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父と娘の夏やすみ

「aftersun」

正直、一度見ただけでは、明解にすっきりしないことが多いけれど、印象に残る作品でした。ふとしたときに、ついこの映画のことを思いおこして、考えてしまうというか。
よく分からない理由のひとつには、シーン構成がふたつあることです。メインのシーン構成は11歳になったばかりのソフィーと、もうすぐ31歳の誕生日を迎えるカルムの親子が、バカンス先であるトルコのホテルで一緒に過ごす数週間。そこに、別のシーン構成であるレイブシーンが差し込まれてきます。レイブシーンでは、カルムは同一のカルムですが、ソフィーは大人になっています。
あるいは、なにもかも明確に示す必要はないという作品づくりにおける哲学のようなものがあるのではないかと。日本のテレビドラマを書くうえで、こういう表現への思想を貫くと、こっぴどく叱られることが多いです。

わたしが受け取ったかぎりにおいて、カルムはなにかに悩んでいます。それがなにかは明確にはわからないけれど、彼は旅先に自己啓発本のような本を持ってきています。ソフィーの母親とはすでに離婚しています。30で11の娘がいるのだから、若すぎたゆえなのかもしれません。金銭的にも豊かではなさそうで、でもソフィーを旅行に連れてきている。それなのに、ソフィーから「お金もないくせに」と言われてしまいます。
カルムはとても迷った末に、トルコ絨毯を一枚購入していて、その絨毯は大人になったソフィーの住居に敷かれてありました。おそらく、カルムは亡くなっているのです。スキューバダイビングをするシーンでは、まだ30そこそこのカルムが「40まで生きられるとは思っていない」というセリフがありました。
いっぽうのソフィーは、大人になってからのパートナーは女性になっていました。11歳の時点では男の子に興味がありそうだったし、少年とのキスシーンも描かれています。11歳と31歳のあいだの、ソフィーが大人になっていく経過は描かれていません。

子どもは残酷です。守ってもらえる、かまってもらえるのが当たり前と思っているし、平気で反抗します。わたしも間違いなく、こんな子どもだったに違いない。わたしの父親は仕事にとても忙しい人だったから、二人で夏休みに旅行するなんてことは一度もありませんでしたが。

それにしても、イギリス人の休暇は長いです。バケーションで家族で海外旅行するのは当たり前。わたしがホームステイしていたイギリスのご家族も、ホームステイ期間前はエジプトに行っていて、わたしが帰国したあとはトルコに行くと言っていた。日本はいつ、そうなるのかなあ。
これが長編デビュー作というシャーロット・ウェルズは、次回作が楽しみです。

見出し画像は作品とはなにも関係ない、わたしが休暇らしい休暇を最後に過ごした、数年前のハワイのビーチです。

Aftersun アフターサン
2022年製作/101分/アメリカ
シャーロット・ウェルズ監督
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