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子どもたちのミーティング

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保育における、子どもたちの、子どもたちによる、子どもたちのための対話の時間、それがミーティングです。 その概要と、背景と、実践についてまとめます。
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「子どもたちのミーティング」を出した頃06(終)

「子どもたちのミーティング〜りんごの木の保育実践から」は、りんごの木出版部から出版されました。最後に、その後に起こったことをいくつか書いて、このシリーズの筆を置きたいと思います。 愛子さんが危惧したことは半分あたっていて、半分はずれました。 すなわち、ミーティングを外に出したらきっと勘違いされるであろう、と。 本を出してから、保育系の出版社からいくつか声がかかって記事になったり、それがもとで映像になったり、テレビで取り上げられたり、りんごの木のミーティングは保育実践として

「子どもたちのミーティング」を出した頃05

ミーティングを本にするという企画はこうして、私ひとりの内なる妄想から現実的に進み始めました。 すでに私の実践記録は手元にありましたので、あとは愛子さんとの対談でした。ただこれも、すでに私のなかに実践を記述しながらたくさんの「問い」が生まれていたので、あとは愛子さんに実際に聞くだけというところまできていました。 すこし話がそれるようですが、保育者になる人にそういう傾向が強いのか、保育者に限ったことではないのか、最初からなにもしていないのに「答え」を人から教えてもらいたがる人

「子どもたちのミーティング」を出した頃04

「いやよ」 愛子さん(柴田愛子さん)は、あっさりとそう言いました。 私はひと夏かけて書き上げた原稿をまだ手に持っていて、それを愛子さんに渡す間すらありませんでした。 すっかり有頂天になり、もう本が出来上がったかのように錯覚していた私は、愛子さんの予想外の返答に固まってしまいましたが、思い返せば愛子さんのその返答はミーティング本を作ろうと思い立った時に、最初に危惧していた通りの返答だったのです。 「なんでですか」 アホみたいな一言目でしたが、書き上げた原稿をそんなにすんな

「子どもたちのミーティング」を出した頃03

本を書くことで、ミーティングをつかんでやろう。 そう思ったものの、そのときの私に最初から具体的なアイデアがあったわけではありませんでした。 どこかの出版社から声がかかったわけでもなかったので、本の構成も自分で考える必要がありました。 愛子さん(柴田愛子さん)にミーティングのあれこれを対談形式で聞きたい。まず、これははずせない。それが本を書く主目的ですから、その対談部分が必然的に本の主要な部分になることは想定がつきました。 でもそれだけでは足りない。 そもそも「教えてもら

「子どもたちのミーティング」を出した頃02

私がりんごの木に入職したのは29歳になる年のことで、それまでに愛知の私立幼稚園で6年、横浜の保育園で1年、保育に携わってから後のことでした。 りんごの木に入ったときもそれなりの保育経験があったわけです。 だから保育のおおよそのことは、りんごの木に入ってからもだいたいにおいて見当がつきました。 保育というのは園によってその内容や考え方が大きく異なりますから、7年の経験があっても、りんごの木ではまるで初心者からのスタートになったわけですが、それでも子どもへの関わりや保育者同士

「子どもたちのミーティング」を出した頃01

「隔世の感」という言葉が浮かんできます。 いまや保育界ではサークルタイム、子どもたちの対話がちょっとしたブームになっています。 私が柴田愛子さんとりんごの木出版部から「子どもたちのミーティング」という本を出した頃からは、こんなことになるなんてまるで想像もつきませんでした。 同時に、すこし苦い思いも抱えています。 そもそも保育界のブームっていつもけっこう「しょうもない」なあと感じています。 ブームって仕掛け人がいて、メディアがのっかり、ありがたがってのっかる人たちがいるわけで

子どもたちのミーティング〜関連本編

子どもたちの対話の時間、それがミーティング。 椅子を並べて、今日あったあれこれ、思っていること、思い描くことなどをみんなで語り合います。 ケンカのことから、運動会の種目まで! 楽しいよ、ミーティング。 そんなわけで今回は青山が書いた、その関連本の紹介です。(共著含む) 1.『子どもたちのミーティング』(りんごの木)ミーティング事例集。子どもたちの発言や、対話をそのまま聞き取りしたもの。柴田愛子さんとの対談も。最初にミーティングについて出した本です。(こちら、りんごの

