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日記はじめました。 第一週(3/1〜10)


 読者の皆様ご機嫌よう。
先週から引き続き一週間分の日記を公開していく。
一週間という時間は、体感では風のように素早く過ぎ去っていくものだが、日記を読み返してみると、こんなにも様々なことを考え、行い、記したのかと驚く。
きっと一ヶ月後、二ヶ月後、半年後、一年後…と積み重ねられた記録はディープで厚みのある読み物に成るだろう。楽しみである。


3/1(金)

 快晴。今日は地元の図書館へ行った。
何年か前に改装、リニューアルしたらしいのは聞いていたが、カフェスペースの設置や配架替えされており、スペースが広く、新鮮に見えた。お目当ての本は書庫にあるので、出納をお願いした。

 昨日たまたまネットサーフィン中にわたくし好みそうな出版社を見つけた。国書刊行会である。わたくしは文学の畑に足を踏み入れてまだ日が浅いので、出版社ごとの特徴・特性等を把握できていないのだが、そんな中、国書刊行会の「書物の王国」シリーズに出会った。「書物の王国」シリーズは全20巻から成るアンソロジー形式の書物群であり、テーマ毎に古今東西の短編がかき集められている。「月」「吸血鬼」「復讐」「同性愛」「良性具有」「夢」etc、テーマを見ただけで何と心踊ることだろうか!テーマだけではない。寺山修司、三島由紀夫、澁澤龍彦、川端康成、夢野久作、日夏耿之介、ゲーテ、コクトー、アポリネール等、わたくしのだーい好きな文筆家の作品が溢れんばかりに盛り込まれているわけだ。絶対読みたい。

 20巻の中から厳選して、司書の方に出して貰ったのは「シリーズ9 良性具有」「シリーズ10 同性愛」「シリーズ12 吸血鬼」の3冊と、同じく国書刊行会から出ている「死、欲望、人形 評伝ハンス・ベルメール」の計4冊。緑が見える窓辺の席で読む此れらの恍惚よ…。
久々に集中して読書できたと思う。「同性愛」に収録されていた、川端康成の「朝雲」と司馬遼太郎の「前髪の惣三郎」が身悶えするほど良かった。上記の4冊と堀口大學訳の「悪の華」を借り、帰宅。15日までに読めるかな。


3/2(土)

 晴。終日爆睡。お昼に久々にマックを食べた。シャカシャカチキンの辛いやつ、美味しすぎる。50枚くらい食べたいと思った。


3/3(日)

 晴。今日は高校時代の学友Fと映画を見に来た。ゴールデンカムイを見た。冒頭の戦争シーンが戦争画のような色合いになっており、おお…!となった。グレーグリーンを掛けて、赤を濃いめにした感じか。Twitterで感想は目にしていたが、役の再現度が高異様に感じ、バトルシーンも見応えがあった。クマ怖すぎる。個人的には月島軍曹の冷徹な感じが良かった。あと杉本が男前だった。多分2もやるだろうから見たい。
予告で流れたオッペンハイマー、ブルー、キングダム3、気になるのでチェックしておく。

ゴールデンカムイ

3/4(月)

 晴?。一日中寝て過ごす。
夜ご飯のサラダを作った。きゅうりと豚こまのなんかと、豚しゃぶサラダ。全体的に緑だった。


3/5(火)

 曇りのち雨。労働終わりに身代わり忠臣蔵を見た。ムロツヨシ主演、絶対面白い(ギャグの意味で)と思ったが、ギャグは勿論面白い上に予想以上に熱い友情、誇り、武士の生き方、武士の美徳に対して、命のあり方を問うような映画であった。ムロツヨシ演じる主人公・吉良孝証(吉良上野介の弟)が僧侶であるからこその、武士の生き方(切腹や仇討ちetc)への疑問、生への意見であり、武士の美徳を美徳と讃美しがちなわたくしには目から鱗というか、まあ、たしかにそうだよな、と思わせるところがあった。「命あっての物種だろうが」という台詞が印象的だ。ギャグシーンで笑っているのが自分だけで、およよ…となった。
調べたら「超高速!参勤交代」シリーズと同じ原作者(土橋章宏さん)の小説を映画化したようだ。そちらも大好きな作品なので、このテイスト、作者の作品が好きなんだろうと思った。おすすめ。


