【#116】長野県・松川村長選挙レポート(2024 2.18)
それが「彼」の出馬条件、だったハズでした。 なので、この選挙に「彼」が出てくるとは思いもせず、出馬の報を聞いた時はサスガに慌てたのです。 そして、今までと違う戦いを繰り広げる「彼」を知り、大混乱したのでした。 一体何故、「彼」はこの選挙を選んだのか・・・
“選挙出まくりマン” こと小西彦治氏が「セカンドステージ」と位置づけ挑んだ今回の選挙。 そこで何が起こったか、そして何故そうなったのか、とくとご覧あれ。
◆松川村(まつかわむら)・概要
まず最初に申し上げなければならないのは、長野県南部にある松川町とは別の自治体であるというコト。 長野県民でも間違いやすいので注意が必要です。
面積:47.07㎢(長野県 第67位 / 77市町村)
人口:9,588人(第35位)※2024年2月1日現在
人口密度:203.69人/㎢(第24位)※2024年2月1日現在
平均年齢:50.96歳(若い順 第34位)※2020年10月現在
衆議院は長野2区に属し
◆立候補者
5期20年務めた現職が退任を表明。 次の座を巡って元副村長が立候補し無投票の公算が強まる告示直前、小西氏が今年5度目(5週連続)、昨年9月から12度目の首長選立候補してきました。 なお「村長選」は初めてとなります。
◆前回(2020年)の結果
前回は無投票で現職の平林村長が5選。 ちなみにこの方、2選以降は無投票当選でした。 そのため村長選が行われるのは20年ぶりとなります。きっとそんな状況を見て “選挙出まくりマン” は出馬を決めたのだろうと想像しますが、これまでの小西氏なら絶対に出ない選挙なのです。 この選挙は。
◆小西 彦治(こにし ひこじ)候補
毎度おなじみ、小西彦治候補です。
プロフィールについてはコチラを御参照下さい。 昨年8月から首長選出馬シリーズが始まり今回が12戦目。 選挙に出続けているというコトは当然全敗なのですが、得票率を見ると、
となり「供託金没収ライン」となる「得票率10%以上」で見ると9勝2敗となります。 得票率10%を超えれば供託金が還ってくることに加え、選挙運動費用を自治体の公費、つまり税金から負担されます。 小西氏がこんなに選挙出まくりなのは選挙運動費用のうちポスター代金を昔から付き合いのあるデザイナー業者と組んで、作成にかかった実際の費用より多めに請求し利ざやを得ているのではないか、という疑惑が有り私のようなライターや選挙ウォッチャー界隈で注目されているのです。
その疑惑の根拠となるのが、このポスター。 毎回似たようなデザインので⑨川越町長選~⑪舟形町長選の “町長選3連発” では全く同じポスターを使いまわしているコトが判明しています。
ところが今回は初の「村」長選。 本人曰く「作成が間に合わなかった」ため、
私が “ゴチャゴチャした左側” と呼んでいる「お約束」というタイトルの文章のみ松川村長選用に作りラミネートコーティングして上貼りしていました。 過去にも同様のケースが有りましたが、サイズぴったりで作ればイイものを若干違うため上貼りなのが見た目でもバレバレです。 彼がこの村長選をどう捉えているのかが伝わってきます。 雑なんですよ、何もかも。
私が住んでいる長野県で二度目の出馬。 前回の須坂市長選で過去2番目の得票率を得たから「長野はイケる!」と思ったのでしょうか。 随分ナメられたもんだなと思いつつ、何故松川村長選をチョイスしたのかが気になって会見に行ったのでした。
いつもの調子で雄弁に語り倒す小西候補。 過去の首長選ではポスター貼ったらサッサと居住する伊丹市に帰るコトが報道陣全員が知っているため、各社集中的に質問を浴びせます。 小西氏の記者会見を見るのは3度目ですが、よくもまぁ毎週毎週語るコトが出来るなぁと彼の余計な能力には感心するようになってきました。
彼は今回「選挙運動のセカンドステージ」と何度も発言。 冒頭に書いた通りこれまで相手が「現職」で「多選」で「高齢」な選挙をセレクトしていたのに今回「新人」で「初の選挙」で「7歳差」と全く異なる構図の選挙に出てきたのも「セカンドステージ」だからのようです。 そしてもうひとつ驚愕したのが、
と宣言したコト。 冷静に見れば候補者として当然のコトではありますが、先述の通り “ポスター貼ったらサヨウナラ” でお馴染みの小西氏がフツーの選挙運動するというのは驚きでしかありません。 だって、選挙運動をまともにすればするほど費用がかさみ、利ざやに対する “利益率” が減るのは明らか。 それなのに今回まともに選挙運動するのは前週の印南町長選で得票率10%割れとなったのが相当効いているのだと感じました。
報道陣にせかされて駅前で街頭演説をさせられた小西候補。 とはいえコレで “絵作り” としては完了で、ポスター貼り終えたらきっとなんやかんや理由つけて帰るんだろうなと思い、それを確かめるために期間中の水曜と金曜に取材で入りました。 村民から「小西候補? 見ないねぇ、帰ったんじゃない?」という証言を得るために。
