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聖闘士星矢 The Beginning の話

ハリウッド実写映画「聖闘士星矢 The Beginning」
去る4月28日、公開初日に観て来ました。
賛否飛び交っているこの作品について、
星矢ファンの視点から語らせて頂きたいと思います。
肝には触れてないつもりですがネタバレになる可能性があるので
未見の方は注意して下さい。

前提

そもそも私がどの位置にいるファンなのか?を軽く置いておきます。
まず原作リアルタイム世代ではありません。
親戚の家にあった飛び飛びのコミックスを幼少期から何度も読み返し
同じく聖闘士聖衣大系を遊び倒して育ち、
その後成長して自分でコミックスやDVD-BOXを揃えるに至る。

履修済
 ・原作漫画、 NEXT DIMENSION、 セインティア翔
 ・原作アニメ、 劇場版、 ハーデス編、 天界編
 ・Ω、 Legend of Sanctuary、 黄金魂
 ・PS2~のゲーム
途中脱落
 ・LOST CANVAS、 EPISODE.G
※上記以外の作品は未修

履修済みの作品に関しては、概ね許容範囲。
特にハーデス十二宮編のOVAとLoSはすごく良かった。
映画はこの辺りが許せる方向けですね。

感想

端的に言いますと面白かったです。
それも「思ったよりは」と言うような消極的な理由ではなく
純粋に一本の映画として、そして聖闘士星矢として面白かったのです。
当初「ほぼすべての方が抱いているであろう懸念」はありましたが、
そんな想いを抱いていた事を申し訳なく感じるほど
観終わって見れば、素直に面白い作品でした。

良かった点

原作付きの映画化の場合、二通りあると思うのですが、
・原作を知ってる人向けに説明は省いて名シーンで固める
・知らない人向けに導入から世界観を丁寧に描く
The Beginning は後者を選んだようです。
邦題がもうそれそのものですしね。
非常に丁寧に、聖闘士とは? 小宇宙とは? 女神とは?
星矢が何故戦うのか、心の機微を描いてくれています。

◆始まり
山羊座が聖剣を構えた時点で感動。
ところで本作、随所にLoSの影響を受けてる気がしますね。
聖衣が普段はペンダント型だったり。
◆星矢
何も知らない星矢へ説明する体で、
聖闘士星矢を知らない人への説明も兼ねてくれるアルマンの親切さ。
原作ではいまいちキャラクター性が薄い星矢ですが
真剣佑君がベストマッチして魅力的な主人公になってます。
◆シエナ
原作の光政の役割をアルマンとグラードに分け、存命とした事で
女神として生まれたシエナの少女としての心の葛藤が描かれます。
あとバイクと太もも。
◆魔鈴さん
見た目! セリフ! ひとりだけ原作そのまますぎて…そこが良い。
口頭ではマリンと呼び捨てなのに字幕ではさん付けの原作愛も感動。
◆辰巳(マイロック)
カッコ良すぎるでしょw そして強すぎるでしょw
でも実際原作でも雑兵程度なら倒せる強さを持ってるので
ハリウッドナイズするとこれくらいカッコ良くなるのかも知れない…
と妙に納得させられました。
ダブル主人公と言って良い見どころの一つです。
◆暗黒聖闘士
まさか令和の時代に鋼鉄聖闘士が見られるとは…
(暗黒聖闘士の名を関しているが設定は鋼鉄のそれ)
さすがに着るだけじゃなく肉体改造も必要だったか…と言うね。
◆聖衣
ポスター、正直ダッサ…と思ってたんですが
動く映像で見ると聖衣がとにかくカッコ良い!!
まさか修行中の鎧と最初期の軽装な聖衣を組み合わせてくるとは。
小宇宙を燃やさないと聖衣は応えない設定や、新生聖衣への進化等
原作の設定をしっかりと取り入れている。
フェニックスの尾羽手裏剣が使われてるのもグッド…
◆必殺技
天馬座!! 星矢の拳が13の星の軌跡を描いている!!
背後にオーラとなって浮かんだあの姿は!!
鳳凰幻魔拳!! どうだ地獄を見た感想は!!
この辺りを実写に上手く落とし込んで再現してるのを見つけて感動…
流石に必殺技名は叫んでくれませんでしたが…
あの空気で叫ばれてもそれはそれでって感じなので。
◆カシオス
原作と違って完全な悪役に収まりましたね。
流石に耳は無事でした。 耳はね。
◆星矢とシエナの関係
原作のあの絶妙な距離感、お互い信頼し合ってはいるけど
何か良く分かんない変な関係が見事に再現されていて最高でした。
◆アクション
踊るように戦う、だとか、中国武術の型のような修行シーンを描く事で
小宇宙を溜める大げさな構えの不自然さを解消してる気がしました。
これでキグナスが登場しても大丈夫ですね。
バトルシーンは超カッコ良いです。
◆総括
原作の要素を、現代に、実写で、映画にするにあたって
しっかりと拾って上手く落とし込んでいると思います。
原作を理解した上で、あえて改変した部分と活かした部分。
ちらほら見かける「原作愛が感じられない」「制作陣は原作を見てない」等の感想は的外れ、あなたこそ映画ちゃんと観てませんね?と言いたい。
星矢愛のあるスタッフが、本気で真面目に映画を作りました!と言う感じ。
ストーリーはまさしくBeginningで終わってしまうので、
続きが観たいのです。 よろしくお願いします。

