連作短歌「呼び出し音からさようなら」

胸の奥住み着くブルージーンズの匂いをまとう六月の亡霊

久しぶりの基準は左手に残る指先のキスを忘れた頃です

上唇と下唇がせわしなく二回くっつく深夜の呼び方

何回も掛け直しても出てくれないし、出れないってのがもう答えでしょ

まずいって言うなら吸うなよ 臭いとか言うくせ金マルそれ私のだし

日高屋の机の下のメニュー取るふりしながらつながる小指

無理矢理に話題を作ってくるくせに飲みの誘いはシカトですか

いい加減正気に戻るならせめてカップ麺つくる朝にしてよ

もう二度と会わないって約束は守ってちょーだい過去形にしよう

呼び鈴の先に細いリードつけ私は愛の忠犬でした

「もうねなよ」「おきてる?」「よった」「だいじょうぶ」「ねなよ」「おそいよ」「おきてる?」「ねたの?」

すきだとかきらいだとかうざいとか、そんなの深夜の電話でしてね


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