ところが、水曜に「今日、選挙カーで村内をまわってたよ」というまさかの証言が! 選挙カーを持ってきたのも公費負担を得るための “絵作り” だろうと思っていたので。 それを聞いたら帰るワケにもいかず、村内をグルグルまわったり、
村内の演説スポットである西友と駅前で張り込みしたりしましたが、見かけるコトはなく。 なので「やっぱり、ちょこっとまわって帰ったんだ」と思い金曜に改めて入ったらやはり「今日も選挙カーでまわってたよ」という話が。 しかも木曜には駅前で2度目の街頭演説もやったようで、どうやら小西候補は本当に選挙運動をしていたようです。 まさかの展開です。
ただ、もう一度冷静になってみると「見た」という証言は得たものの私は出会わず、ビラを全戸に配るコトもなく(地元紙によると手渡しで出会った村民に渡していた模様)ごくごく小規模の選挙運動に終わってしまったようです。
これではただの “弱い候補” に過ぎないワケで「選挙運動をしてますよ!」という既成事実は作れたものの、得票に繋がるかどうかは・・・ 正直疑問のまま取材を終了したのでした。 さて、結果はどう出るでしょうか。
◆選挙結果
結果は当然、元副村長の須坂候補が初当選。 投票率も辛うじて50%を超えました。 そして小西候補の得票率は、
となり、2週連続の10%割れとなり供託金没収。 そしてせっかく従来より厚い選挙活動をしたのに費用が全額自腹となりました。
◆松川村長選出馬は、致命的な選択ミス
と、いうワケで、2週連続の得票率10%割れとなってしまった小西彦治氏。 選挙カーを走らせたコトも街頭演説をしたコトも票には結びつかなかったのですが、この結果は「松川村」を選んだ時点で既に決まっていたように私は思うのです。
まずこの村長選が20年ぶりで、村の気質として行政が活発だとは決して言えない自治体であるコト。
2022年に行われた村議選も2期連続の無投票が濃厚な中、そんな体たらくな状況を危惧したオールド左翼な人が告示直前で立候補し選挙戦に突入(そして落選)。 更に言えば松川村は選挙公報を出さない自治体であり、そういう自治体は総じて内向きで閉鎖的。 とてもじゃないけど小西氏のような “よそ者” を受け入れる土壌が無いのです。
松川村を含む安曇野は長野県でも移住者に人気の地区。 安曇野の北側で中心となるのは大町市になるのですが、
大町市は市長が5期目となり行政の停滞は否めず、移住者が大町市を避け隣の松川村を選択する流れが出来つつあるのですが、それを活かせる環境が全く整っていないのが、松川村の現状です。
10%割れした小西氏に同情する気は無いですが、このような自治体で小西氏が受け入れられるワケが無く、だから冒頭に書いた通りこの選挙に出てくるとは思いもしなかったのです。 だって、どう考えても10%以上獲れる可能性が低く、実際大惨敗したのですから。
何故小西氏はこの選挙に出てきたのか。 何故そこまで “毎週出馬” にこだわるのか。 「ざまぁw」と思う一方で選挙に出まくる彼が「悟りも報いも無い千日回峰行」をやっているように見えて、哀れに感じてきてもいます。
謎は深まるばかりですが、今後も出馬すれば可能な限り追い続けるつもりです。
でも、もうやめた方が良くね?
◆今後の方針
さて、今回の記者会見で小西氏は「ポスター作成費用の公費負担分について、業者から自身へ『キックバック』は貰っているか?」という質問に対し明確に「貰っていない」と否定しました。 勿論その言葉だけで疑惑が全て晴れたワケでは無いですし小西氏「個人」は貰っていなくても小西氏「陣営」が利ざやを得ている可能性は未だに残っています。 ただそれを追求するのは(たとえ開示請求で請求額が分かったとしても)困難であり、この証言が最新のエビデンスとなる以上はそれに基づかなければなりません。 そのため今後は小西氏「個人」が利益を得ている旨の表現は控えるコトにします。
また、私が度々使っていた “選挙ゴロ” という言葉。 私が名づけたものですが改めて「ゴロ=ジゴロ」について調べてみると、
とあり、これも小西氏がキックバックを否定した以上適した表現とはいえなくなったため今回の記事から使用を控え「選挙出まくりマン」という言葉を使うコトにしました。 御了承下さい。
それでは有料部分では当選した元副村長の選挙運動と、川越町長選レポートに載せて一部から好評だった記者会見の要旨(と発言に対するツッコミ)(と、文句)を載せています。 毎度の注意になりますが小西氏の会見を全編見るのは心身ともに削られる恐れが有るため、ダメージを抑えつつ概要を知りたい方は御購入いただきたく存じます。
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◆須沢 和彦(すざわ かずひこ)候補
須沢候補は松川村内の小中学校から南安曇農業高校~中央工学校卒。 松本市内の民間会社で働いた後、役場に入職。 総務課長、教育長、副村長と順調にキャリアを重ね、今回村長選に立候補。「日本一暮らしやすい村を目指して」と掲げ初当選を目指しました。
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