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オペラに行く前にやること<鉄則>

妄想が好きですか?
刺激たっぷりのオペラの世界へようこそ!

世間では、短い時間でコアな部分を手っ取り早く楽しむ「タイパ」なコンテンツが人気らしいけど、本当に好奇心が強いあなたはきっと1分の動画なんてすぐ飽きてしまうのでは?

それならぜひオペラを鑑賞してみよう。
長く楽しめます(笑)
美しいだけではないグロテスクな音楽に唸るかも知れない。
感動の物語かと思いきや、謎解きのような不可解なストーリーで戸惑ったり。
ドキドキ。
そんな時はどうするかって?
自分ならではの妄想を展開してみるのだ。
知らなかった世界を知ることで新しいアイデアも生まれる。
怖くないから、こちらの世界にいらっしゃい!


「何も知らなくてOK!」を信じるな!!

オペラ関係の偉い人が一生懸命チケットを販売する時につい口走ってしまうのは「何も知らなくてOKだから、とにかく来て、素直にそのまま感じてくださぁい」なんてメッセージなのではないでしょうか?

もちろん、悪気はなく、本当にそう思っているからそう言うのでしょう。

では、それを信じてオペラ公演に行ってみたら、どんなことが起こるか、みてみましょう。

予習無しで鑑賞したら・・・

字幕を読むだけで大変
最初から最後まで、ひたすら字幕を読むなんて楽しくありません。

字幕を読んでもストーリーが分からない
単純明快なハリウッド映画とは違います。字幕を読むだけで十分内容を理解できるオペラは少ないと思います。

一旦ストーリーを知れば、「おや、簡単な内容ではないか!」と思う作品もあるのですが、厄介なのは、知れば知るほど謎めいていて捉えようのない不思議な作品も多いことです(笑) だからこそ長く付き合える芸術と断言できるのですが、初鑑賞時の戸惑いは大き過ぎる!

そもそも作品が始まる前のストーリーが長過ぎるなんて場合もある。過去のことは作品内でも触れているのだけど、初鑑賞で字幕だけを追っていると、うまく理解しにくくて混乱します。他にも、複数の歌手が同時に歌うと、どの字幕が誰の歌かよく分かりにくいことなどもあります。字幕を読めばいいから何も知らないまま行って良いと思うのは禁物です。

字幕に集中していたので音楽や舞台を十分楽しめない
一体何しに行ったのでしょう?!(涙)

せっかくの生音楽なのに、字幕を必死に読んでいたので、歌声やオーケストラの音があまり記憶に残っていないなんて残念過ぎます。

舞台セットや歌手やダンサーたちの衣装、演技や場面展開など、舞台上で起こることも見どころの一部です。楽しまないと損です。

字幕を必死に読むと言うことは、それ以外のことに集中できないということです。つまり、オペラ上演には字幕が付いているけど、字幕に頼りすぎないレベルまで事前準備が必要ということです。

感想→よく分からないけど何となく凄かった→きっと二度と行かない(笑)
さて、初めてオペラを観に行って、字幕を読みまくって、ちらほら少しだけ音楽や舞台を楽しんだ人の感想はどんなものになると思いますか?

きっと、何となく凄かった(ような?)みたいな?・・・そんな苦し紛れの感想を持つでしょう。あるいは字幕を読むのを諦めて、音楽を子守唄にしてぐっすり寝たとか(笑)

よく分からないけど何となく凄かったという感想であれば、きっと1回切りのオペラ鑑賞体験として終わりにしてしまうでしょう。ああもったいない!(ぐっすり寝てしまった人もきっと二度と行かないでしょう。ああもったいない!)

オペラ関係者とあなたの情報の非対称性

オペラ関係者は決して悪気があって「何も知らなくていい」と言ってしまうのではありません。チケットを売ることが大事ということだけでもありません。

オペラ関係者が知っている情報とオペラ初心者が知っている情報に大きな差があるのです。

オペラ関係者は作品をよく知っている
何年も前から(もしかしたら子供の時から)その作品を知っている。
作品をよく研究しているので、作品の素晴らしさを知っている。

オペラ制作者は今回の演出や制作チームをよく知っている
その上演に直接関わっている人たち(演出家、指揮者、歌手、デザイナー・・・)は、その上演についてよく知っています。

もう少し説明します。オペラの音楽・歌は作曲家が作りました。オペラでは、基本的に音楽・歌は変更せず、そのまま上演します。その他の部分は演出家(プロデューサー)が中心となって作り上げていきます。映画で言えば映画監督です。どう見せたいかという部分を作ります。

オペラ制作者は数週間、あるいは数ヶ月に渡ってチームとしてオペラ制作を進めます。今回はどのような演出で、何を伝えたいのか、オペラ制作者はよく理解しています。チーム内にどれだけ優秀なアーティストがいるかについてもよく知っています。今回の上演が素晴らしいものになると確信しているので、全てのお客さんにもそれが十分伝わる、感動してくれると自信を持っているのです。

でも、演出というのは少し厄介なところもあります。みなさんも「あれ?ギリシャ神話の話なのに、なぜ登場人物が現代風の服なんだ?」とか「あれ?中世が舞台なのに、なぜ不思議な現代アートみたいな雰囲気なんだ?」などと思ったことがあるかもしれません。オペラ演出は何でもありです。もちろん本筋から大きく離れた演出には賛否両論ありますが、この記事では深入りしません。

何が厄介かと言えば、音楽に親しんで作品をよく知っている人であっても、演出を十分理解できるとは限らないのです。何を意図しているのだろうか、分からないまま終わってしまうこともあります(笑)

