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浜松の象徴 松菱百貨店②     さやのもゆ

 僕自身は松菱百貨店を辞した後、同年の2002年6月1日、松菱百貨店の開店日(1937年6月1日)に合わせて街中に美術画廊を開きました。
 僕は外商部に30年勤めていましたので、そういった商品をお求めになるお客様とのつながりもありましたし、取引業者さんも全面的にバックアップしてくださいました。おまけにその頃の浜松には美術画廊がありませんでしたので、丁度いいと考えまして。
狭くて深いお仕事をしたくて-確かに美術商の業界には難しいものがありましたが、たまたまライバル店が少なかったこともあり、67歳の時に健康上の理由で店を閉めるまで、画廊を経営することが出来ました。
 松菱が閉店してから二十二年が経ちますが、僕が今こうして生活して行かれるのは、「松菱」という看板があって、其処で勉強させて頂いたおかげだと思っています。
 今でも、どこへ行っても言われますよ。「あなた、松菱の人ですね?」って。
 
 勤めるのも松菱、遊びに行くのも松菱
  (元松菱社員Tさんの話)

僕は1974(昭和49)年に入社しまして、最初に配属されたのは二階の紳士服売り場。ここではスポーツ用品を担当しましたが、これにはちょっとした理由がありました。
 その当時、二階売り場には僕を含めて男性二名が配属になったのですが、担当を決める際にもう1人のM君は、紳士服とスポーツ用品、どっちも苦手だと言いました。
僕はといえば、もともとファッションに興味があったので「メンズ・クラブ」を見ていたし、「トラディショナル・アイビークラブ」にも入ってた。それにスポーツも好きだったから、どちらも得意でした。そこで僕はM君に「あなたが先に好きな方を選びなさい。そしたら僕はもう一方にするから」と言いましたところ、彼は紳士服を選びましたので、僕はスポーツ担当になった、というわけです。
 その後は、寝具売り場を経て松菱フードサービスに出向しました。
 静銀浜松営業所の道路を挟んだ向かい側に「マビーセブン(1974年開店)」というビルが今でもあるのですが、建てられた当時としては画期的なデザインのビルでしたから、そこら中から視察者が来られましたよ。そこの7階にあった「ロンバス」という夜のお店の経営に当たっていました。店内にはピアノの弾き語りやギターの演奏があって、接客係の服装も女性はロングドレス、男性はチョウタイをして「いらっしゃいませ」と、お客様をお迎えするようなお店。結構楽しかったですよ。
あと、ロンバス2号店が肴町にありましたが、上の階が映画館でしてね、僕はタダで映画鑑賞できたんです。それと、地下が「トック・ブランシュ」というレストランで、すごく有名なマスター(今井シェフ)が経営していました。
 松菱フードサービスに出向の後、外商部に異動になったのですが、外商は長かったですね。担当地域も普通ならあちこち変わるところを、僕だけはずっと磐田市と豊田町で、家庭外商を担当していました。ご提案させていただく商品を持参してお客様のご自宅に伺うのですが、それにはお客様のお持ちになっている物(例えば、宝石の種類)を、頭に入れとかなきゃいけません。何でも持って行けばいいというものではなく、お買い上げ頂けるような、おすすめの商品を選んでお持ちするわけですから。あと、お客様がどの様な物を好まれるか等のご趣味も、勿論です。
それと、商品が売れる時間帯、というのがあるんですよね。夕食が済んでから、とかそういう時間帯をねらって行くのです。もちろん、事前にお電話を入れてご都合をお聞きした上での事ですがーそんなわけで、仕事は面白かったですよ。
 僕は常に、お宅を訪問する際は、玄関先でお話をするようじゃダメ、お台所に上がらせていただく位じゃないとダメだって思っていました。お客様にお金があるから買えるとか、無いから買えないとか、そういうものではないんです。
 それに、僕はお客様のことを一度たりとも「お客さん」と、言ったことはありません。なぜかと言うと、それはお客様あっての松菱だから。自分の力じゃない。
 そういう考えでやってきた-、という思いが今も残っています。だから、皆様のおかげで今があるんだという事ですね。
 松菱に勤めていた当時は、とにかく仕事をするのが楽しかったです。
 ちょっと考えられないでしょうが、僕は松菱で仕事をしているのに、休みの日に遊びに行くのも松菱だったんです。松菱で遊んで帰る、というのがけっこう楽しかったですね。
 今思うと、松菱という所で大変いい時代を過ごさせていただいたと思っています。

                (つづく)

【前回のクイズの答え:④昭和35年】
昭和35年、松菱百貨店に県下初の全館冷房が完成しました。ちなみに、冷房が設置される前は毎年6月初旬頃、各階の天井に(サイズは知らないが)大きな扇風機(天井扇)を取り付けていました。それでも、お客様はもちろん社員にとっても、相当暑かったようです。

松菱クイズ 第二問目

松菱百貨店には、創業者で初代社長の谷政二郎氏が
個人的な趣味で勝手に(?)お作りになった、ある特別な部屋がありました。さて、それは次の3つのうち
どれでしょうか?

   ① シネマルーム
   ② 茶室
   ③ コインランドリー

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