見出し画像

ケサランパサランについて~『ケサランパサラン日記』の紹介と感想+ケサランパサランについて調べたこと

西 君枝『ケサランパサラン日記』草風社, 1980


西 君枝『ケサランパサラン日記』紹介と感想

 自宅の庭先で偶然ケサランパサランと出会った事から始まる、孫にも協力してもらいながらの観察の日々。
そして、ケサランパサランの持主が多いと言われている宮城県への旅の記録を、豊富な写真と一緒に送る。

 自分にとってケサランパサランと言えば、スーパーマリオワールドで登場し、スーパーマリオブラザーズワンダーでも再登場している、あれでした(マリオではケセランでした)。
 しかし、この本を読んだことで、この世のケサランパサランは白いのだと知りました。どちらかと言うとヨッシーアイランドの触ると酔ってしまうワタボーに近いです。
 ワタボーは、どちらかと言うと動物性のケサランパサランに近いのですが、本書がメインで観察するのは植物性のケサランパサランになります。

 ケサランパサランについてちゃんと知ったのが初めてだったので、昭和50年代にケサランパサランが一時期流行っていたことも今回初めて知りました。
 著者も、その頃にテレビの特集番組でケセランパサランを知り、翌年庭先で偶然ケセランパサランが手の中に舞い込んできて、俄然興味を惹かれていきます。

 見つけたケサランパサラン(ケサパサ君)に、個別に名前を付けてかわいがる様子や、調べていくうちにビワの木から発生しているのではと仮説が生まれる様子に、物事に真剣になり知識や思考が拡がっていく喜びを感じました。
 何かに熱中するということの面白さ、ケサランパサランを観察することで、何十年もそこにあった景色を再確認する視野の広がり。それは、人の調べた知識を読むだけでは得る事の出来ない、最高の体験だと思います。

 この観察記録は全て時系列に沿った日記体で進むので、変わった題材のエッセイとして楽しんで読む事が出来ました。

 今、このようにケサパサの発生のしくみがわかったので、何のこともなく思われるけど、こんな眼の前にいる、種のような生きものに、どうして気付かなかったのか、不思議にさえ感じられる。こんなに、身近にある自然の中にも、まだ気付かないものがあったのだ、という発見。とすれば、まだまだ沢山の、未知のものが、案外、身近にひそんでいると思われる。

西 君枝『ケサランパサラン日記』草風社, 1980, p127


ケサランパサランについて少し調べてみた

 白い毛玉状の生物で、ケセランパサラン、テンサラバサラ、ヘイサラバサラなどの別名があるそうです。持つ物に幸福をもたらすとされ、一年に一回だけ見ると良いなどとも言われています。

 動物性(ウサギの毛皮など)、鉱物性(馬ん玉)、植物性(ビワの葉の綿毛など)の3種に大別されることが多く、山形県や宮城県などには、宝物として神様に祀る旧家や寺社もあるようです。餌は白粉となり、箱の中(桐箱が良いらしい)で飼うのが一般的とのことです。

 1950年代に『民間伝承』誌上で「テンサラバサラ問答」が起こり、動物性、鉱物性、植物性それぞれが本来は別種の存在であったが、名前が与えられたことにより、同一のものとして解説されるようになっていきました。そして、1970年代後半にブームにより、より強固なイメージとなったようです。

 ケサランパサランをモチーフとした絵本『てんさらばさら てんさらばさら』や、童話「けせらんぱさらんのふる日」など直接的に題材としたものから、一つのモチーフとして使用している小説など、文学作品にも度々現れています。


〈参考文献〉
・画・水木しげる/編著・村上健司『日本妖怪大辞典』角川書店, 2005, p.133
・小松和彦・常光 徹 監『47都道府県・妖怪伝承百科』丸善出版, 2017, p66
・飯倉義之「「名付け」と「知識」の妖怪現象—ケサランパサランあるいはテンサラバサラの一九七〇年代—」『口承文芸研究2006年3月(第29号)』所収, 白帝社, 2006, p124-137
・岩崎敏夫『民俗民芸双書28 村の神々』岩崎美術社, 1968, p.99-100
・わたり むつこ さく、ましま せつこ え『てんさらばさら てんさらばさら』福音館書店, 1983
・日本児童文芸家協会/編『メルヘン・オムニバス』パロル舎, 2002, 111-126

見た目的にはワタボーの方がケサランパサランみたい

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?