見出し画像

これが、これが新潟式フットボール。2023.#13 アルビレックス新潟×横浜・Fマリノス マッチレビュー

勝っ…勝った?勝ったぞーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

という事で逆転劇を演じた横浜F・マリノス戦を振り返っていきます。良い時は良いと心の底から叫びたい!

リスクに向き合う前半

このように、プレスを選択しても自重しても非保持で不利を強いられる事が予想される新潟。その中で最も怖いのはプレスをかけて奪えなかったケース。しかし、それにより得られるリターンは比例して大きいという形。プレスを自重して後方がスペースに晒されるリスクを防ぐのか、勇気と包囲網を携えてマイボールの時間+ショートカウンターというリターンを掴みに行くのか。このように、『リスクとリターンのどちらに重きを置いて試合に臨むのか?』という問いに対する新潟の回答は注目に値します。

まず、試合前に発信したマリノス戦の展望では上記のように『リスクとリターンを踏まえてどのような選択肢をとるか?』という注目点を挙げました。実際の試合でも大まかですが注目点の通りに推移したと思っています。

保持:相手を引き寄せて裏返すビルドアップ
非保持:敢えて『付き合う』プレスでショートカウンターを繰り出す

を交互に繰り出す事により、試合を通じて入れ替わりの激しいオープンな展開となりました。涼太郎のシュートから始まった前半戦は新潟にとってリスクとリターン、両方の側面が表立つ事に。


好機を生み出すマリノス


GK,CBがプレス隊を引き付ける、ボランチは本職同士で向き合い続ける。そうする事で相手のDF-MF間,ボランチの脇にスペースを生み出して人とボールを送り込んでゴールに向かうマリノス。アウェイチームは自陣では右から運んで相手陣内で左に渡す構造が主立っていました。保持に強みを持つCB畠中が右にいて、左には攻撃に関する事なら何でもできるエウベル・実質アタッカーとなれるSB永戸がいるので、キャラクターに適したボール循環を施しています。そんな引き付けてスペースを生み出したいマリノスに対して、積極的に奪いに行く事を選択した新潟。

34:32~ボランチ脇に降りて起点を作るロペス。潰す千葉

トーマスデンの不在でベテランCBのコンビとなった新潟。両者ともブラジル人アタッカーに対して走力勝負を強いられると厳しいのでは_と思っていましたが、ハイプレスと同時に勇気を持って比較的ラインを高く設定しました。これによりDF-MFの間を狭くして、降りて引き出すアンデルソンロペス,西村拓真が活きるスペースを消す事に成功。当然CBからしたら持ち場を離れるのでリスクはありますが、島田や高が連動して埋める事でカバーを徹底。

ハイプレスを仕掛けて奪えばショートカウンターを繰り出す、前進されてもダメージを最小限にするといったように、新潟はリスクを許容してリターンを掴む方法論を敢行しました。

しかし、相手チームはそれでも好機に繋げてしまいます。中央が消されたらサイドからの前進ルートが主となり、新潟からすればそこで追い込んで奪いきりたいところ。それでも失わずに次の展開に繋げていくのが横浜F・マリノス

サイドに渡ればアンデルソンロペス,西村拓真などが加勢して屈強なボールキープ→絞ったSBから逆サイドで張ったWGへ…というシーンを何度も作り、新潟ゴールを脅かし続けました。ヤンマテウス,エウベルの両WGはドリブル突破も中央でのコンビネーションもお手の物。突破出来なくても彼らが引き付ける事により、後方で待つSBがフリーでクロスを上げたりゴール前に侵入したりと単騎に2.3人称を組み合わせて効果的に崩しにかかります。

