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亡き父が示してくれた道標 Part3

もうすぐ親父の三回忌
とはいえ、大きな仕事があって
出席することは叶わず
 
ただ、秋空が広がった
文化の日の前後で
帰省することができました
今日は、その時のお話です 
 
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実家に帰っても
どういうわけか
たいがい48時間くらいで
疲れ果てる
 
母は昔から良く気が効くけど
基本、人の事はお構いなしの人
何やかんやと、我を通してくる
 
親父が死んで思い知る
「よくまあ、こんな面倒くさい人と
何十年も寄り添ってきたな」と 
 
やって欲しいことを
色々お願いしても
大概、スルーされるし
 
ていうか、何、いらん仕事
増やしてくれとんねん!('ω') 
と言いたくなることもしばしばで 
 
おかげで
お年寄りの目線で
仕組みを作ることの大切さ

色々と学ばせてもらった

Photo by ISSA

紅葉を見に連れて行って
温泉に入り、外食して、買い物して
 
ヘトヘトになって帰宅したところに
母のマシンガン・トークは続く
 
おいおい、待て待て (^^;
こっちは家に帰ってからも
まだまだやることあるし
 
書類の整理やら
データの打ち込みやら
色々忙しそうにやってても
お構いなし
 
何度も何度も
同じ話が延々と続く…
  
適当にあしらっていても
一向に意に介さない様子
 
そのうち、テレビに向かって
ブツブツ文句を言っては
チャンネルをプチプチ変えまくって
しまいにはスイッチオフ (^-^;
 
最近は、誕生日にプレゼントした
ラジカセがお気に入りの様子 
 
ケ・セラ・セラ~♪とか
カーペンターズ♪とか
ハイカラな曲がお気に入りで
鼻歌交じりで、しばしご満悦♬
 
かと思いきや、次の瞬間
親父の仏前でぐずぐず泣いている
 
母いわく
「何が一番辛いかといえば
してあげる人がいなくなったこと」
 
確かに、そいういものかもしれない
マシンガン・トークの合間に
ふと、この世の理(ことわり)が
みえ隠れする

Photo by ISSA

そして、今頃になって初めて聞いた
両親の馴れ初め話 
 
母は医者の娘だった
 
あるとき
草野球で突き指をした親父が
母の病院に現れた 
 
親父は、その病院に
可愛い娘がいるので
付き合ってくれるかどうか
同僚たちとワイワイやりながら
賭けをしたそうな
 
そして
親父は母と付き合うことに
 
しかし、当初は
義父(母の父)に
ずいぶん反対されたようで 
 
確かに、祖父は厳格で
しつけに厳しい人だった
幼少期にそんな記憶がある 
 
それもそのはず
祖父は先の大戦で軍医として従軍し
終戦後もシベリアに抑留された
ゴリゴリの
カタブツ中のカタブツ…
 
それでも二人の交際は続き
洋画をたくさん観て
時には湖上のデートで
二人を乗せたボートが
転覆したこともあったそうな ^o^;

Photo by ISSA

ようやく
マシンガン・トークが終わり
床に就く
 
そして、寝る前に
親父の仏前で祈りを捧げる 
 
「すまんな、親父
三回忌は帰れそうにないわ
 
おふくろは
親父が死んでから
いつまでも
ふさぎ込んでるから心配よ
 
 
なあに
オレの方は心配いらんさ
色んなものを背負とるけど
何一つ投げ出したりせず
ぜんぶ背負って
歩き続けるけん 
 
とにかく
そっちから
おふくろのことを
しっかり見守って
支えてやってくれな」

Photo by ISSA

そうしてまた
翌朝の目覚めのときに
親父から
道標(みちしるべ)が
舞い降りた
 
最初に見えたのは
天井の片隅から
母を見下ろすビジョン 
 
母は、独り寂しげに
編み物をしている
 
その直後
次のようなメッセージが
脳裏に浮かんだ
 
「もう、○○(母)が頼れるのは
お前たち兄弟しかいないんよ
 
霊魂となったオレは
見守ることはできても
 
言葉をかけてやることすら
出来やしない

 
だから勘違いするな
母さんを支えるのは
オレじゃなくて
オマエ自身だ
 

お前たちからの
励ましの言葉が
彼女の生きる力になるのだ」
 
 
最初に見えた
天井の片隅から
母を見下ろすビジョンは
きっと、いつも親父が
見ているものだろう
 
そのビジョンから
伝わってくるのは
そうやって
見守ることはできても
声をかけて
励ますこともできない
もどかしさ
 
生きているお前たちが
ちゃんと
優しい言葉を口にして
励ましてやるんだ
 
きっと
そう伝えたかったに違いない

Photo by ISSA

確かにそうだ
 
これまでの自分は
できるだけ傍にいて
色々と手伝ったり
 
あっちこっち
連れていったりはしてたけど
思えば励ましの言葉など
ほとんど口にしていない

 
これからはできるだけ
優しい言葉を口にして
伝えるようにしてみよう
 
 
ありがとな、親父
オレはいつも照れ隠しばかりで
あなたたちに素直じゃなかった 
 
大きくなったつもりでいたけど
そういうところは
まだまだ子供なんだよな
 
いつも適当に聞き流していた
母の取り留めのない話
これからはもう少し
ちゃんと話を聞いてあげよう

 
そよ風の吹く
美しい青空の下
そう思えた
秋の一日でした
 
遠い空から
親父の冥福を祈りつつ

Photo by ISSA