は取り戻すために不思議な世界を冒険します。

以上です。シンプルですね。ここだけ理解できていればだいたいOKだと思います。
誰と誰が姉妹だとか、誰と誰が同一人物だとかは、読み取れるように描かれていますが、見落とさないようにちょっと気をつけましょう。

それくらいシンプルなお話です。「全てを説明してくれる話」ではないけど、「シンプル」なお話です。

なぜ私がこれほど「君たちはどう生きるか」ハードルを下げたがるかというと、とにかくまずは観ていただきたいからです。

様々な考察屋さんたちも素晴らしい考察の数々ありがとうございます。私も大いに楽ませていただいてます。でもね、一つだけ言わせて。あんまり「君たちはどう生きるかは難解な映画である」という前提で話を進めないでください。

みんな言うじゃないですか。「この映画難しいですから〜」「分からないところだらけですよね」「意味不明な方、たくさんいらっしゃると思います」

それでなんか、うっすら君たちはどう生きるかのハードルが高くなって、新規参入者が減ったら悲しい。
世間には理解できないかもしれない映画を観たい人より、理解できる映画を観たい人の方が多い。そして彼らに興行収入がかかっている。

そして、私はこの作品は「とにかく観てみる価値」はあると心の底から思っています。

ピカソの絵って、好みか好みじゃないかはあっても、お金を払って鑑賞するに値する劇場芸術作品ですよね。君たちはどう生きるかも同じように、劇場でぜひ観て欲しいと思いました。

なので既に観た皆様。
どうか、あまりハードルを上げないでいただきたいです。考察屋の考察は最高ですが、そもそも観客は、観なければ考察をしゃぶることもできないのですから。

片隅のnoteで、君たちはどう生きるかの動員を増やすため、草の根的にハードル下げ運動を行います。


君生きが難解だ、分かりづらいと言われる理由。

君生きの「難しいと言われる」は、主に上記したあらすじの「不思議な世界」の部分です。

ただ1つ伝えたいのは、『君たちはどう生きるか』の難解な部分とは、「別に理解はしなくてもいい難解さだ」ということです。

世の中には「理解しないと作品を楽しめない難解さ」と「理解しなくても作品は楽しめる難解さ」があります。

前者は、例えばクリストファーノーランの『テネット』や『インターステラー』の展開。あるいは、『もののけ姫』の森と人間の対立。『ナウシカ』内の社会情勢や人間を取りまく環境。

あれらは、難解な部分(理屈や背景)をきちんと理解しないと話の展開もオチもよく分からず、当然感動も出来ずに作品を楽しめない作りになっています。

でも『君たちはどう生きるか』は違います。
『不思議の国のアリス』に出てくる帽子屋のセリフの真意や、ハンプティダンプティが何のメタファーか、なんて別に分からなくても楽しめますよね。
トトロやネコバスの正体なんて、分からなくてもあの話の筋は分かりますよね。
それと同じです。

考えてもいいけど、考えなくてもいい。
読み取ってもいいけど、読み取らなくてもいい。
理解できなくても、何かを感じ取って心が揺さぶられるかもしれない。

それが君たちはどう生きるかの「難しさ」のタイプです。

もちろん、「これはあれのメタファーだろうな」とか、「これはあの作品からの引用だな」「このシーンには宮崎駿のこんな心情が隠されているのでは」とかがわかったり、想像したり、考察するは楽しいとは思います。
でもそれが、感動するかどうかに必ず繋がるわけでは、ない。
「難しく考えようと思えばいくらでも難しく考えられるけど、別に難しく考えなくてもいい」
そういう作品です。

実際、「ジブリを全然観たことないけどこの映画で涙を流すほど感動した」という感想もあります。

ちなみに私は劇場で4回泣いて、終わったあとも嗚咽するほど泣きじゃくりました
が、別に泣けるシーンはありません。

そういう不思議な作品である、『君たちはどう生きるか』。
ぜひ劇場へ足を運び、「あなたは何を感じるか」を"体験"してみていかがでしょうか?

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