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ウェブデザイナーが金属加工の現場に飛び込んでみたら

「BIRDY.」というファクトリーブランドの開発責任者をしている横山哲也と申します。

「BIRDY.」は2013年に誕生したブランドで、バーツール(バーでバーテンダーがカクテルを作る際に使う、シェーカーやメジャーカップ、バースプーンなどを総称してバーツールと呼びます)をメインに展開しています。
高品質な日本製のツールは海外のバーテンダーに高く評価されていることもあり、現在は世界22の国と地域に輸出され、各国のトップバーテンダーに愛用いただいています。

BIRDY. by Erik Lorinczのカクテルツール

「BIRDY.」が拠点を構えるのは、「クルマの町」と呼ばれる愛知県豊田市。日本の自動車産業を支えるものづくりで進化してきた街です。

「BIRDY.」の母体である横山興業も1951年の創業以来、自動車部品を製造してきました。

創業73年の老舗ものづくり企業

私の祖父が創業し、父が先代社長を務めましたが、いずれも熟練の職人による高い技術力を生かし、堅実な経営を行ってきました。

そんな、バーとは接点のなさそうな自動車部品メーカーが、なぜ、バーツールを開発したのか?
note.では「BIRDY.」誕生の背景や開発秘話をご紹介したいと思います。
 
私自身は音楽・アート・デザインが好きで、東京の大学では美術史を学びました。

卒業後はウェブデザインの会社に就職。仕事は楽しく、充実していましたが、同時に「この世界では大成しないだろうな」という限界のようなものをうっすらと感じていました。

WEBクリエイター時代の著者

ちょうどその頃、家業の横山興業ではリーマン・ショックを受け、長く踏襲してきたビジネス・モデルの見直しに着手していました。

「生産拠点を新たにタイに設けるので、そろそろ戻ってこないか」、そんな要請(父から具体的には言われていないがそう感じた)に応じて故郷に戻ったのは、単純に「海外で働くのもおもしろそうだな」と思ったからです。
 
そうして現地工場の立ち上げ支援を行うことになりましたが、自動車部品の生産管理なんて一度も経験したことがありませんから、タイと日本を行き来しながら家業のものづくりのいろはを叩き込む毎日。

とはいえ、この1年半は刺激的でした。まったくの異業種からの転身ということもあり、自分たちが手がけた部品が車に搭載され、世界中に輸出されることに自動車産業のダイナミズムを感じて、日々、ワクワクしたものです。

タイ現地スタッフとの食事会

こうしたなかで、横山興業の新規事業開発のプロセスも進んでいきました。
ご存知のようにリーマン・ショックは自動車業界に大きな打撃を与え、横山興業もそのあおりを少なからずに受けました。

そもそも、下請けのビジネスモデルは「与えられた図面の規格を満たした部品を生産する」というものですから、付加価値を生み出しづらい。

これからの時代、自分たちが持っている技術力の付加価値を高めるため、また、技術をさらに発展させて未来に継承するために、「部品ではなく完成品を作って顧客に届けることができないだろうか」、そう考えたのです。
 
自分たちは果たしてどんなプロダクトを製造することができるのか?そのために始めたのが、工場内で行っている、曲げる、穴をあける、溶接するといった金属加工のプロセス一つひとつを、作業ごとに切り分け、その可能性を精査することでした。
 
続く

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