特にエウベルがいる左サイドは脅威だった。彼=ドリブル突破が武器と思っていましたが、一番脅威に感じたのがアーリークロスでした。

41:26~

巻いてCBの背後に送り込む軌道と巧みにマークをすり抜けるロペス。このシーンに象徴されるように、ある程度警戒が薄くなるエリアでも違いを見せるのがエウベル。また、中央でゲームメイクに関わったり自然とゴール前に侵入する(22:30~)永戸勝也・スペースメイクを欠かさずに味方を楽にする渡辺皓太の存在もあり、それぞれが活かし活かされる関係性を構築するマリノス。有効な形でクロスに持っていく事と相手を外してシュートまで持ち込むオフの動き、この辺りのフィニッシュ設計は新潟としても見習うべき要素があると思います。

新潟は押し込まれた際に涼太郎,孝司まで守備に加わる事により包囲網を形成。
・自軍SB-CB間を埋める事
・その過程で相手WGに対してダブルチームを組む事
・逆サイドの選手は中央に絞ってバイタルエリアを埋める事
・誰かが↑を行い、その選手が動いた穴をまた誰かが埋める事

これらの条件を徹底して被害を最小限に留めました。結果的に前半終了間際にセットプレーから先制弾を喫しますが許容範囲だと捉えています。リスクにも向き合いながら寧ろよく1失点に留めた、新潟としてはそう評価できる非保持における振る舞いでした。


リターンを掴み切れない新潟

さて、積極的な姿勢を示してボールもゴールも奪いにいった新潟。前半では完全なるリターンを掴む事が出来ませんでした。保持の構造ではマリノスと似た感じなので図は省略します。狙いとしては相手のプレスを誘う→ライン間で涼太郎,孝司を浮かせる→前向きの選手を作る or CBを食いつかせてその背後を三戸,小見が突く 事を狙っていました。

序盤はどちらかのサイドに誘導されて蹴らされる・相手を誘い込めていないのにロングパスを選択するなどして容易に回収されてしまいます。更に中々前進出来ないので涼太郎が頻繁に降りる、それもボランチより後ろで引き出すのでボールは進むけどその先でスピードアップ出来ないというシーンもありました。

有効的にボールを持てない新潟でしたが、マリノスのプレッシャーが弱まった+時間の経過で(多分)圧に慣れてきた事によりチャンスも増加。押し込んだ際には相手を食いつかせて三戸にオープン気味に持たせたり、ビルドアップで引き込む際には涼太郎が相手CBに影響を与えるポジショニングでチャンスを創出したりと徐々にその気配を感じさせるようになりました。

29:00~畠中を食いつかせて涼太郎とスペースを認知して突く小見。見事だった…次は決めよう

結局は無得点で前半を終えたので完全にはリターンを掴み切れなかった新潟。ただ、ビハインドとはいえ観てる側もそれなりの手ごたえを感じていました。そして勝負は後半戦へ。



リターンを掴み取った後半

一森からのプレゼントパスで幕を開けた後半戦。早速リターンか…!と思いきや決めきれず。こういうのを確実にモノにしたいところです。

前半に次第に見えてきた好循環は後半も継続。押し込み続ける中でXGを高めるようなハイライトシーンを続々と創っていきます。前半同様に2列目を降ろさずに待たせる事で相手の最終ラインに負荷をかけ、効果的なジャブを打ち続ける新潟。

50:30~ 

相手のボランチを動かして浮いたライン間で輝く涼太郎,孝司。降りずにバックラインに影響を与えられるポジショニングでマリノスに負荷をかけ続けます。カウンターのような状態で前向きの選手を作った事で三戸の背後へのランも活きるように。59:20~もそうですが、マリノスのようにリスクを許容して重心を高くして奪いに来てくれる相手にはとことん相性が良い新潟。更に、小見,三戸が孝司の空けたスペースに飛び込んでくるので思い切って潰しに行けないマリノスCB。リターンがすぐそこまでやってきました。

※余談ですが、柏やマリノスとは少し違う奪いに来ない相手をどう崩すかという課題は引き続き継続となっていきます。しかし、この先は鳥栖,ガンバ,湘南,京都とそういった心配が不要そうなチームばかり。良さが活きると思うので楽しみです。