3/6(水)

 東博で開催中の光悦展の二回目に行った。
光悦展は書もさることながら、謡曲本の展示数もあるため、前回の反省を生かして少し謡曲、能などについてwikiや能楽協会のHPを読んでから行ったのだった。
おかげで、ああ、あの話に関わる本か!と思いながら見れたため、より深い楽しみ方ができたように思える。
能について、わたくしはアニメーション映画「犬王」で見た知識しかないが、以前(室町とか)は、現代、能に対して感じるよりももっとずっとカジュアルに、楽しく鑑賞できる側面もあったのかもしれないなと思う。ともかく夏くらいに実際に能楽鑑賞をしたい。

 また、光悦展では書の存在感も大きかったと感じた。
書については、わたくしは見方がわからないもの、として早足で見ることが常であったのだが、今回は少し意識が変わったというか、自分なりの見方を確率できたような気がする。そもそも書は、特にお習字等とも縁が遠かったわたくしにとっては、何が書いてあるかわからない(くずし字とかが読めない)、綺麗な字かどうかよくわからないし、妙な隙間や掠れが気あり、良さが一寸わ解りかねる、難解な存在だったのだが、それは見慣れなさからくるものであり、見慣れないものを見慣れない方法で見ようとするから故の違和感ややりづらさであったのだ。そりゃ、出来もしないやり方(見方)で無理矢理やろう(見よう)としても出来ないだろう。そこでわたくしは如何したか?デザインとして見ることにしたのだ。
別にデザインに関しても生業にしているとか、心得があるとかそういったことがあるわけではないが、書よりは身近に触れている。そうして見て見ると成程、余白は画面構成を美しく見せるために意図して空けられたものであり、段組は紙に描かれた絵柄(確か藤)からの視線誘導を受け継ぐ形で書き連ねられ、字の緩急はフォントの組み合わせのようなものなのかもしれない。そうして見ると、確かに美しさを見出すことができる。勿論それは書としての正しい見方、専門家がやるようなアカデミックな、真価が理解できるような見方ではないとは思うが、美術芸術の鑑賞は人の数程あるし、展覧会では自分なりの見方が発見できれば万々歳だと思っている。だから今回は大きな収穫があったとわたくしは考えている。
ちなみに器(焼き物、とくに茶器)の見方は未だわからなぬ…。

3/7 (木)

 晴?。3月末で退職するため、送別会?としてお弁当をご馳走になった。串天やまのお弁当をいただいた。手毬や、串揚げ、錦糸卵に鰻、お肉、デザートの餅など、実に豪華で美味であった。今後何かお弁当を注文するタイミングがあった時はこういう素敵なお食事を選べるようになりたいし、そういう心使いができる人間、人間関係で在りたいと思う。ご馳走様でした。

 帰りの電車で泉鏡花の短編をいくつか読んだ。日本近代文学の作家の影響関係、人物関係を見ていくと必ずといっていいほど泉鏡花に行き着く。妖美な、幽美な、幻想的な、というイメージはあったが、読みやすい文章に慣れてしまっているわたくしには少々読みづらく(古典みたいな語り口で)、なんとなく避けてきてしまっていたのだった。しかし美を愛する者として、また数々の文筆家に影響を与えた作品を読まないわけにはいかぬ、と思いやっと読むことにしたのだ。美しいと思った。やはり、〜けりとか、〜ざる、といった古文ぽい言葉遣いに慣れず、台詞回しもその美的、もしくは面白さ、教養めいたところ(つまり魅力的な部分)を完全に理解出来たか、感じることが出来たかと言われたら、恥ずかしながらそうではない。難解に感じるところもあった。だが、『外科室』の躑躅の鮮やかさ(わたくしには胸を開いた血飛沫と躑躅の赤が連想された)や、『紫陽花』の氷の熱で溶けかけた透明さ、御前様の艶やかさ、『日本橋』の物言いの艶やかさ、官能的なほど美しく、だが決して下品(エロ、的なイメージの)ではなく、確かに印象に残る。
夏の日に見た動物の死骸と色鮮やかな花が同時に網膜に焼き付いて離れない、みたいな鮮烈さであるだろうと感じた。好い。