作品をよく知っている人であっても「?」と思うことがあるのですから、作品を全く知らずに字幕を頼りにして鑑賞に来た初心者にとって、オペラの演出は謎過ぎるわけです。

というわけで、作品についても、制作(演出)についても、オペラ関係者とオペラ初心者の情報格差は大きいのです。

少しでも演出をよく理解したいなら、まずは作品を事前に徹底的に知ること。それからジャンルを問わずあらゆる知識や感性を広げたり深めたりすること。想像力を鍛えること。

あとは、明快な答えを必ずしも求めないことが大事かもしれません。日本の学校の試験みたいに正しい答えのある世界ではありませんから・・・ 「何だそれは?」という感覚を楽しめるようになりましょう。

徹底的に予習しよう!

ここまで読めば、何が必要かは一目瞭然ですね。そうです。徹底的に作品を予習することが大事です。

えー!面倒!などと言わないでくださいね!
もしすでにチケットを買ってしまったのなら、費やしたお金を無駄にしないためにも、徹底的に準備をしましょう。エイエイオー!

予習=あらすじを読む・・・ではない!

ここからは、予習方法を提案します。予習というのは、Wikipediaにある「あらすじ」や解説を読むことではありません。それは予習の予習にしかなりません。不十分です。

オペラは音楽です。音で予習することが大事です。
オペラは歌です。歌のテキストも大事です。

好きなアーティストのライブに行って、一番気分が盛り上がるのはどんな歌の時ですか?好きな歌ですよね?聴いたこともない新作の歌より、一緒に歌えるぐらい何度も聴いてきた知っている大好きな歌が歌われる瞬間が幸せの絶頂ですよね?歌詞も十分知っているから感情移入できるのですよね?

オペラだって同じです。とにかく音楽と言葉をしっかり予習しましょう。

予習目標:すべて(全役、前奏、間奏)熱唱!

理想は全部、自分で歌えるようになることです。
はい、登場人物全員です!
前奏や間奏もランラランラ、フンフンフンと歌いましょう。

音楽をすべて知っていれば、オペラ上演中に一瞬たりとも眠くならず、大興奮状態が継続します。ふふふ。素敵ですね。2時間、3時間あるいは4時間も作品に浸れるのです。

とは言っても、なかなか全部歌えるというレベルに達するのは難しいです。気にしないでください。目標は高く持ちながら、できる範囲でコツコツ努力をしましょう。理想のレベルに達することができなくても、十分頑張ったなら、それで良いのです。

音源はYouTubeでも他のストリーミング音源でもCDでも、お好きなものをお使いください。(IDAGIOをオススメします。無料アカウントで挿入されるCMがYouTubeより穏やかです。)

ステップ1:とにかく聴く

最初はとにかく聴く。繰り返し聴く。何度か聴けば少しずつお気に入りのフレーズが出てくるでしょう。

オペラの上演時間は短いものは1時間ぐらいですが、2時間以上の作品が多く、4時間や4時間半というものもあります。気が遠くなる長さだと思われるかもしれませんが、1幕ごと聴くなどすればそれほど負担になりません。

ステップ1としては聴き流しても良いでしょう。通勤電車で、あるいは家事をしながら、作業BGMとして聴いてみてください。気に入った部分があれば鼻歌でフンフンフンと歌ってみるのもオススメです。

ステップ2:対訳を読みながら聴く

次は大事な部分です。対訳を読みながら聴くことで、ストーリーを隅々まで頭に入れます。この作業を実施することで、鑑賞本番では字幕に頼らずに楽しむことができます。

キーワードに作品名と「対訳」を入れてPCでGoogle検索をすると、ボランティアの方々が翻訳したオペラのリブレット(台本)の対訳サイトが出てきます。大変ありがたいサイトです。私もいつもお世話になっています。対訳とは作品の原語(イタリア語、ドイツ語、フランス語など)と日本語を並べたものです。

原語と日本語を同時に見ながら音源を聴くことができれば、時間の節約になりますが、それが難しければ片方ずつ読みましょう。原語、日本語訳、どちらからでもOKです。終わったらもう一方の言語を読みながら聴きます。そして仕上げとして原語と日本語を同時に見ながら聴きましょう。

ステップ3:聴きながら歌う

対訳を読みながら数回聴けば、もうストーリーはバッチリ頭に入っているでしょう。それでは、今度は原語の方を見ながら音源と一緒に歌ってみましょう。

ええ?!外国語で歌うの?無理!!

大丈夫です。最初はラララーで良いです。要所要所、歌えそうなところだけ原語で歌ってみましょう。
「ヴィクトーリア!ヴィクトーリア!ラ ラ ラ ランラララン・・・」で十分。少しずつ原語で歌える部分を増やしていけるといいですね。

外国語は読めない?!別にそれでいいです。誰かに披露するわけではありませんので、歌手の真似をしながら、テキストを参考にして歌ってみましょう。

もしご興味あれば、その原語の初級文法をサラッと一通り勉強してみると、原語に対する抵抗感が弱まります。オペラのテキストを見て、どれが主語、動詞、名詞、形容詞、冠詞か、などがわかるだけで十分です。簡単な単語の意味を知るともっと楽しいです。どの言葉が大事なのか分かってくると、きっとあなたも熱唱できます!

素晴らしい!
これで準備完了!
素敵なオペラをお楽しみください!
そして、鑑賞が終わったら次のオペラ鑑賞を計画してくださいね!

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