見出し画像

これが新潟式ストーブリーグ 〜23年オフ振り返り〜

随時更新し続けた移籍情報まとめを除いた2023年最後の記事から年を跨いだという事でまずは新年の挨拶を…といきたいところだが、新潟人として「おめでとう」とは口が裂けても言えないような情勢となってしまった。なので今は本年もよろしくお願いしますとだけ。

新潟県内でも余震が続いているそうで予断を許さない日々が続くが、こういった時に何を見せられるか何を思わせるかが地域密着型クラブとしての存在意義に繋がってくる。予期せぬ出来事から始まった2024年、アルビレックス新潟はどのような道を進んでいくのだろうか。


強化体制

早速今オフの編成について入る前に、ここでは新潟の強化体制を整理する。

まず単刀直入に言うと所属選手の飲酒運転を隠蔽した責任を問われて是永大輔・前社長-玉乃淳・GMが退任(というか解任)。その余波を受けて任を引き受けたのが当時は新卒スカウトとして活躍していた寺川能人・現強化部長である。という事で外から眺める中で掴めている強化部の構成は以下の通り。

強化部長:寺川能人
強化担当:金さん
(仙台や栃木で強化担当に就いていた方)
新卒スカウト:本間勲
ブラジル担当:細貝さん
(新潟史に残る数々のブラジリアンをリクルート)

因みに色々漁っていたら多分初見と思われる文献を拾う事ができた。ナイス鮭プロ。自分もたまにプレゼント企画の恩恵を受けている。

中野さん(中野社長):スカウトには大学や高校などの試合に行き若手選手を探す担当他のチームの選手など中堅選手をスカウトする担当それから海外選手を発掘する担当などに分かれています。

鮭プロの記事では中野社長がスカウトの構成に言及しているが、恐らく最初の担当に当てはまるのが本間・その次が寺川に金さん・最後が細貝さんで、これら全体を統括しているのが寺川強化部長という事になる。サポーターカンファレンスではフットボール面の事項について中野社長が話す段取りとなっているが、これは別に社長が強化のイニシアティブを握っている証などではなく、単に強化部との情報共有を受けながらクラブの代表として矢面に立っている意味合いに過ぎないと解釈している。ただ、ピッチ上の人事決定権は実質的に寺川が握っているのだからそこら辺の話は強化部門の長が担当すれば良いのにとは思うけど。

寺川も本間も新潟OB。(前体制では起こったけど)某赤の西野SDvs土田TDのような権力闘争はなく、特段これといったしがらみもなく新潟人を中心に据えた強化体制が出来上がっている。忘れてはいけないのはそこにトップチームの指揮を採る松橋力蔵監督も絡めながらトップチームの編成を日々デザインしている事。

-来季のチーム編成のポイントは
「縦のラインなど全てだが、強化部と共有するポイントは将来性、いい選手になるための野心を持っていること。誰かの代わりの補強ではなく、将来を見据えた強化と考えている

23年総括会見にて

クラブとして7年後にはJリーグ優勝&常時ACLを目指す、と意気込む中で中長期計画の存在を示唆しているが(尚、諸事情により公開不可能との事)、そこには長いスパンでみたトップチームの強化計画も細かく盛り込まれているのだろうと推測している。技術委員会を軸に本格的にトップとアカデミーを繋げだしたのも多分その一環。その中で、今だけでなく未来への可能性も秘めながらチーム作りに取り組んでいる松橋監督は恐らくキーマンとして見込まれている一人。

当然ここまで心身掌握術を発揮しながらピッチ上の結果も出している優秀な指揮官が他所から放っておかれる訳はなく、新潟に居ても長くて後2年程度だとは思うが、線で繋がった視点を軸に強化部と結託しながら強い新潟の誕生へ力を注いでいる。

強化方針・序章

正直、前述した20年秋頃の"アレ"が表面化して幾人かが辞めざるを得なかった時は『終わった』と思った。古くは端山から、件の直近では三戸舜介など有望な新卒プレイヤー達の獲得に成功しているとはいえ強化部長としては未知数である寺川。そして17~18年の散々な時間が記憶に新しい中野体制の再登用。数々の失敗(詳しくはこれを読んで)を経て新潟閥に対する信頼は失墜しており、また地獄の再来か…とサポーター感情としては腹を括った訳だが、そのような心配は全くの杞憂に終わる事となる。

走って、汗かいて、外国人に(頼る)という流れだけでは上に行けない。自分たちで主導権を持って90分間試合を進められるようにプラスアルファしないと、J1に上がった時に苦しくなる