串天やまのお弁当
海老串に乗っている紅い実、美味しいのだが名前を知ることができない。

3/8 (金)

 横光莉一の「火の点いた煙草」「夢もろもろ」「詩集『花電車』序」と佐藤春夫「オカアサン」を読んだ。「火の点いた煙草」に出てくる煙草を一つ一つ調べた。戦前煙草なのですね。戦前煙草の種類の多さ、パッケージの豊かさよ。(蒐集に)ハマってしまったら底なし沼な気がする。


3/9(土)

『ゴールドボーイ』鑑賞。
沖縄を舞台に殺人現場を目撃した少年少女が殺人犯の青年に6000万円を要求する計画を立てる。
沖縄の美しく、豊かな色彩と濃い影色、郷愁の感触と人間の愛憎が織りなす映像美、物語が何処に行き着くのかという緊迫感が良かった。少しグリーンがかった画面、黒の影の深さ、舞台設定上気温が高いはずなのに、スクリーンの色味と、物語は淡々と進むためあまり暑さを感じない。パッと見湿度が高い愛憎や感情には見えないが、一つ一つ解いてゆけば、様々な色面や絡み合う様相が見れるのだろう。個人的には、主人公(朝陽くん)の愛情深い(少し病的なようにも感じた)母役・黒木華さんが味わい深さを助長していたように感じた。あとなんと言ってもフォントが良い。

ジュンク堂に行った。ゴシックな文学コーナーがあるから嬉しい。芸術(美術、映画、音楽)と哲学、文芸コーナーによく行くが、全てが魅力的で悩みまくる。幸せな悩みだと思う。

TOHOシネマズのチュリトスが大好き

3/10 (日)

 晴。友人Aと生ハムの食べ放題に行った。5kgくらい食べる気満々だったが数百gが限界だった。その後様々な話をして本屋に行った。ショーペンハウアーの「知性について」と、「ボードレール全詩集」を買った。ショーペンハウアーの本に関しては読み終わったら友人と貸し合う(友人は「自殺について」と「読書について」を購入)約束をした。


 というわけで今週(第一週)の日記はこんな形となった。前回と同じく、大した何があるわけでもない凡人の平々凡々とした日常をここまで読んで下すった皆様ありがとうございます。次週も読んでくれたら嬉しい。


2024.3.1-10
MTK

今週読んだ本

・書物の王国10 同性愛 (国書刊行会)
・ピーター・ウェブ、ロバート・ショート著 相馬俊樹訳「死、欲望、人形 評伝ハンス・ベルメール」(国書刊行会)

・島崎藤村「若菜集」(青空文庫)
・坂口安吾「死と影」(青空文庫)
・横光利一「笑われた子」(青空文庫)
・横光利一「夢もろもろ」(青空文庫)
・横光利一「火の点いた煙草」(青空文庫)
・横光利一「詩集 『花電車』序」(青空文庫)
・佐藤春夫「晶子さんの煙草正月」(青空文庫)
・佐藤春夫「オカアサン」(青空文庫)
・泉鏡花「日本橋」(青空文庫)
・泉鏡花「外科室」(青空文庫)
・泉鏡花「紫陽花」(青空文庫)
・芥川龍之介「詩集」(青空文庫)
・芥川龍之介「或阿保の一生」(青空文庫)

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