さて、相手の重心は変わらず前目なので、当然ビルドアップの段階で失うとカウンターのリスクも含みます。それでも53:57~のように舞行龍が落ちついて対処したり、コンパクトな陣形を保つ事で即時奪回を機能させるなど自分達のターンを手放さない新潟。そんな中、遂にリターンを掴む時が訪れました。

このシーンでは高が動かされていないために降りてきた西村を躊躇なく捕まえに行けた事が大きかった。マリノスは後半を通じて新潟ボランチの手前と背後を使えていないように見えました。そのためにアタッカーが浮いてボールを引き出せる事が中々できなくなったトリコロール。新潟としては陣形を大きくは動かされず、ピンチと言えるシーンも終盤押し込まれる中で生まれた中央突破,クロス爆撃に留まりました。

また、2得点ともボール奪取からのカウンターとなっていますが、そこにはある程度の誘導によってパスコースが読めた側面もあったのでしょう。リターンを掴むべくプレスを仕掛ける新潟は相手CBに持たせる事を許容して、どちらかのサイドに追い込んでパスコースを限定→迷いなく潰しに行く事で期待以上の成果を獲得。元々の構造が人が人を見やすい形となっていたのでその争いに勝てたのも一つとしてあります。

そして、それは逆転弾にまで直結する事に。

遂にその才能が解放

後半は幅を取りつつ中央でも適切な距離感(近すぎない)を維持する事で各々のマークマンを分散した新潟。バイタルでの自由を得てミドルシュートを匂わせてさらに深く侵入…といったシーンが多かった中で三戸は迷わず振り切った。流石シューターです。スーパー!

その後は少しプレスラインを下げて持たれる事を許容しつつもその先はやらせない方向性にシフト。あっという間にビハインドを負って重心が前目になったマリノス、ならばと裏返すようにカウンターを仕掛ける新潟という構図が出来上がりました。71:40~藤原が抜け出したシーンとか

交代枠を使いつつも孝司,涼太郎を残す事でビルドアップの出口を作る事を怠らない松橋監督。相手が攻勢を強めたとはいえボール保持を捨てるのではなく、奪いに来るマリノスを利用し続けるので、これまで通り裏返しての高速カウンターでその後の一刺しにも期待を抱かせます。76分からのロンドでは小島も使いながらボール回し、その中で相手を誘い込みライン間に顔を出した高木→ダニーロで一気にチャンスを作りました。

79分の孝司の超決定機に繋がるシームレスなカウンターに代表されるように、簡単にボールを捨てない姿勢が良い。相手の攻撃回数を減らすと共に、確実に繋げられる選手が揃っているので失うリスクよりもその先のリターンが上回ります。攻められる中でもマイボールの時間を有効活用する、アルビレックス新潟のアイデンティティが垣間見えるシーンでした。

そんなこんなでロンド→奪いに来るなら裏返す、押し込まれたらボールサイドに圧縮して自由を奪う(逆サイドにクロスが届いてたら..というシーンもあった)新潟。DFラインも完全には下げきらない事でライン間を潰す+押し込まれ続けないよう徹底。最後は新井・LCBとして初起用の泰基を投入して逃げ切りに成功、攻守に狙い通りを手にする事で見事な逆転勝利を果たしました。

前年度の覇者に対して、これが新潟式フットボールだと示す結果となりました。


最後に

久々の勝利が横浜F・マリノス。逆転劇を演じた展開では2010年を・結果では10年前を彷彿とさせるなど、エモーショナルな要素が散りばめらた一戦となりました。そして松橋監督の古巣戦。名実ともに『新潟の男』となった指揮官の喜びが爆発したシーンは印象的でした、良かったぞ力蔵

https://twitter.com/albirex_pr/status/1657659846798495745?s=20

そして次なる相手はサガン鳥栖。トリコロールと若干の毛色は違えど、ハイプレス・引き付けるボール保持に強みを持つ特徴には被る物があり、今節からの応用が問われる一戦となりそうです。自信と積み上げを携えて連勝達成となるか、次節も楽しみです!引き続き魅せようぜ、新潟式フットボール!ではでは



この記事が参加している募集

サッカーを語ろう