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【vol.6】他人は他人。やることは「自分の人生を生き切る」だけ。

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<作品紹介>
覆面グラフィティ・アーティスト、バンクシーが初の監督作品として手掛けた、皮肉とユーモアに満ちたドキュメンタリー。フランス人アーティスト、スペース・インベーダーや、オバマ大統領の肖像画で有名なシェパード・フェリーなど、多数のストリート・アーティストが登場。第83回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた1作。(出典:映画ナタリー
<あらすじ>
ティエリー・グエッタはロスアンジェルスに住むフランスからの移民で、起きている間は片時もビデオカメラを離さないほど、撮影に取り憑かれています。フランスで、彼のいとこでアーティストのインベーダーに会ったことを契機に、シェパード・フレイヤーやバンクシーなどストリート・アーティストを撮り始めます。顔を隠し、声を変えて出演していた覆面芸術家のバンクシーは、ティエリーにセンスが無いことに気付き、逆に自分が監督して彼の映画を撮り始めたところ、自らストリートアーティストに挑戦したティエリーが思わぬ才覚を見せ始めます…。(出典:夢は洋画をかけ廻る

【※注意】この記事はネタバレを含んでいますので、気になる方は先に映画をご覧いただいた方が良いかもしれません。

バンクシーが初めて監督した映画

今回紹介するのはバンクシーの「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」。

バンクシーに関してはご存知の方も多いと思いますが、世界的なアーティストです。

バンクシー…イギリスを基盤にして活動している匿名の芸術家、公共物破壊者(ヴァンダリスト)、政治活動家。もともとは、芸術家と音楽家のコラボレーションが活発なイギリス西部の港湾都市ブリストルで活動していたローカルな芸術家だったが、2000年代に入るとイギリスを飛び出し、ニューヨーク、パレスチナなど世界中を舞台にして活動することが多くなった。アート・ワールドにおいてバンクシーは、おもにストリート・アート、パブリック・アート、政治活動家として評価されている。反戦問題、パレスチナ問題、難民問題、人種問題、反資本主義などの政治的メッセージが明確に作品に込められている。(出典:アートぺディア

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(赤い風船に手を伸ばす少女:Girl with Balloon(2006年)。この絵はバンクシーの代表作でもあり、2014年にはシリアの反戦キャンペーンのために、シリアの少女をイメージして新たに書き直された作品が発表されました。出典:This is Media


この映画はそのバンクシーの映画なんですが、バンクシーを題材とした映画ではなくバンクシーが監督を務めている映画なんですね。

「バンクシーが映画を創るとどうなるのか?」

という視点で見ても楽しめる映画だと思います。

プライムビデオでは13日以内に配信が終了してしまうので、興味のある方はお早めにご視聴ください!

映画で「クリエイティビティ」を磨く!

ちなみに、私はアーティストやファッション関連のドキュメンタリーはよく見るようにしています。

それは私にアーティストのようなクリエイティビティやセンスが皆無だと自覚しているからです。

ビジネスの世界に飛び込むと、企画や商品を考えたり、「どうすれば付加価値を高められるのか」ということが常に求められます。

その時に、自分の商品やサービスを差別化できなかったり、お客さんに関心を持ってもらえなければどんどん状況は厳しくなります。

もちろんマーケティングやセールスでカバーできる部分はあるのですが、

同じような商品でも見せ方を変えるだけで、売上が5倍、10倍と変わることはよくあります。

そして、そのようなアイデアやクリエイティビティを発揮する上で、アーティストたちの生き方や考え方が、とても参考になっています。

アーティストとして「非常識な方法」で成功できた2つのワケ

また、この映画は

・アーティストとして活動されている方
・アーティストとして活動していきたい人
・クリエイティブな分野で仕事をされている方

にとっても非常に参考になる内容じゃないかと思います。

そもそも、アーティストとしての成功とは何なのでしょうか?