子どもたちのミーティング〜関連インタビュー編

子どもたちのミーティング。 椅子を並べて、今日あったあれこれ、思っていること、思い描くことなどをみんなで語り合います。 ケンカのことから、運動会の種目まで! 楽しいよ、ミーティング。 でもね、ミーティングは子どもたち一人ひとりが、その子らしく生きられる日常があってこそ。 そんなわけで、今回は今まで様々なwebメディアさんたちにインタビューを受けたもののまとめ。これを読めば、ミーティングを成り立たせる背景がわかります! (順不同) 『おとなの自由が子どもの自由を

子どもたちのミーティング基礎編①〜概要と保育実践における意義

・子どもたちのミーティングとは 保育の場における、子どもたち同士の話し合い。  ミーティングという呼称、その今日的な内容としては、横浜にある「りんごの木子どもクラブ」において始められ、数多くの保育現場で実践されている。(先行的な実践については基礎編②において触れる)  合意形成、結論を出すことをなにがなんでも目指す「会議」ではなくて、井戸端会議のような「寄り合い」、「対話」。   ・りんごの木子どもクラブ(以下、りんごの木)における実践   りんごの木では、代表の柴田愛子さ

子どもたちのミーティング基礎編②〜先行する実践

 私がミーティングを行っていく上で、先行するいくつかの実践記録、事例に目を通した。  一番主だったものとしては、豊川保育園を中心とした「伝えあいの保育実践」である。その実践はいくつかの書籍として残っている。(最下部、参考文献を参照のこと)  保育の現場において、ふだん生活をともにする子ども集団が話し合う。このスタイルはミーティングと共通する。  だがその外形的なスタイルは同じでも、話し合いの内容は大きく異なる。  伝えあいの保育実践は集団でのルール作り、またルールの見直

子どもたちのミーティング基礎編③〜本音を言える環境があるか

ミーティングを行う前提として、 ふだんの保育のなかで、子ども一人ひとりが自分の本音を出せる環境があるか。 では本音を出せる環境とはなにか。 からだまるごとこころ子どもは自分の思いや意思を、からだまるごとで表している。 だからこそ、子どもの動きを抑制したり、評価したり、 「あれだめ、これだめ、それはやめましょうね、いけないんだよ、今はちがうでしょ」 なんてことになると… おとなにとっては行動を止めているだけかもしれませんが、 子どもにとっては心を止められ、評価さ

子どもたちのミーティング基礎編④〜子どもの声に耳をすます、心に寄り添う、言葉を貼る

前段でも書いたとおり、子どもは「からだまるごとこころ」である。 子どものこころの声は、言葉よりもむしろ表情や仕草、居る場所や姿勢、はたまた持っているモノなどに表れている。 子どもとの対話は、言葉以外の子どもたちの「声」に耳を澄ますことから始まる。 耳を澄まして、子どもの声を聞こうとする姿勢がおとなの側になければ、 対等も対話も成り立たない。 そうして聞こえた声にどう寄り添うのか。 子どもに隣り合いながら、 子どもがおそらく感じているだろう気持ちを 共感しながら

子どもたちのミーティング実践編①〜寄り合う

さて、ここからは実践編。 実際のミーティングとして集まった場面を想定しながら書いてみます。 今回は「ミーティングって折り合いではなくて、寄り合いですよ」という話。 僕が行なってきた実践では、ミーティングは昼前に行なっていました。 朝からたっぷり遊びこんだ後に(およそ2時間)、集まります。 今回書きたいのは集めるテクニックなどではなく、 この「集まる」をどうイメージするか。です。 「一日一回は顔合わせようや」 「みんなでおしゃべりしようや」 長屋の井戸端会議み

子どもたちのミーティング実践編②〜大人の声に耳を傾ける

子どもたちのミーティング。 今回は、はじめのうちは意外と、おとながよくしゃべってもいいんですよ、という話。 よく質問されるのですが、 子どもの声を拾わないとと思って、あれこれ子どもたちに聞いてみるのですが、 子どもたちから「わすれた〜」なんて言われて、答えが返ってこない。 どうしたらいいんでしょう?という… おそらくそれは、 おとなが聞く人、子どもが答える人、 という関係性になっているのではないでしょうか。 そうすると、いかに子どもたちの声を聞こう、聞こうと