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【タスマニア劇場⑥】

【タスマニア劇場】マガジン

 小雨の日は稼ぎ時、マークのつきやすい青リンゴは収穫できないから、代わりにフジの収穫だ。
 青リンゴで磨いたスキルがあればフジの収穫は容易く、赤りんごはマークをあまり気にせずにガシガシやれるからスピードが違う。おそらく1日で青リンゴの2倍近い額を稼げたんじゃないかな。
 あと少し時期がズレていれば最初から最後まで赤りんごのピッキングだけやれていたと思うと勿体無い。次回への反省を未来に活かせないのがワーホリの良いとこだ。実際そんなもんなんだよカンガルーの美学だ。前へ進め。

 青リンゴを呑気に日々もいで、たまに赤リンゴで荒稼ぎ、みんなでリンゴとイチゴのジャムを作ったり、パイを焼いてみたり、そのまま焼いてみたり、もうしばらくイチゴとりんごは見たくもないと誰もが思っていただろう。

 そしてある程度の貯蓄ができて、ピッキングライフともそろそろサヨナラだ。せっかくだから何人かでレンタカーをシェアして北に向かうことにした。
 飛行機で帰る奴らはローンセストンを目指し、フェリー組はデボンポートに向かう。その途中にそれぞれの行きたいところに寄る旅。

 まず目指したのはフレシネにあるワイングラスベイ・ビーチ。ものすごく不安になるぐらい田舎だったけど、その景色は強烈に記憶に残っている。さっきGoogleで写真見て思い出したんだけど、ここは素晴らしかった。どうやら世界10大ビーチの1つに数えられたこともあるらしい。
 山道を登っていく途中に孔雀がいたり、野生のワラビーと喧嘩しそうになったりもしたけど、カンガルーとワラビーに遭遇したらまず真正面に立たないことだ、ここ大事だから覚えておいて損はない、とにかく息を呑むような景色に出会える場所と覚えておいて欲しい。

 タスマニアで運転する時は、むしろオーストラリア全般にいえることなんだけど、夜の長距離ドライブは極力避けよう。なぜなら夜は本当にガチで動物たちが車に突っ込んでくるから。
 カンガルーやらワラビーやらなんやらなんやら大小様々なやつらがヘッドライト目指して特攻しかけてくるから要注意。注意してても避けられないぐらいなもんで。

 ワイングラスベイを楽しんだ後は、女子たちが大好きなジブシリーズ『魔女の宅急便』のモデルになったと言われるパン屋を目指す。
 そこはロスっていう名前の田舎町なんだけど、魔女宅のモデルになったパン屋があるってことで日本人には有名な観光地になっている。おそらくジブリ好き以外の観光客がここに立ち寄ることなど滅多にないだろう。
 ちなみにパン屋の名前は『ロス・ビレッジ・ベーカリー』で、そこの名物は『キャノンボール』だったと記憶している。

 さて、実はこのベーカリーには宿泊施設も付いていて、大人気の『キキの部屋』ってのがあるんだけど、偶然その日はその部屋が空いていたからそこに泊まることにした。予約が取れないぐらい人気の部屋が偶然空いていたのはラッキーだ。
 その部屋はパン屋の上にあって、まさに映画のキキの部屋を再現したような部屋で、というか完全にビジネス目的で再現した真新しい部屋なんだけどね、商売根性逞しいかよ。なぜかトトロのDVDがおいてあったし。
 オーストラリアにもいくつかある『ジブリ作品のモデルになったらしい場所』ってシリーズのうちの1つで、そのほとんどは景色だったりただの木だったりだけど、ここはパン屋ということを上手く利用してマネタイズしてる稀有な例だ。
 普通にオーストラリアの田舎に宿泊して、パンの焼ける香りで目を覚まして、1階に降りると朝食はカフェと焼きたてパンの食べ放題、ジブリ関係なく十分に満喫できる内容だったからここの印象はとても良い。

 次の目的地はどこだっけ?Googleマップでタスマニアを見てみて。
 そう、クレイドルマウンテンだ。

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