問題点

さて、問題点もあります。
と言っても映画の内容ではありません。

◆世間の空気
冒頭で言った「ほぼすべての方が抱いているであろう懸念」。
要するに「どうせ失敗でしょ」と言う世間の空気。
理由はよ~~~く分かっています。
同じ人気漫画のハリウッド実写化である
ドラゴンボールエボリューションの仕業です。
とんでもない呪いを残して行きやがってくれました。
もはや黒死拳です。
とは言え実際、日本の漫画の実写化で成功例と言うと、
 ・日本が舞台
 ・CGに頼らないアクション
 ・恋愛やサスペンス、時代劇や喧嘩など現実的な内容
この辺りの条件を満たしているものがほとんどで
 ・海外や異世界が舞台
 ・派手なCGエフェクト
 ・奇抜な衣装で現実離れした超常バトル
となると途端に出来の悪いコスプレショーに成り下がる事が多い。
聖闘士星矢は思いっきり後者…期待されるわけがない

◆めんどくさいファン
世間の空気と並ぶもう一つの問題点は、
聖闘士星矢につきもののめんどくさい原作至上主義者です。
いわゆる何を観ても「こんなの星矢じゃない」とか言っちゃう人達。
もう一生原作コミックだけ読み返してれば良いじゃん…
と思うのですが、何かしら新作が発表されると我先にと飛びつき
そして毎度お決まりの文句を言うわけです。
何なら、どうせ失敗、どうせ面白くない、と最初から決めつけ、
その結論ありきで欠点を探すために手を伸ばす。
どう面白おかしくネタにして叩くか考えてワクワクしている
そんな人たち。
今なお続く有名漫画なのに、いまいち爆発力に欠ける気がするのは
このめんどくさいファン層の存在が大きいと思ってます。
今回の映画にも湧いてきてますよね、嫌でも目につきます。

◆ただの愉快犯
そしてもっと最悪なのが、もはや自分では観る事すらせずに
そんな人たちの感想を見ては「やっぱり」「観なくて正解」と
ディスり大喜利大会で遊ぶだけの自我の無いピエロ
確証バイアスに陥ってる人間にはマイナスの感想しか見えません。
そうしてその繰り返しで中身の無い悪意だけが伝染して行く。
せっかく、面白い作品が出来上がっていても
「面白いわけがない」という勝手な決めつけで芽を踏みにじる。
私はこのスタッフの作る続編が本気で観たいので、
下らない悪評に流されて失敗で終わらないで欲しいんですよね。

とは言っても、現実が厳しい事は理解してます。
全部ドラゴンボールエボリューションが悪い。
この「ハリウッド実写映画化=失敗」の空気が
めんどくさい原作至上主義者と噛み合いすぎている。
ここから口コミだけで盛り上がるのは難しい。
あ、ちなみに私、ドラゴンボールちゃんと劇場で観てます…!

公開時期も悪すぎる。
同時期の作品、強すぎでしょ!?
普段映画を観ない人が、GWだから何か観ようと言う人が、
聖闘士星矢 The Beginning を選ぶわけがない…!
劇場側もそれを理解しているようで、
上映回数も期間も他よりかなり少なくなっているようです。
つまり… 観ないと公開終了しちゃうぞ!!

一応、映画自体の欠点もいくつか挙げておきます。
◆真剣佑君の顔が綺麗すぎる。
激しい修行中や思い切りぶっ飛ばされた後でも顔はほぼ怪我しません。
もう少し泥臭く汚れてくれても良かったかな。
流石に終盤に向かうにしたがって漢らしく汚れて行きますが…
◆ポスターがダサい。
いやマジ何でこのポスターにしたんですか。
聖衣、アクションシーンだとカッコ良いんですけどね。
せめてヘルメットは脱いでくれてればなぁ。
と言うかいっそ海外のポスターのままが良かった。
◆スタッフロールが長い
すごく長く感じたんですが…他の映画こんな長かったですっけ?
スタッフロールまで大人しく観るタイプなので、
まだ終わらんの!?って途中からはよ終われ~って思ってましたw
ちなみにスタッフロール後のオマケ映像なども特にありません。
スタッフロール観ないタイプの人なら途中で出ても良いかもですね…

それと私は感じなかったのですが、良く見る意見
◆聖闘士同士のバトルが少ない
星矢とシエナ(とマイロック)と言う主人公達の掘り下げと
世界観の説明を限られた尺で、メリハリをつけてまとめるにあたって
流石に5~10人の青銅聖闘士を登場させて1vs1をやらせるような
原作で言う銀河戦争編を盛り込むのは無理があるよね、と。
その分フェニックスとのバトルが際立っているし
群像劇は次回以降に期待と言う事で…。

まとめ

めっちゃ普通に面白いアクション映画ですし
聖闘士星矢の実写映画としても一つの正解じゃないでしょうか。

登場人物や世界観を導入から丁寧に描いてくれているので
原作を知らない人でも理解して楽しめる作品に仕上がっています。

私のように原作のファンで、ある程度スピンオフや続編が許せる方、
原作は知らないけど、名前は聞いた事ある、くらいの方、
間違いなく楽しめると思います。
この春 お勧めの映画の一つです。

そしてお願いです、自分には合わなかったと言う感想自体は仕方ないですが
観るなと押し付けたり、観もせずに悪し様に言うのはやめて下さいね。

続編、待ってます!!!

君は、小宇宙を感じた事があるか!?


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