これは強化部長就任直後のコメントだが、アルベルトへの続投要請と併せて彼の言葉に心の底から安心した記憶がある。新潟のDNAである『ハードワーク』はどのチームも標準装備が当たり前。競技に臨む姿勢を統一した所に『ボール保持によるゲーム進行の独占権』という攻略術を授ける事で、ピッチ内外に優位性を携えて進んでいくのがこれからのアルビレックス新潟である。メディアを通じてそのようなスタンスを明らかにしてくれた事が何よりも嬉しかった。

スペインの名伯楽を引っ張ってきた強化体制が代わったとしても、方向性がより一層明確になる事でクラブ,チーム,サポーター、中野社長的に言えば新潟を取り巻くあらゆる『ステークホルダー』の目線が一致するようになった。本来なら面白くない立場に置かれるはずだったアルベルトが今でも新潟を気にかけてくれる事実が、彼も含めながらクラブ一丸となってプロジェクトに取り組んでいた何よりの証だろう。

(因みに何故かフォローされていたりする。この記事も村松さんによる翻訳の下で目を通してくれていたりするのだろうか)

様々な偶然が重なって確固たる物となった新潟の強化方針についてだが、寺川が本格的に着手し始めた21年から特に変わりはない。更に今年は我々ファン,サポーターが感じていた事がクラブ直々にサポーターカンファレンス
(以下:サポカン)において発信されており、断片的とはいえ動画内⇩の資料を確認すればクラブが考えている事の大体は把握できると思う。個ではなく組織ありきで戦う、明確なスタイルを確立した事でリクルートの質が上がった、J1のボトムスに当たる人件費の中で何とかやりくりしないといけない等々。

だが、公式からなる"参考文献"に終始した論を展開してもここまでの文章の価値とは…という話になるし、そもそもスタイル云々の話は新潟に限らず大体のJリーグファンがもはやお腹いっぱいだろう。J1昇格から1年が経過して新潟の成功要因についてはリーグ全体の共通認識になってきた感じを受けるので、そういった類の話は前提に置きながら、次章では今オフの動きを振り返りながら新潟の強化方針の細かな傾向を読み解いていく。端的に言えば寺川の頭の中を覗いてみよう!という事である。

強化方針・今オフを振り返りながら

まずは2つの図からin/outを含めた大枠を掴んでもらいたい。

1月10日時点で保有権を持つ方々
保有権を手放した方々

入れ替わりは最小限

長倉に多分宮本など、将来的にJリーグ内の強豪クラブへの売却も想定した20代中盤の選手は居るのだが、クラブとしては育てて売って移籍金を回収してまた次の選手を確保して…というビジネスをメインに生き残っていく未来図を描いている訳ではなさそうだ。

主力の退団にどうなるベテラン勢。今オフはかなりの入れ替わりを覚悟していたが、出血は最小限に留まって、現状では新潟で活躍する未来が見えずらい選手達が離れていくという、INもそうだし特にOUTの方では問題点を指摘しようにも指摘できない編成となった。

あらゆる媒体で『新潟のサッカーはフィットしにくい』と寺川が語る発言を目にするが、そのような理由で新戦力の確保に慎重であると同時に現有戦力の入れ替わりについても然りである。世代交代をゆる~く進める事で健全な新陳代謝を促し、特に保持局面での滞りを解消する。ただ、これを成り立たせている面子の中には当然ベテラン勢も多く、堀米,千葉,舞行龍,島田,高木などパッと挙げるだけでも片手が埋まってしまう程。

25年以降も『入れ替わりは最小限』という傾向は変わらず、けれども選手は確実に年をとっていく。21~23年を過ごした仲間たちもいつかは去る時が来る。例えばガンバトップチームのコーチに遠藤保仁が就任したように、監督と選手を繋げられる役目に上記のベテラン勢の中から誰か一人を抜擢するなど、血を絶やさないための独自の取り組みも今後求められる事になるだろう。


追いかける事

今オフの加入組なら長谷川元希が間違いなく当てはまるが、寺川はかつてから注視していた選手に機を見てアタックする傾向が強い。太田だってそうだし、もう少し遡れば伊藤涼太郎だってそう。
(元希に太田はソース(モバアル)があるが、伊藤に関してはどこかでそのような話を聞いた/見た記憶があるのだが肝心のソースを忘れてしまった)

その対象は主にJ2で広くは誰もが知るような有力株から、更にはチームの志向性を吟味してフィルタリングしている節も受ける。いわきに群馬、藤枝に熊本。この辺りは監督含めて注視し続けていると思うし、今後も有力株を探す際は一つのベンチマークとなっていきそうだ。

太田も長谷川もモバアルのインタビューでわざわざ言及する辺り、『継続的に見てくれている』という誠意は選手達にも少なからず影響しているそうだし、J1に挑戦できる、それも自身が適合できそうな環境に身を置けるとなれば、移籍先として選ばれる確率だってそれなりに上がっていくだろう。何より実際に『プレイヤーとして人として成長したかった』小野裕二を引き抜いた事実がそれを物語っている。

