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ヴァカンスに行こう

映画「みんなのヴァカンス」

パリから600キロ離れた南仏の田舎町を舞台に、登場人物はヴァカンスにきた若者数人のみ、然したる事件はなにも起こらないけれど、ずっと彼らを見ていたくなる、いい映画でした。みんな、すごく自然体であるがままのように思えたのですが、実は演劇学校の学生を起用し、脚本は大筋のみ、撮影も現場の即興を尊重して作られたと、鑑賞後にユーロスペースのHPで知りました。

それぞれ違う恋愛観を持つ男の子3人が一緒にヴァカンス

物語の核となるのは、3人の男の子たち。
介護士として働いているフェリックスは、一夜を共にしたアルマが忘れられず、アルマのヴァカンス先にサプライズで会いにいこうと思いつきます。フェリックスは友人のシェリフに「ヴァカンスに行こう」と声をかけます。
二人は相乗りアプリを利用して、エドゥアールの車に同乗します。エドゥアールは二人を女の子と思っていたので、道中ずっと怒ったままです。エドゥアールにはしょっちゅうお母さんから電話があって、フェリックスはエドゥアールを子猫ちゃんと呼んで、からかいます。
フェリックスはアルマと再会しますが、アルマはいい顔をしません。
シェリフは子連れの美女エレナと出会い、彼女に惹かれていきますが、はたからは、体よくシッター扱いされていると指摘されます。
最初、フェリックスを毛嫌いしていたエドゥアールは、アルマとの恋愛関係においては、だんだんフェリックスの肩を持つように。
そう、この映画に出てくる女の子は、女からしても嫌なタイプの部類です。アルマは姉に向かって「わたしはお姉さんよりは若い」とか平気で言うし、フェリックスの前でほかの男に抱きついたりします。エレナはシェリフに「マッサージに行くあいだ、子どもを見てくれる?」とか頼みます。
アルマもエレナもわがままいっぱいですが、あんなことしてごめんねと、あとで謝るのが、青春な感じです。

フェリックスの寝床は一人テント

ライドシェアして、キャンプ場のテントで寝泊まり、川遊びやサイクリングを楽しむ男の子3人のヴァカンスは、高級ホテルに泊まってスローフードのディナーを味わうようなものではないけれど、やっぱりヴァカンスっていいなあと思えてきます。フランスはヴァカンス大国ですが、フェリックスもシェリフも、雇い主に休暇を取っていいかどうか、許可をとるシーンも親近感を覚えました。
思えば、社会人になってから、休暇は取れても、本当の意味のヴァカンス、身も心も無になれるヴァカンスは一度もないような。わたしも彼らと同じ年の頃は、友だちの実家に何日も泊まらせてもらって、川遊びしたことを思い出しました。
ああ、ヴァカンスに行きたくなる、そんな映画です。


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