見出し画像

【レポート #63】長野県知事選挙レポート(2022 8.5)

 県内で最大の選挙となるべき、長野知事選。
 しかしながら私は同日に行われた県議補選レポートを先に出すという判断をしました。

 それもこれも、県下最大のビックマッチであるべき知事選が、あまりにもあっけない選挙戦になってしまったから。 しかしながら取材した以上は当然レポートを出しますし、あっけない選挙を「あっけなかった」と記録に残すコトも大事なので。
 私が如何に多選がダメかという理由を存分に書いていますので、どうか読んでいただきたく。 せめて無料部分だけでも読んでいただければ・・・


◆概要

(長野県南木曽町 妻籠宿)
  • 面積:13,562.23㎢(全国4位) 群馬県・埼玉県・山梨県・静岡県・愛知県・岐阜県・富山県・新潟県と8つの県と隣接し最も多くの都道府県と隣接している県だが、大体が山を越えての越境となるため往来は容易ではない

  • 人口:2,023,457人(全国16位)※2022年6月1日現在 面積と比較していただくと如何に “山だらけ” かお分かりいただけるかと

  • 長野県の魅力がギッシリ詰められた県歌「信濃の国」 長野県民は小学校の授業で習うらしく、歌詞を暗記している人も多くて歌詞カードが有れば誰もが歌える、らしい(私は長野在住の沖縄人なので全く歌えませんが・・・)

  • 2005年に県南部の山口村が岐阜県中津川市と越境合併する。 これにより木曽路の観光地である馬籠塾と偉人・島崎藤村が岐阜県のものとなる

  • 長野県を「信州」と呼ぶコト、呼ぶ人が多いのは(ザックリ言うと)明治初期に長野県北部と中・南部の2つに分かれていたのが合併した時に名前が「長野県」となった歴史があり中・南部地域の人は「長野」という名前より「信州」という名に親近感が有るため。 そしてその言葉から、長野県北部(長野市から北側)を「北信」、東部(上田市・軽井沢市など)を「東信」、中部(松本・安曇野地域と木曽地域も含む)を「中信」、南部(諏訪地域から南)を「南信」と呼ぶ ※木曽地域は中信と分けて個別に「木曽(地域・地方)と呼ぶ場合がある


◆立候補者

草間 重男 (72) 新 学校職員
金井 忠一 (72) 新 元上田市議
※日本共産党推薦
阿部 守一 (61) 現 4期目を目指す


◆POINT

①阿部知事3期12年を問う

 2010年の知事選に阿部知事は民主・社民・国民新党の推薦を受けて立候補した阿部氏は前副知事の腰原候補らを破り初当選します。 自民系が支援する腰原候補との票差は5,021票と超僅差でした。 それは2000年から始まる “長野県・激動の10年” に起因します。

 2000年の知事選、5期(!)務めた吉村知事が1998年の長野オリンピック「成功」を土産に勇退。 それまでの長野県は副知事が立候補し当選し知事になる、事実上の “禅譲” が慣例でしたが、それに異を唱え立候補したのが、

日刊スポーツ より引用)

 御存知、田中康夫氏(以下、康夫ちゃん)でした。  共産党を除く政党政治家や業界団体が副知事から立候補した池田候補を推す中、市民グループの「草の根選挙」が一大フィーバーを巻き起こし当選。 小泉純一郎氏の総理就任が2001年、橋下徹氏の大阪府知事当選が2007年なので、如何に康夫ちゃんが起こした旋風が早かったかが分かるかと思います。
 長野オリンピックの影響で財政再建団体転落寸前だった県財政を黒字化した田中県政でしたが、旧態依然とした長野県に康夫ちゃんというのはまさに “劇薬” で、「ガラス張り知事室」「脱ダム宣言」などで議会と常に対立し遂には議会から不信任を受けて出直し選挙で再当選するなど、常に派手な言動が全国的にも注目され県内でも高い人気を得ていたのですが、そのあまりにもエクストリームな康夫ちゃんの言動に振り回されるコトに段々と県民が疲れ、その結果2006年の知事選で、

 衆院議員を6期務めた自民党のベテラン、村井仁氏に敗れて長野県を後にしました。 康夫ちゃんによって混乱し疲弊した長野県を立て直すために県民は再度保守系政治家を選んだのです。
 村井知事は「脱ダム宣言」を撤回するなど康夫ちゃんと全く違う地味な県政運営をしましたが1期限りで引退。 その次に知事になったのが、康夫ちゃん時代に副知事になるも方向性の違いで途中退任した過去が有る阿部氏です。

 「康夫ちゃんに仕えたけど康夫ちゃんと対立した」という経歴は長野県民にとってある意味 “理想的” な立ち位置で、康夫ちゃんがに、村井氏がに振った振り子を真ん中に落ち着かせてくれて、あまり心配せずに県政を任せられる知事がやっと誕生したような平和な空気が長野県を包みました。 2期目以降の選挙は共産党を除く与野党相乗りで阿部知事を支持し大差で当選。 長野県は安定したかに見えます。

