マガジンのカバー画像

メグレ警視シリーズについて

38
メグレ警視とジョルジュ・シムノンに関する投稿をまとめています
運営しているクリエイター

記事一覧

メグレシリーズ リンク集

原作 総合 ジャン・ギャバン主演 ブリュノ・クレメール主演 マイケル・ガンボン主演 ローワン・アトキンソン主演 単発作品 ※個人的オススメ作品※ 上記リンク作品から個人的にオススメする作品を記載しています。 ☆=面白いがオススメかどうかは好みが分かれる部分あり ☆☆=誰にでもオススメだが気になる点はあり ☆☆☆=文句なくオススメ 原作 03『サン=フォリアン教会の首吊り男』 ☆☆ 09『男の首』 ☆☆☆ 25『メグレと奇妙な女中の謎』 ☆☆☆ 44『メグレ

2023年はメグレ警視の年だった

前からメグレ警視シリーズは興味があって、原作も何冊か読んでいたが、その当時はあまりハマりませんでした。 翻訳ミステリー大賞シンジケートで2014年から連載が続いている瀬名秀明さんの「シムノンを読む」も楽しんで読ませてもらっていますが、それでも積極的に本を読むまではいきませんでした。 今年になってパトリス・ルコント監督『メグレと若い女の死』が公開され、早川書房から原作の新訳版が発売されたのを機に原作を購入・読了。 映画の原作『メグレと若い女の死』に見事にハマり、4月から少

メグレ警視シリーズ長編03『サン=フォリアン教会の首吊り男』(1931)+江戸川乱歩『幽鬼の塔』+天地茂・主演14『五重塔の美女』 紹介と感想

シムノンの原作、乱歩の翻案、乱歩作品を原作としたドラマと、三者三様の違いを持った作品となります。 ジョルジュ・シムノン『サン=フォリアン教会の首吊り男』(1931)あらすじ メグレはベルギー出張の帰り、身なりに似合わず大金を封筒に入れて持ち歩く男を見つけ、興味本位で後をつける。メグレは隙を見て男が大切そうに持っている鞄を似た鞄とすり替えるが、男の鞄には古着が入っているだけだった。 その後、ホテルで鞄の中身が違う事に気づいた男は、口の中に拳銃を突っ込み自殺した。 メグレは男

メグレ警視シリーズ長編09『男の首』(1931)紹介と感想

ジョルジュ・シムノン/宗左近・訳『男の首』グーテンベルク21, 2004(電子書籍) あらすじ 死刑囚ウルタンは、金持ちの老婦人ヘンダーソンと女中を殺した罪でラ・サンテ監獄に投獄されていた。 刑の執行を待つだけだったある日、脱獄の指示が届いた。 この指示は、自分で逮捕しながら、ウルタンが真犯人とは思えなかったメグレの指示によるものだった。 手筈通り脱獄したウルタン。メグレは、デュフールとジャンヴィエを尾行につけた。 紆余曲折ありながらウルタンを尾けていると、徐々に背後に何

メグレ警視シリーズ長編25『メグレと奇妙な女中の謎』(1944)

ジョルジュ・シムノン「メグレと奇妙な女中の謎」『EQ MAY'86 NO.51』光文社, 1986, p213-280 あらすじ パリから数キロ離れたジャンヌヴィル分譲地で、気難し屋の男《義足のラピィー》が銃殺された。 メグレは、ラピィーと一緒に暮らしていた女中のフェリシイに話を聞こうとするが、つっけんどんな態度を崩さない。 あまつさえ、警察の尾行をまいたり、嘘をつき続けたりする。 そんな彼女に苛立ちながらも、拘ることをやめられず付け回すメグレ。 自分の家のように動き回る

メグレ警視シリーズ長編44『メグレと田舎教師 Maigret à l'école』(1953)

あらすじ 朝、メグレが出勤すると、司法警察の待合室に使われている、《煉獄》と呼ばれているガラス張りの部屋に一人の男が居た。 メグレは、対して気にも留めずリュカを連れて外に出る。 一仕事終えて帰ると、男はまだ待っていた。どうやら、メグレに個人的に会いたいらしい。 男は、サン・タンドレという小さな村で小学校教師をしているジョゼフ・ガスタン。 彼は、自分がよそ者なので、レオニ・ビラールという元郵便局員の老女を殺した罪を着せられそうになっていると、メグレに助けを求めに来たのだ。

メグレ警視シリーズ長編48『メグレと首なし死体 Maigret et le Corps sans tête』(1955)紹介と感想

ジョルジュ・シムノン/長島良三・訳『メグレと首なし死体』グーテンベルク21, 2006(電子書籍) あらすじ ノオ兄弟の伝馬船のスクリューに男の片腕が引っかかった。 その後の警察の調べで、バラバラにされていた残りの身体も見つかったが、首から上だけが見つからない。 ラポワントを連れて捜査を行っていたメグレは、電話をするためにくすんだビストロに立ち寄った。 そのビストロの女主人は、メグレが何を話しても何の関心も示さず、必要以上の返事もしなかった。 女主人の印象が強く残ったメグ

