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遠い大学に進学するとき

「コーダ あいのうた」

2022年の米国アカデミー作品賞受賞作品。
日本公開当時、観ていなかったので(なぜだろう? 外出自粛期間だった?)、ネット配信で視聴しました。

とにかく、「ドラマとは何か?」のお手本のような筋書きです。
主人公ルビーは歌うことが大好きで、教師の薦めもあり、名門音楽大学への進学を目標にします(=主人公のスーパーオブジェクティブ)。
スーパーオブジェクティブへと突き進むルビーに対し、いろんな外的圧力が襲いかかります。一番大きな外圧が、両親の反対です。
さらには、ルビーの両親と兄は耳が不自由で、ルビーは家族の通訳を担っているというカセが着せられています。
ルビーはこうした圧力やカセに打ち勝ち、ラストシーンで生まれ育った実家を旅立っていきます。
わたしは、この旅立ちのシーンに、自分が大学に進学のために家を出たときのことを重ねていました。小学校低学年のときから一緒に暮らしていた柴犬が知らんぷりして寝転んでいたのを覚えています。(出かけるときは知らんぷり、帰宅時は大喜びで迎えるのが犬の習性……)

ルビーは古い中古車を友人とシェアして、家財道具を一切合切乗せて旅立つのが、なんともアメリカっぽい。日本なら、このシーンのハシラは鉄道の駅かバス停であることが多いです。

左がルビー。真ん中の二人はルビーの両親。右はお兄さん

ルビーの母親役の女性、とてもチャーミングだし、どこかで見たことなるなーと思って見ていて、「そうだ、テレビドラマ『ホワイトハウス』で選挙になると出てくるジョーイだ」と、思い出しました。ジョーイも聴覚障害があり、お付きの男性通訳がオンナ言葉で訳すのが印象に残っていたのです。
ここで脳裏の記憶がつながりました。
ジョーイとはつまり、「愛は静けさの中に」のサラであり、そうです、マーリー・マトリン様です。
「愛は静けさの中に」は1986年公開作品で35年もの月日が流れていますが、「コーダ あいのうた」でも、彼女の愛らしさは健在でした。
役柄がろう者なのは、彼女自身が失聴しているからです。
「このひと、誰だったかな」のモヤモヤが鑑賞中に解決できると、とてもすっきりした気持ちで、作品を見終えられるのは、わたしだけでしょうか。

監督のシアン・ヘダーは大好きな「オレンジイズニューブラック」の脚本家。次回作が楽しみです。

見出し画像はなんの関係もない、東京湾の屋形船です。作品の舞台が港町だったので、自分の中ではリンクしました……。

コーダ あいのうた CODA
2021年/アメリカ 合衆国・ フランス ・ カナダ/112分
シアン・ヘダー監督

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