ただ、そういった要素だけで勝負しても鳥栖は勿論、山形や東京Vに磐田など、経営規模が同程度/(新潟が)若干下回る競合に対しては遅れをとる未来だって考えられる。サポカンを見る限りクラブも課題として認識している事が伺えるが、この辺りは経営体力との勝負になるだろう。現場への投資を更に加速させるように売上高を伸ばせるか。タイトルなど目標達成を本気で狙う、強い新潟を創り上げるのなら、クラブとしての総合力を上げていく必要があるだろう。

そこに寄与するステークホルダーの一部であるファン,サポーターとしては、どう伸ばしていくか?と具体的な姿や数字を把握できる中長期計画の公開が待ち遠しいと思うばかりである。


ミライへの種/成長に蓋をしない

全員戦力』とは松橋監督を代表するアプローチであり、一切の置いてけぼりを生み出さない起用法を指す言葉でもあるが、これは監督に留まらず強化部長の意向という意味合いでもある。今季の編成図を見てもらうと何となく分かると思うが、1枠しかない特殊性を持ったGKを除く、10枠のFPでは🔰🆕がついた新卒の選手達だろうとアピール次第では普通にチャンスが巡ってくるような構成となっている。

Jリーグでは保有人数を多くする事で競争の激化を見込んだり、怪我人発生にも耐えうるような選手層を維持する傾向がみられるが、ラージグループとなる分マネジメントには苦労するし、出場機会を与えられない選手が不満分子となるケースだって起こり得る。(B,C契約の割合が多くさほど影響を受けないかもしれないが)それに人が増えれば単純に人件費だって逼迫する。要するに人が多すぎるとその分無駄も多くなるリスクが生じるのだ。

寺川が牽引する新潟の強化方針ではそのような"無駄"を感じる機会が非常に少ない。少なくともFPなら誰であろうと競争を勝ち抜けば確実に出番が回ってくる健全な環境が整っているし、そこで期待に応えられなかった(吉田,シマブク)/そもそも序列的に成長に蓋をしてしまいそう(大竹)な若手選手達は期限付き移籍先を探す事になる。

他チームでよく見られる「下部リーグで結果どころか試合にすら出てないのに帰ってくるのか…?」といったモヤモヤするケースも特になく、例えレギュラーとしてJ2昇格に貢献したり(岡本)、J2で9得点をマークする活躍を見せても(矢村)、トップチームでの定位置確保がまだ見込めないと思ったら期限付き移籍は継続となる。今季から千葉で研鑽を積む事となったU-22日本代表GK・藤田和輝ですら例外ではない。

そもそも新潟ではサッカースタイルが明確である以上、個々に求めるプレースタイルも同時に定まっており、その中で求める資質(人間性とか)などを基にフィルタリングして最終的に「こいつだ!」と判断された選手が新卒/現役選手問わずリクルートの網に引っかかっているので、適合という観点で明らかに浮いている選手はおらず、台頭してこない=シンプルに実力不足という構図が出来上がっている。なので22年夏に本間が抜けた際にも無理やりでも穴を埋めるような事はしなかったし、寧ろ寺川は固定化気味だった起用法に対して松橋監督本人に幅広くチャンスを与えるべきだと助言したという。

こういった点からも、新潟ではトップチームで抱えている選手はプロスペクトなんて甘い捉え方はせず、全選手が本気で即戦力として見込まれているのではないかと個人的に推測している。この時点のスカッドではすぐにでも計算が立つとして強化部に評価されている選手が殆ど。果たして今季は誰が花を咲かせる事になるのだろうか。予測不可能、だからこそ己と真っ向勝負。個人的にはダニーロゴメスの年になるのではないかと期待している。

今後の予定

卒論やその他諸々が重なって、資料を作ってある程度話す事を決めて…と準備に時間を割く余裕が無かったので編成自体をテーマとした #白鳥スペース は見送る事になった(正直noteも書いてる場合ではないのだけど)。なので、ピッチ上に焦点を当てながら24'新潟のサッカー的な展望を話す回を2月中旬辺りに企画している。

取り敢えずはチーム内で高い評価を受けている選手の顔ぶれを把握したり全体として新たに取り組んでいる事など、『変化』へのアンテナを張りながらキャンプ中の映像を確認していくつもりだ。そしてこれまで通り海外サッカーをチェックしながら競技自体への理解を深め、マッチレビューの解像度を上げていく所存である。新潟サポにおすすめしたいのはラスパルマス。

そんなこんなで新年1発目の記事もそろそろ締めの段階。就職に伴い時間という制約を受けながらもこれまで以上の発信に取り組んでいくつもりである。

本年も何卒よろしくお願いいたします。



この記事が参加している募集

サッカーを語ろう