メグレ長編53『メグレと口の固い証人たち』Maigret et les témoins récalcitrants(1958)紹介と感想

ジョルジュ・シムノン 長島良三訳『メグレと口の固い証人たち』河出書房新社,1983 あらすじ 11月3日の月曜日。定年まであと2年のメグレは不機嫌だった。 司法警察局でラポワントが逮捕した『修道者』グレゴワール・ブローと話していたメグレの元に殺人事件の知らせが入る。 被害者はレオナール・ラショーム。1817年創業の老舗菓子会社ラショーム・ビスケットの中心人物だった。 メグレが現場へ行ってみると、家の前時代的な古臭さと、通常の場合に見られるような反応が家族に見られないのが気

メグレ警視シリーズ長編62『メグレと幽霊 Maigret et le Fantôme』(1964)紹介と感想

ジョルジュ・シムノン/佐宗鈴夫訳『メグレと幽霊』河出書房新社, 1982 あらすじ 手がけている事件に目途をつけ、深夜に帰宅したメグレは眠りについた。 翌朝、夜勤だったラポワントの訪問により、予定の時刻より早く起されることになる。 ラポワントは、十八区の刑事・ロニョンが銃で撃たれ生死の境をさまよう重症だと知らせに来たのだ。 ロニョンは、最近夜勤の勤務を希望し、十日ほどマリネット・オージェという若い女性と一緒に居ることが多かったようだ。 ロニョンが撃たれると同時に、姿が見え

メグレ警視シリーズ長編69『メグレの幼な友達 L'Ami d'enfance de Maigret』(1968)

ジョルジュ・シムノン/田中梓訳『メグレの幼な友達』河出書房新社, 1984 あらすじ 六月半ばの昼下がり、書類仕事をしながら蠅と戯れていたメグレの心は、いつの間にか学生時代に飛んでいた。 そこに、バンヴィル高等中学校で同級生だったフロランタンが訪ねてきた。会うのは二十数年ぶりだった。 フロランタンは、つきあっている女性・ジョゼが銃殺された、その時に自分も家の中の衣装部屋の中にいたとのことだった。 メグレは、フロランタンにも、その話にも面白くない気持ちを感じた。 スッキリし

メグレ警視シリーズ長編72『メグレと老婦人の謎 La folle de Maigret』(1970)

ジョルジュ・シムノン/長島良三・訳『メグレと老婦人の謎』河出書房新社, 2001 あらすじ 生死に関わる事があるためメグレに会いたいと、レオンティーヌ・アントワーヌという老婦人が司法警察局を訪ねてきた。 重要とは思わなかったメグレは、ラポワントに対応をしてもらう。 老婦人によると、二週間に少なくとも五度、部屋の家具類の位置が動いており、外出中も尾けられているとのことだった。 このような訴えは日常的に多いこともあり、メグレもラポワントも本気に取り合わなかった。 その日の仕事

メグレシリーズ短編「ポールマルシェ大通りの事件」「死刑」「ピガール通り」「メグレの失敗」 紹介と感想

ポールマルシェ大通りの事件(1936) あらすじ 26歳のルイーズ・ヴォワヴァンという女が、ジギタリス中毒で死んだ。 家には他に、夫のフェルディナンと18歳になるルイーズの妹・ニコルが暮らしていた。 フェルディナンとニコルは愛人関係にあり、ルイーズは二人の関係を嫉妬し、四六時中二人の様子から目を離していなかったのだ。 メグレは、二人を司法警察へ呼び、ニコルへの尋問を続けていた。 朝から尋問を続け忍耐の限界が見えて来たメグレだが、二人への尋問を通して真相を見つけ出す。 紹

ジョルジュ・シムノン『メグレとしっぽのない小豚 Maigret et les petits cochons sans queue』(1950)紹介と感想①

ジョルジュ・シメノン著 原 千代海訳『メグレとしっぽのない小豚』早川書房, 1955 収録数が多いので、個別感想は①~③と④~⑨へ分けて記載しています。 ↑ ④~⑨の感想はこちら 全体概要&総評 メグレ警視シリーズ短編2作とノンシリーズ7作の全9編が収められている短編集です。 『メグレとしっぽのない小豚』となっていますが、実は「しっぽのない小豚」はノンシリーズで、「メグレ」と「しっぽのない小豚」になります。 収録短編は以下の9本です。 ① しっぽのない小豚 Les

ジョルジュ・シムノン『メグレとしっぽのない小豚 Maigret et les petits cochons sans queue』(1950)紹介と感想②

ジョルジュ・シメノン著 原 千代海訳『メグレとしっぽのない小豚』早川書房, 1955 収録数が多いので、個別感想は①~③と④~⑨へ分けて記載しています。 ↑ 短編集概要&総評と①~③の感想はこちら ベルカン氏という男 Un certain Monsieur Berquin(1946) あらすじ 車を運転していたビデュ氏は、前を走っていた車が急カーブを曲がり切れずに横転しているのに行き交った。 車の傍には頭を怪我して放心状態の男が座っており、車の中には足を擦った若い女が