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雨の近江①-「不死鳥の寺」三井寺へ-

3か月ぶりに訪れている京都の実家。
変わらない母にほっとするが、老いた母も猫も寝ている時間が増えた。
彼らが寝ている時間、せっかくだからどこかに出かけようと思い立つ。
京都はどこも観光客で溢れている。
人混みが苦手な私。しかも天気は雨。
眠る猫を見ながら、雨を見つつ静かに過ごせるお寺がないか思案する。
そういえば、滋賀県大津市にある三井寺(みいでら)のすぐ傍に野鳥観察スポットがあると聞いた。
昼過ぎに雨が上がりそうだから、三井寺をゆっくり回ってから鳥達に会えるかも。

今日もスヤスヤ寝ているニャン子

自宅から大津までは1時間弱。
雨の休日朝。ガラガラの電車に乗り三井寺を目指す。

通称三井寺、園城寺に到着。

「三井寺」で知られる園城寺(おんじょうじ)。
正式名称は長等山(ながらさん)園城寺。天台山門宗の総本山だ。
滋賀県大津市、琵琶湖の南西にそびえる長等山に広大な敷地を有している。
7世紀に大友氏の氏寺として創建され、一時は衰退したが9世紀に智証大師円珍和尚が天台別院として再建した。
以来、1200年を超える歴史の中で50回以上の焼き討ちに見舞われたが、智証大師を信仰する人々によって苦難を乗り越えてきたことから「不死鳥の寺」とも呼ばれている。

「三井寺」と呼ばれるようになったのは、天智・天武・持統天皇の三帝の誕生の際に 御産湯に用いられたという霊泉があり「御井の寺」と呼ばれていたことに由来するという。

10年前の秋にも訪れた

10年前に訪れた際、山の中腹に広がる境内の静寂で厳かな雰囲気や、1200年以上寺が継承されているという信仰の深さに感銘を受け、大好きな寺の一つに仲間入りした。
この日は雨で訪れる人は少なく、雨音が響く以外は静寂に包まれている。

国宝、金堂を望む。桜の開花が間近。

三井寺では前日から桜のライトアップが始まっていたが、予測より開花が遅れているようだ。
桜が咲いていればもっと綺麗なんだろうが、この静寂の方が私は好きだな。

金堂の廊下。

雨の匂いと、古い木造建築の匂い。
木々の匂いも入り混じる。
どこか懐かしい匂いだ。
歩くとギシギシとなる廊下。
廊下から降りしきる雨を眺め、雨音に耳を傾けていると、心がほぐれていく気がする。

雨に濡れた苔が綺麗
弁慶の引き摺り鐘

山門との争いで弁慶が三井寺から奪い、比叡山へ引き摺り上げたというこの鐘。
撞いてみると ”イノー・イノー”(関西弁で「帰りたい」)と響き、 弁慶が「そんなに三井寺に帰りたいのか!」と怒って鐘を谷底へ投げ捨ててしまったという言い伝えがあるという。
本当だとすると弁慶、力持ちだなあ。
私だったら腰椎圧迫骨折する。

16世紀に再建された三重塔
雨の観音堂

観音堂は琵琶湖を一望できる高台に位置する。
金堂もだが、お堂の中に入ることができ静かに時間を過ごせる。
お香の香りをかぎながら、一体どれ程の人たちがここで祈ってきたんだろうと思いを馳せる。

晴れていたら観音堂から琵琶湖が綺麗に一望できる

境内ですれ違ったのは数名。
海外の観光客はいない。
1-2週後は境内が桜が満開になり大賑わいなんだろうな。

階段を降りて出口に向かう。
山のふもとにあるためか、境内の苔むす木々に小鳥たちがせわしなく飛び回っている。

エナガがちょこんと留まっていた。望遠レンズが欲しい。
コゲラもいる
メジロも花に吸い寄せられていた

10年前に訪れた時とはまた違う顔を見せてくれた三井寺。
雨の寺も情緒あって素敵だ。
静かな時間に、日頃の心の緊張がすっかりほぐれている。
また時を変えて来てみよう。

雨の中、1時間以上かけてゆっくり回った体はすっかり冷えている。
時間はちょうどお昼時。
門前にある食事処で温かいお蕎麦をいただく。

弁慶そば。湯気が立ち熱々。

関西に帰るとそば・うどんが無性に食べたくなる。
関東の黒いお出汁になかなか慣れない私。
この弁慶そば。鶏肉となめこにお葱が入り、山椒が効いておいしい。
ああ、身体があったまる。

ちなみに三井寺では力餅が名物だ。
抹茶が混じったきな粉がまぶされた柔らかい団子でとてもおいしい。
滋賀に住む姉がいつも買ってきてくれるので、今日は遠慮する。

食べ終えたあと、スマホで雨雲レーダーを確認。
あと30分ほどで雨が上がりそうだ。
徒歩5分の所にある長等公園に鳥がいるといいな。
カメラを望遠レンズに付け替え、三井寺を後にする。