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米が炊けなかった話

その昔、バンフという街に2週間ほど滞在したことがあります。

バンフとはどこぞやというと、ここです。

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ロッキー山脈のお膝元、スキー・スノボプレイヤーが集まる人気リゾート地、抜群の景色に加えてオーロラも見えるうえ温泉まであり、山の上に建つバンフスプリングスホテルは古城にしか見えず、街中にリスや鹿などの野生の動物が闊歩し、たまに最強熊グリズリーなんぞも出没し、マイナス30℃に達する土地だというのに欧米の観光客が半袖短パンで屋外をうろつく光景が拝めるという美しい土地です。

2週間ほど滞在していたのは事実なのですが、別に観光していたわけではなく、当時ものすごーーーくいろんな事情があって、2週間かけてこの街から西のバンクーバーに逃げるか、東のトロントに逃げるかという選択をしておりました笑
まあそのあたりは人生いろいろということで深堀りせず生暖かい目でスルーしてください笑

2週間かけて人生の選択をしている間、この土地にあるユースホステルに泊まっていました。バックパッカーズホステルの醍醐味でもある、そこに宿泊してるいろんな国の人と仲良くなって、一緒にラウンジでテレビを観たり共同キッチンでバカでかいステーキを焼いたりして、人生の岐路に立ってるなりに楽しんで過ごしていたのです。
中にはバンフスプリングスホテルで働くためにこの土地にやってきたという日本人の人もいたりして、一緒にそのホテルに潜入して見学したりなんかもしました。

悩みつつも案外楽しい日々を過ごした結果己の進路も決まり、この土地を発つ前にユースで知り合った外国人の皆さんにディナーを振る舞ってやろうではないか!と日本人の子と話し合い、現地スーパーの日本食コーナーにあった「すし太郎」を作ることに決定。米や他の食材を買い込み、共同キッチンに奇跡的に置いてあった炊飯器でいざ炊飯。
日本人が寿司を食わせてくれるらしいよ、なんつってダイニングに集まってくる各国の陽気な宿泊客たち。すし太郎なら失敗しようにないので、美味い寿司を食わせてやるから良い子で待ってな!と自信満々の我々Japanese。

無事米が炊け、ボウルに移してすし太郎を混ぜ込み混ぜ込み…が、なんだか手応えがないというか、うまく混ざらない?
なんか変だなと感じつつもどうにか混ぜ終えて配膳し、皆でいざいただきまーす!と口に含んだところ…

マッズ。

いえ、永谷園さんの名誉のために申し上げますが、すし太郎は親しみあるいつもの味で非常に美味しいのです。問題は米です、米。
タイ米で作ったピラフの如きパッサパサ。なんか硬いし水分量ゼロも良いところで、すし太郎と何も馴染んでおらず、酢飯と呼べない代物になっていたのです。

自信満々だった我々Japaneseの口数が一気に減る。しかし外国人たちはすし太郎の味を知らないのでこういうものなのかと思って美味しいねと声をかけてくれる。違うんです、これは本来のちらし寿司ではないのですと言いたいが、失敗作を食べさせてしまっていることを伝えるのもいかがなものかということで、日本人お得意の愛想笑いで済ませることしか出来なかったのです…。

当時はこの大失敗の原因がさっぱりわからず、米の種類がいけなかったのか、水の量がおかしかったのか、あるいは共同キッチンの謎メーカーの炊飯器が逝ってたのか、原因不明のままだったのですが、この件からしばらくたってから理由が判明しました。

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なるほど。

登山が趣味の人ならばすぐにわかったことでしょう。しかしその時その場にいる日本人は誰もこの発想がなかったのです…。
標高1,384mの街では日本と同じやり方で米は炊けない。このnoteで私はみなさんにこの知恵を授けたいと思います。

当時めちゃくちゃマズいすし太郎を食べさせてしまった名前も知らない外国人の皆様が本当に美味しい寿司を食べられていますように…。

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