・創作活動を続けること
・お金を稼ぐこと
・有名になること

など、人にそれぞれだと思いますが、商業的に成功するという意味では

自分のスタイルの確立

名前や作品の拡散

作品の価値が上がりオークションやギャラリーで作品を販売

というのが、オーソドックスなパターンかと思います。

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(バンクシーは自分の個展の際に、本物のゾウをペインティングして大きな物議を醸した。出典:BANKSY


しかし、この映画に登場するティエリーはその流れをすっ飛ばしてギャラリーを開催。

オープン初日には4000人を動員し、1週間での売上は1億円越え

さらにギャラリーは人気殺到につき2ヶ月延長するなど、一般的なアーティストの成功パターンを根底から覆してしまったわけです。

商業的に言えば、これ以上ない成功です。

しかも、彼は古着屋のオーナーで、絵に関する教育を受けた経験もなければ、アーティストとして活動していたこともありません。

そんな彼がなぜここまで成功できたのか?私なりに考えて思ったことが2つあります。

1つは彼の性格です。

ティエリーは非常に素直で、バンクシーの提案に「ノー」ということはしません。

「映画を創れ」と言われれば映画をつくり、「ショーを開催したら?」と提案されれば自らアーティストとして個展を開催。

その素直さ故に、トラブルに見舞われることもあるのですが…笑

とはいえ、その「素直さ」そして行動力は目を見張ります。

ビジネス書でも「行動力」をテーマにした本は数多くありますし、「行動力を上げるためにどうしたらいいか?」というのは、多くのビジネスマンにとって課題であることは間違いありません。

とはいえ、行動力があれば成功するのかといえば、そうではないと思います。

事実、ティエリーは個展を開催する前に映画を創りましたが、映画監督としては失敗しています。

では、なぜティエリーがあれだけ一気に成功できたのか?

私なりに考えた、理由の2つ目は

「アートだったから」

です。

アーティストとして活動されている方にとっては非常に失礼な発言かもしれませんが、アートもある意味では単なる「共同幻想」にしか過ぎません。

だから、みんなが「価値がある」と思えば価値が上がるし、みんなが「価値がない」と思えば価値は下がります。

そういう意味では「お金」も同じですね。

多くの人にとって「価値がある」と思わせることができれば、どこまでも価値を高めることができます。

しかも、アートは贅沢品や投資対象なので、食べ物などと違い「原価」を気にする人はいません。アートを買う時に

「この紙質の紙で、このくらいの大きさなら紙代は〇〇円くらいだな」

とか

「この絵に使われている絵の具代を考えると、〇〇円くらいが妥当だな」

なんて考えながらお金を払う人は、ほとんどいないはずです。笑

アートで商業的に成功する上で重要なのは、技術力ではなく、

いかに「共同幻想」を創るか

だと言っても過言ではないでしょう。

ですから、劇中でティエリーが個展の宣伝にバンクシーのコメントを利用したことは、共同幻想を創る上でこれ以上ない広告戦略だったわけです。

それに、今回のティエリーのこともそうですが、アートの評価は客観的な基準よりも、個人の主観によって決まるところがほとんどです。

ですから、多くの人が気に入れば売上も増やせる。

アーティストの商業的評判は、技術力よりもブランディング力に比例するわけです。

とはいえ、やはり技術がなければ長期的な成功は難しいのかもしれませんし、今回のティエリーのやり方は非常識な方法だったので、さまざまな方面から反発はあったでしょう。

監督を務めたバンクシー自身も、映画の最後で強烈に皮肉を言っています。

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(自らをMBW(Mr. Brainwash)と名乗り、アート活動を続けるティエリー。出典:MADDOX GALLERY

他人は他人。やることは「自分の人生を生き切る」だけ。

ティエリーの成功を目の当たりにすると、やっぱり気持ちとしては

「いいな〜。羨ましい。」
「自分もあんなふうになってみたい。」

と感じてしまいます。

もちろん彼もそこに至るまでさまざまな苦労や挫折はあったのでしょうが、

それでも自分と比べずにはいられません。

「他人と比較するのは良くない」と頭では分かっていても、比べるときは比べてしまいます。笑

とはいえ、私がいくら頑張ってもティエリーになることはできないし、

ティエリーもいくら頑張っても私にはなれません。(なりたいかどうかは別として)

私のどんな部分が強みで、役に立つかは分かりませんが、

少なくともティエリーより若い分、時間はまだまだ残されています。

その時間を大いに活用しながら、自分が望む人生を送れるよう、精一杯生き切りたいと思います。

▶︎「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」ダイジェスト


▶︎「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」公式サイト
(ページ内のリンクは切れているようです)

また、あなたのオススメ映画もあれば、ぜひコメント欄で教えてくださいね。

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