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私は残された高校生に対して、「さっき彼女が教えてくれたこと、テスト当日に思い出せそう?」とたずねた。

ある高校生が私に、英語の問題集を見せてくれた。

彼はそのなかの4択問題について、「正解と不正解の違いがわからない。問題集の解説欄にもくわしい説明がない」と、困っていた。

私はその問題を見せてもらい、説明した。

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その途中で、別の人が現れて、私より詳しく説明した。彼女は大学生で、教員を志望しているのだとか。

ただ、彼女の話があまりにも早口で、まとまりがなかったので、なんだかいまいちよく理解できなかった。

私は彼女に質問した。「あなたは、いま高校生の彼に教えたのとまったく同じ方法でこういった問題を解いているんですか?」

すると彼女は、「自分は英語ネイティブなので、考えていない」「直感で決めている」「文章が自然かどうかで判断する」と答えた。

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つまり、彼女は自分で1回も試したことのない解法を他人に教えていたことになる。

問題集のそれは、文法にかんするものだった。彼女のいう「直感」や「自然」がなにを指すのか、私にはわからない。

たぶん、彼女がネイティブとして、いままでに触れてきた(膨大な)英文と、目の前の英文を比較しているのだろう。

彼女は「考えていない」と主張したが、実際には分析、評価、そして判断しているはずだ。ただ、それらの工程がほぼ無意識に行われるために、まるで考えなしに正解を選んだように感じられるのだと思う。

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彼女は、教師を目指していながら、その自信がないそうだ。

また、「わからない人が、なぜわからないのかがわからない」とも。「なんでこんなことがわからないの?と思ってしまう」という意味のことも言っていた。

当然だ。

そもそも自分が何をしているのかほとんど把握していないのだから。

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彼女はその後、場を荒らしてから去った。

私は残された高校生に対して、「さっき彼女が教えてくれたこと、テスト当日に思い出せそう?」とたずねた。

彼は「ぜったい無理」と答えた。

私たちはいっしょに笑った。







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