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忍耐と我慢

アルコール依存症のななにいにです。
私は「忍耐」という言葉が好きです。あらゆる欲望に耐えて自分を律して生きていくかっこいい男のイメージがあります。
でも「我慢」という言葉は嫌いです。アル中なのに酒が飲みたすぎて、ギュッとこぶしを握って脂汗をかいて我慢しているイメージがあります。
今回は「忍耐」と「我慢」についての違いを私の経験をもとに書いていきたいと思います。

【ポイント:前向きなのが忍耐、受け身なのが我慢】
私は今年の4月にアルコール依存症病棟を退院しました。休職中の身ですので無職ではないのですが、回復を明確に確認できるまで復職は認められていないので、落ち着かない状況が続いております。
退院した直後電車に乗って自宅に帰っていると、ふいに私は酒が飲みたいと思いました。酒さえ飲めればこの落ち着かない感情が静まって、冷静になることができると思いました。しかし、病棟の看護師さんや先生は三か月もの間、私の断酒を心から応援してくださっていました。この気持ちを裏切りたくないなと思いました。手をギュッと握って酒のことを忘れようとしました。
このとき私は酒を「我慢」していたと思います。変な汗も出ましたし、口も乾いて、身体も酒を求めていました。

そこで私は自助グループ通いをはじめました。アルコホーリクスアノニマス(AA)の会場が近くにあったのでそこに参加することにしました。AAは同じアル中の人たちが集まり、互いの経験や断酒の方法などを分かち合います。科学的根拠は薄いのですがそこに参加し続けることで酒を飲みたいという欲求が消えるのです。世界で200万人がAAに参加することで酒を辞めています。

私は酒を辞めたい一心でAAに通いました。いまはZOOMでミーティングも行われているので、夜間や早朝にもAAに参加しました。私は話をすることが得意ではなく、自分のする話の内容は大して面白くもないし、支離滅裂になることも多くあるのですが、「言いっぱなし聞きっぱなし」なことに救われました。話した内容に関して言及をされることはないので、安心してお話をすることができます。

確かに酒は止まるのです。しかし、酒が止まり始めるとAAに参加することが面倒くさいと感じられるようになりました。AAなんかもう行かなくても酒は止まると思ったのです。AAに通う仲間から、「それは高慢な考えだから一生通い続けるんだよ」と助言を受けました。納得はしたのですが毎日1時間半も人の話を聞き続けるのが面倒くさくていきたくないのです。ゴルフの練習をした方がよっぽど人生に役立つと思いました。
そして現地会場のミーティングから足が遠のき、ZOOMミーティングが中心になりました。それでも「面倒くさいなあ」と思いながら毎日少なくともZOOMでは参加しました。
惰性でラジオ代わりにオンラインのAAに参加しているうちに、重い足取りで現地のAAにも参加するようになりました。誰からどうこう言われるでもなく「酒を辞めたい」という一心でAAとつながり続けました。前向きにコツコツ耐え忍ぶこと、これを「忍耐」といいます。

私は同じ断酒の過程で「我慢」と「忍耐」を経験しました。結局は気の持ちようなのですが、それさえ理解してしまえば何事も前向きに取り組むことができるんじゃないかなと思います。

「忍耐強く」ものごとに取り組み続ける姿勢は「楽しみながら」ものごとに取り組み続けることよりも人格の成長に役立ちます。楽しみながら物事に取り組む、とくに楽しみながらAAに参加するということは、欲望のままに酒を飲んでいた時と全く変わらない行動をしているのに変わりないからです。
これまで私たち依存症者は自分がやりたいことをやり、やりたくないことをやらないという選択をしてきました。これから人格を変えていくためには、やりたくないことをやり、やりたいことをやらないという選択が必要になります。常に人生に負荷をかけ続けることが必要です。
一般的に面倒くさいと思われることを「楽しい」と思いながら継続していると「すごいね」と褒められることはありますが、本人はただ楽しいからやっているだけですので全くすごくはありません。AAでいえば会計係のような「面倒くせえ」と思えるような役割を担当するなど、負荷を自分でかける必要があります。
「面倒くせえ」と思いながらも、嫌々コツコツと継続できるようになること、これが「忍耐」であり人間性の成長につながると私は思います。このことは決して我慢でありません。忍耐強い人間になることで人生をさらに豊かに過ごすことができるのだろうと思います。

最後に、忍耐を続けていくことは容易ではありません。ストレスを感じて感情のプレッシャーが高まるとどうしても酒が私の場合近づいてしまいます。忍耐を意識するよりは、とにかくストレスを避けるように心がけることが大切でしょう。ストレスをうまくかわす方法に関しては後日書きます。

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