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詩 「消えたノート」



ある日のこと

ぼくがいつものようにnoteに来ると
その人はすでに姿を消していた


その人は
ぼくがこの図書館で見つけた
素敵なノートの作者だった


ぼくと消えた作者との交流といえば
互いのノートを読むことだけだった

本当の名前も顔も知らない
どこかのだれかのノートなのに
その人が作ったノートには
いつもその人がいるのだった


そして今
作者もノートも消えてしまった
最初から何もなかったかのように

あとに残ったものは
そのノートを読んでいた記憶と
作者の不在を知らせる穴だった


ノートが消えた本棚には
大きな空白ができていたから
隣のノートが倒れないように
ブックスタンドを持ってきて
支えるようにそこに置いた


いつも通っていたこの本棚から
あの人のノートが消えるなんて
なんだか不思議な気分だった

この本棚の空白を埋めるのは
だれのどんなノートだろうか

この空白をできることなら
そのままにしておきたかった


いいことを思いついた
新しいノートを買ってきて
この空白を埋めてしまおう

もしもいつか
あの人がまたここに戻ってきたら
この新しいノートを使えるように


ぼくは新しいノートに
消えた作者の名前を書き
本棚の空白を埋めていった


しばらくすると
スキノオシラセさんがやってきて
消えた作者の新しいノートに
スキを置いていった

どうやら
作者が消えたことも
新しいノートの存在も
noteにはバレていないらしい


noteには来なくなっても
消えた作者が今もどこかで
ノートに何かを書いていたら
どんなに素敵なことだろう

もしもぼくが
そのノートを読むことができたら
どんなに嬉しいことだろう


だからいつか
気が向いたら
戻ってきてね

気が向かなかったら
どこかで元気でいてね

いずれにしても
新しいノートは
いつもいつでも
ここにあるから


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