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*weǵʰ- [way/विवाह]

「道」という語は極めて具体的でいつの時代もあるはずなので、あまり変化せずにいるものかと決めつけていたが、「道」は人の様々な活動が激しく往来する場所であるためか、その語彙や意味の往来も激しく、「道」を指す語に別の意味が加わったり、別の意味に変化したりして変遷しているようで、どんな土地をどんな角度から見ているか、「道」に対して様々な視点が存在することに気づかされた。

[way]
←ME way, wey
←OE weġ
←PWG *weg
←PG *wegaz
←IE *weǵʰ-

ドイツ語weg、英語away, wagon, via, vector, vehicleも共通する語根*weǵʰ-からきているが、これは目的地に到達するための通過点「道」そのものより、そこを往来する物体の動き「輸送」に着目しているような印象を受けた。vehicleにそっくり対応するサンスクリットはवाहन(vāhana)で(サータヴァーハナ朝の名前の語源は Sapta-Vahana "driven by seven")、現代ヒンディー語にも何かしらの輸送関連語彙があるかと予想していたが、驚いたのは、बहना(bahnā) "flow" や विवाह(vivāha) "marriage"も同語源だった。विवाह(vivāha)の語源は「別れ」だと聞いていたがもうひとつ腑に落ちていなかった。でも*weǵʰ-にある「輸送という意味でのaway」の要素、つまり「花嫁を家から連れてゆく」ことなのだと気づいた。まさにDDLJ。

road
←IE *reydʰ-(“to ride”)
現代の「道」という意味は新しい用法で、"roadway"つまり"a way for riding on"という風に「way」を修飾する言葉だったようだ。

route
←ME route, rute
←OF route, rote
←L (via) rupta ("(road) opened by force")
←L rumpere viam "to open up a path"
←L rupta
←IE *Hrunépti (“break”)
なるほど、ルートは道がなかったところをこじ開けて通れるようにする意味合いがあるのか。

street
←Anglian Old English strēt (“street”)
(cognate West Saxon form strǣt)
←PWGermanic *strātu (“street”)
an early borrowing from Late Latin (via) strāta (“paved (road)”)
←L strātus
←L pp of sternō (“stretch out, spread, bestrew with, cover, pave”)
←IE *sterh₃- (“to stretch out, extend, spread”)
ストリートは街路や舗装された道路のイメージがあったがそのはず、早い時期からラテン語から来た語彙だった。

path
←ME path, peth
←OEnglish pæþ (“path, track”)
←PWG *paþ
←PG *paþaz (“path”)
?←AG πατέω (patéō) / πάτος (pátos)
?←Proto-Iranian *pántaHh
←Proto-Indo-Iranian *pántaHs
←Proto-Indo-European *póntoh₁s
←from *pent- (“to go, pass; path bridge”)
ニューデリーの通りの名前 Janpathのpathが英語のpathの訳語だと思われて、ジャンパスと片仮名表記されることもあるが、ヒンディー語のपथ (path)はれっきとしたインド語派の本来語だ。ペルシャ傭兵を介してギリシャ語に入ったとの説?スプートニクも関係ある語源だとか。



मार्ग(mārg)
←Skt मृग (mŕg) "deer, antelope"
←Proto-Indo-Iranian *mr̥gás "forest animal"
インドでよく通名につかわれるमार्ग(mārg)。もとは、鹿などの森林野生動物が残す足跡か獣道のことから出た「道」という言葉のようだ。印欧祖語までは遡らず、インド・イラン祖語の*mr̥gásまでしかたどれないようだ。別の言語からの借用か?

avenue, lane, alleyなどなど他のStreet suffixは他にもある。

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