②多選の是非を問う

 しかし安定は県政に対する関心を弱め、阿部知事3期12年の実績は何かと考えても上記の「安定」以外、特に思いつかないのが現状です。
 そんな中での4期目出馬。 阿部知事本人も「3期が理想」と語りつつ支援者の要望やコロナ禍が続く中で「責任放棄はできない」と4期目出馬を決意しました。 まぁコロナ禍を理由に挙げるのは多選首長の常套手段ですよね。

 私自身はどのような状況であろうと多選になる首長は一律「無能」と判断しています。 上に立つ人間の最大の仕事は後継者を育てて自身が描く政治を継承するコトであり、また選挙に出てしまうというのはそれを怠り県政の独裁化が進んでいる証左だと言わざるを得ません。 これを県民がどのように判断するか、なのですが・・・


◆前回(2018年)の選挙結果

[当]阿部 守一 (57) 現 635,365 票 ※自民・立憲・国民・公明・社民・連合長野推薦
 -------------------------------------
[落]金井 忠一 (67) 新  110,930 票 ※日本共産党推薦

投票率:43.28%

 実は今回と同じ顔ぶれの選挙で大差をつけて当選しています。 阿部氏は今回、政党の推薦は受けていないものの与野党相乗りで支援を受けており、構図もほぼ一緒。 ならば今回も、、、 「みなまで言うな」という感じになりますが、レポートを続けますね。 それでは候補者を見ていきましょう。


◆草間 重男(くさま しげお)候補

 草間候補は小諸市出身で山形大学卒業後、電子機器製造会社員を経て福祉施設職員として勤務しました。 「教育の力で平和をつくりたい」と訴えます。

 草間候補の選挙歴は長く1996年の吉村知事5選目の選挙に立候補し、来たるべきデジタル時代への対応など当時としては斬新な政策を訴えており独立系候補で最下位ながら約4万票を獲得しています。
 更に2000年の田中知事誕生の選挙にも立候補しましたがコチラは康夫ちゃんフィーバーに飲み込まれて約1万票に減らして最下位落選。
 その後、2004年の小諸市長選、2007・2011年の県議選にも立候補し、いずれも最下位落選しています。 そして時は流れ、11年ぶりの選挙&22年ぶりの知事選に挑みます。

 お待たせしました。 コチラが御尊顔になります。
 告示日に長野県庁に取材に行ったので、届出を出したアトに記者に囲まれている草間候補にお会いするコトが出来ました。 草間候補の選挙運動は各地区まで電車移動。 朝イチで演説をしたアトはその地区でポスターを自ら貼るというスケジューリングだったため、この日以外ではお会いできる可能性は限りなく低かったので、とてもラッキーでした。 独立系候補が何を主張しているのかというのも聞いてみたいですから。

 実験で爆発したアトの科学者のような見た目のインパクトは絶大ですが、常に平和を願ってきた方のようで、地雷廃絶のために県立大学に専門家を集めるというコトを公約の第一に掲げ、他にも副知事の一名を女性にするコトや、県内にもウクライナからの避難民が来ている点に触れ、外国人との共生なども訴えていました。

 ただ、ところどころにツッコミどころが満載でありまして「若者からお年寄りまでのチカラを結集した長野県を作る」と、長野県の地図を手にして記者に訴えていましたが、

 何故か地図を逆さまに持っていたり、一人で運動していて大勢の記者に対応するのは大変なのは分かりますが、

 せっかく手作りした表示物や資料を無造作に置いていたりと。 供託金没収は確実なのに自ら300万円を手元から失うような行動に出る心境というものは、取材を重ねても貧乏人な私には未だ分かりません。 ただ、被選挙権は等しく持っているのだから、どうしても世に訴えたい、問いたいコトが有るのなら立候補するのは(供託金の件は置いといて)本来、真っ当な行動であるべきなんだろうな、というのは段々と分かってきた気がしています。

 ・・・それにしても、どうしても気になるコトがある。 それは、

 何故、「食パンの袋の留め具」(正式名称「バック・クロージャー」)を、ひもらしきなので束ねて胸元にキープしているのか? どうしてもそれが知りたくて、他の記者さんの質問が一段落するのを狙っていました。


どうしても県知事選は基本料金を300円と設定しているため料金が高くなってしまいます。 可能な限り安くするために無料部分を通常の倍のボリュームでお届けしました。 更に内容を補うために現在のリニア工事の状況を取材しています。 食パンの留め具と合わせて、気になる方は御購読いただきたく・・・

ここから先は

5,605字 / 29画像
この記事のみ ¥ 450

もし宜しければサポートをいただけると大変嬉しいです! いただいたサポートは今後の取材費として使わせていただきます。