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車のサブスク?時代の先を行きすぎた「P-Way」

車のサブスク

IDOM(ガリバー)のNOREL、トヨタのKINTO
最近、「車のサブスク」として自動車関連企業がはじめているビジネスモデルです。

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ご存知ない方のために説明すると「車の車体代金」「税金」「任意保険」などをひとまとめにセットした月額料金制のリースに近いサービスです。

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インターネット申し込みなどができる点も相まって、MaaSの先駆けとして特にトヨタなんかは推しに推しています。

車のサブスクの先駆けとは?

こんな「車のサブスク」の先駆けとも呼べるサービスが遡ること18年前の2002年にトヨタが提供していたのはご存知でしょうか?

その名も、P-Wayというサービスです。しかし、このサービスわずか1年足らずで廃止となってしまったのです。

WiLLプロジェクト

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このP-Wayを語る上で欠かせないのが、WiLLプロジェクトです。
覚えている方も多いんじゃないでしょうか?
WiLLプロジェクトは2000年代初頭に行われた、異業種合同の商品開発プロジェクトです。
当時、ニュージェネレーション層と呼ばれていた20〜30代の若者層をターゲットにした商品を各社合同で、共同のWiLLというブランドのもとで開発しようという試みでした。
トヨタ自動車もこのWiLLプロジェクトに参画しており、その第三弾となるのがWiLLサイファという車です。WiLLサイファのために新たな販売手法として考えられたのがP-Wayだったのです。

ちなみに、WiLLプロジェクトは参加企業間の温度差が大きく、2004年にはプロジェクト自体が瓦解。WiLLサイファがトヨタ自動車にとっては最後のWiLL商品となりました。

WiLLサイファについて

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WiLLサイファは「ディスプレイ一体型ヘルメット」というコンセプトのもとデザインされたモデルです。
この車の特徴としてはトヨタ車ではじめて「G-BOOK」を標準装備していたという点です。今風に言えば、コネクテッドカーだったわけです。
G-BOOKを搭載していることによりナビを通して常時通信ができたのです。

P-Wayの仕組み

G-BOOK搭載、そして常時通信可能という2つの強みを生かしてできたのがP-Wayです。
P-Wayでは車から送られてくる走行距離のデータを使って毎月の利用料金が変わるという斬新なリースシステムを採用しました。
リースの月額料金は基本料金の5500円に加え走行距離1kmあたり45円(5年縛り、5000kmまでの場合)となっていました。

ここで日本人は平均して年間1万キロ程度車で走ると言われています。
これを1ヶ月に直すと約800km。
月800km走行時の月額料金が41,500円となりだいたい今のKINTOと同じ料金です。
この料金で車を持てるのであればかなりお得、と支持されたことも相まってWiLLサイファの販売台数の17%がこの方式で購入するまでになりました。

P-Wayの問題点

しかし問題が。
WiLLサイファは「女性向け」「街乗り・チョイ乗り向け」の車だったのです。
しかも、走行距離に応じて月額料金が変わるのであれば、乗らないことへのメリットが大きくなってしまいます。
想定よりも実際に顧客が走行する距離が短く、採算が合わなくなってしまったのです。

例えば月々200kmしか走らない場合、月額料金は14500円となります。
これを5年間払い続けるとすると、87万円。
価格コムによると新車価格は132万円だったそうです。
差し引くと45万円で5年落ちの車を下取りせざるを得ない状況になってしまいました。大赤字です。

P-WayとKINTO

こういった失敗もあってP-Wayはわずか10ヶ月で廃止となってしまいました。
しかし悪い点ばかりでもなく、WiLLサイファは良質な中古車が多数リースアップでトヨタに帰ってきたこともあり、数年間はヴィッツなどと比べて中古の相場を高く保つことができました。
この知見を生かして(かどうかはわからないですが)KINTOでも2020年中に中古車のリースを開始するというニュースもあります。

しかし、KINTOは3年で54000キロまでと距離の縛りは緩め。
KINTOで3年リースした車をまたKINTOで中古車としてリースに出すという黄金のサイクルをトヨタ自動車は作ることができるのでしょうか?

今後に期待です。

以上、街でWiLLサイファを見かけたときに思い出すお話でした。

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