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【あとがき】Oxymoron

この記事は前回の「Oxymoron」のあとがきです。

1.「Oxymoron」の意味

「Oxymoron」とは、撞着語法(どうちゃくごほう)のこと。撞着語法とは「明るい闇」「冷たい情熱」などの矛盾した意味の言葉を一つの文脈に入れること。

今回では、「明るい闇」「臆病な自尊心」「無音の悲鳴が喧しい」「生き方で殺す」などの表現がそれに該当する。

効果としては注意を惹きつけたり、その描写について考えさせたり、主張を強めたりする効果がある。

今回の文章の中に、この撞着語法自体に強い意味はない。

何かが矛盾していることを示唆している。

次の章で説明します。

2.今回のテーマは「矛盾」

矛盾した表現は、「本音を隠して素直になれない様子」や「照れ隠しで矛盾した言動を繰り返す思春期」に似ている。好きな子にわざと意地悪するみたいな。

主人公は、最初と最後で矛盾している。

最終的には会いに行くのに、努力している姿を見られたく無いから、メッセージで嘘をついて会わないようにしたり、本当は自信があるのに、「まだガキだし、勉強もしてない」と謙遜して自分の小説を書く夢を彼女に素直に表現できない。

「一人でいるのが好き」「アドバイスが嫌い」「誰に理解されなくてもいい」という主人公は、誰よりも僕を理解してくれる彼女の「面白い」というアドバイスに歓喜し、最後には、一人でいる時より楽しそうに彼女の前で水たまりを飛び越える。

矛盾したのは言動だけではなく、涙にも現れてしまう。泣きたくもないのに泣いてしまう。自分でも矛盾している自分が嫌いだったのかもしれない。矛盾した言動が、矛盾した感情を生んでしまう。

このタイトル「Oxymoron」つまり撞着語法のような、矛盾した文章が持つ曖昧さや不安定さは、将来への希望と絶望を含んだ子供から大人への感情の変遷に似ていると思う。

色んなことが矛盾しまくっている思春期の日常を表すために、文章の至る所に矛盾を散りばめた。

矛盾した文章⇨矛盾した僕⇨矛盾した思春期の感情を表している。

だから今回のテーマは「矛盾」だった。

3.「矛盾していてもいいんだよ。」

彼女も矛盾していたのかもしれない。

彼女はただ小説を書く僕を見守っていただけなのに、僕が泣き出すとやけに流暢に慰めの言葉をかける。書き出しや、僕の泣く姿を見た表情のように、時々、彼女は真剣な顔を見せるようだが、普段は天真爛漫な女の子に見える。

僕と同じで、照れ隠しで矛盾した本当の気持ちがどこかにあったのかもしれない。

そして、これが初めてお互いの本音がぶつかったシーンになったのかもしれない。

ただ、筆者がこの小説で伝えたかったのは、彼女のセリフである「矛盾していてもいいんだよ」である。

子供の頃の夢と今の自分、憧れの暮らしと今の生活、理想の容姿と今の容姿、多分、頭の中の自分や過去の自分は、今の自分と全く違うかもしれない。矛盾しているかもしれない。

でも、それでもいいってことに気が付いた。毎日知識や経験を得ながら理想を追い求めていったら、より良いものにブラッシュアップされるはずだし、夢や理想が変わっても、やっぱり根幹にある自分の大事な部分っていうのは変わらないと確信している。

だから、矛盾していてもいい。

思春期のもがいている時間は、矛盾していても全てに意味がある。

思っていた自分でなくてもいい。

絶対に理解してくれる人が現れて、結果も伴ってくるから。

4.またこの年齢の話

やっぱりこの年齢の時期が好きで、即興で考えるとこの類の話になってしまう。

もちろんそれぞれの話は違う人物だけど、2,000字って短いから連載のつもりで書いているという感覚もある。だから、今度、話を繋げてみたい。

あと、優しい女の子登場させすぎ。

5.書き出し

今回は、梅雨を表現したかったけど、あまり良い言い回しが見つからなかった。

今後、書き出しだけノートにメモするようにする。特に季節の入った書き出し。

6.お題について

やっぱり鑑賞者が読んでいて裏切られるような展開が必要なので、短い文章でなおかつお題が決まっている場合は、いつもお題を予想のつかないような登場にさせようとしている。

今回は、「闇」「落ちる」「路地裏」だったので、暗そうなストーリーにはなるべくしないようにしようと思ったけど、そういえば元から結構暗い話を書いていたことに気がついた。

以上です。ありがとうございました。


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