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【七転び八起きの三転び目③】

【七転び八起き】マガジン

 数字にすると分かりやすいから包み隠さず書いてみるけど、BRASS MONKEYの場合、12月なんかは家賃5万円の物件で250万ぐらいの売上があって、社員は雇わずに自分と最小限のアルバイトたちだけで営業していたから、経費を色々と払ってもザックリ100万ぐらいは利益が出ていたかな。
 12月と1月は特に年間でも売上の高い月だから、ローシーズンはもちろん沈み込むわけで、毎月そのくらい売り上げていたわけではないけど、固定経費が低いから売上が低ければその分経費も減るのでローシーズンでも赤になることはないし、ダメージは少なかった。

 ただ、1店舗であれば黒字でしかなかったけど、その売上からELECTRIC SHEEPの赤字を補填していたのがビジネスとしては良くなかった。
 そこを補えるぐらいの余裕があったから、ちゃんと向き合わなかったんだよね、そのうち伸びるだろうとか希望的観測ばかりで。もちろんオープンして何ヶ月かは良い月もあったけどね。
 ELECTRIC SHEEPは共同経営のようなカタチで、スタート時は利益からそれぞれパーセンテージを配分するシステムにしていたけど、あまり売上の良くない時は利益を取っていなかったし、悪い時には最低保証はしなきゃと思っていたのでBRASS MONKEYの売上から補填したりもしていたから、ビジネスのシステムとしても良くはなかったのかもしれない、いやハッキリ言うと破綻していたか。
 歩合なら歩合で売上がなければ稼ぎもない方が緊張感があるし、やりがいもあったのかもだけど、経営方針やマーケティングの決定権が自分にあったため、そこの責任はどちらが背負うべきかというのはやはり自分だと思っていたからそうしたということなんだけど。

 日々、忙しくて忙しくて頭が回ってなかったってのもあるし、ELECTRIC SHEEPに関しては自分が店に立っていたわけではないので客層や流れってのを掴みきれていなかったのも悪かった。
 もちろん報告は受けていたんだけどね、それを真剣に受け止めるには器が足りていなかったというか、すでに溢れるほどの水でいっぱいいっぱい。

 あとは仕入れとか消耗品、ロスに対する考え方が雑になっていて、売上があるとやっぱり良いお皿やグラスも欲しくなるし、そういうお店への投資は良いことではあるけど、あくまで計算されたものでなくてはならなくて、その辺りが雑になったのは経営者としての能力や経験不足を露呈していたと思う。
 移転してキャパを大きくして、そこを売上的にもオペレーション的にも軌道に乗せてからの多店舗経営であればもう少しマシだったのかもって思うけど、急ぎすぎてたし調子にノッてたしモテたかったしカッコつけたかったし色々あって悪手に悪手を重ねてしまったんだと思う。抗えない煩悩と本能のせいだね。

 BRASS MONKEYは安定した売上を叩き続け、ELECTRIC SHEEPはオープンをピークに緩やかな右肩下がり。

 そんな感じであっという間に1年が過ぎ去っていった。いや半年だっけ?正直あんまり覚えていない。

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