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機動戦士ガンダム0090 越境者たち #1 サマーキャンプの船

 機動戦士ガンダムで描かれた、一年戦争の終結から10年後の世界、Zガンダムとは別の「もう一つの宇宙世紀」の物語を描く。拙作「機動戦士ガンダム0085 姫の遺言」の続編。
 東京に暮らす高校生のカミーユ・ビダンは夏休み期間中、親元を離れて過ごすため、<サイド1>ロンデニオンで開かれるサマーキャンプに参加するが、実は親や友人にも言えない本当の狙いがあった。ロンデニオン基地で新型ガンダムのテストが行われるというのだ。しかし目的地に向かう船が何者かの襲撃を受け…


プロローグ

 宇宙世紀0080、<サイド3>がジオン公国を名乗り、地球連邦に対して独立を求めて挑んだ戦争が終結し、辛くも<サイド3>はジオン共和国として独立を勝ち取った。公王制を敷き独裁体制を固めていたザビ家は倒れ、ジオン・ダイクンの名を冠したその国は、民主国家として再出発を果たした。
 一方で、ジオン公国軍の敢行したコロニー落としにより、コロニー諸州、そして何より地球の諸大陸には深い爪痕が残された。その惨禍は人々の心に深い傷をもたらし、平和な日々が訪れた後も、癒えることのないまま、10年の時が流れ去った。
 そして今、宇宙世紀0090。消えずに残った野望と、癒されないまま膿み続ける心の傷が、地球圏に新たな争乱を巻き起こそうとしていた‥‥

主な登場人物

カミーユ・ビダン:<サイド5>出身、トーキョー在住の高校生
アムロ・レイ:連邦軍特殊部隊<ティターンズ>少尉
ジュドー・アーシタ:<サイド1>スウィートウォーター在住の高校生

ブライト・ノア:連邦軍特殊部隊<ティターンズ>グレイファントム艦長
ハヤト・コバヤシ:連邦通信委員会に出向中の武官、中尉
カイ・シデン:ジャーナリスト、UNN特派員
アルフレッド・イズルハ:カイとコンビを組むカメラマン
セイラ・マス:北米・ボストン在住のフリージャーナリスト

ジェリド・メサ:連邦軍特殊部隊<ティターンズ>中尉
エマ・シーン:連邦軍特殊部隊<ティターンズ>少尉
コウ・ウラキ:連邦軍特殊部隊<ティターンズ>少尉
チャック・キース:連邦軍特殊部隊<ティターンズ>少尉

ダビド・ラング:北米在住、アムロの旧友(オリジナル)
トム・オブライエン:北米在住、アムロの旧友(オリジナル)
ヒロ・サイトウ:北米在住、アムロの旧友(オリジナル)

ヘンケン・ベッケナー:ロンデニオンのパブ、ラーディッシュ店長
レコア・ロンド:ロンデニオン・スペース・アカデミー講師
ケリー・レズナー:ジュドーがバイトするジャンク屋の店主
サエグサ:スターダスト運送で働く輸送船の操舵手

エギーユ・デラーズ:グラナダ<ローゼズ・ガーデン>支配人
アナベル・ガトー:グラナダ<ローゼズ・ガーデン>園長で庭師
シーマ・ガラハウ:元キシリア親衛隊の女

ブレックス・フォーラ:連邦通信委員会に出向中の武官、少将
ウォン・リー:ルオ商会幹部
ベルトーチカ・イルマ:ルオ商会のマーケティング部員
サウロ・ダ・シルバ:木星資源輸送船ジュピトリス船長(オリジナル)
マウアー・ファラオ:木星資源輸送船ジュピトリス乗組員

ジャミトフ・ハイマン中将:連邦軍グラナダ基地司令
バスク・オム大佐:連邦軍特殊部隊<ティターンズ>アルビオン艦長
ジョン・コーウェン中将:連邦軍ロンデニオン基地司令

パプテマス・シロッコ:アナハイム・エレクトロニクス ホビー事業部長
サラ・ザビアロフ:アナハイム・エレクトロニクス社員でシロッコの部下

クワトロ・バジーナ:謎の投資家。元の名をシャア・アズナブル
ロミー・シュナイダー:クワトロの恋人、元キシリア親衛隊隊員

ヘッダー画像:<a href="https://jp.freepik.com/free-photo/earth-from-space-with-a-planet-and-the-sun-in-the-background_41483764.htm#query=%E5%9C%B0%E7%90%83&position=27&from_view=search&track=sph">著作者:vecstock</a>/出典:Freepik

1:サマー・キャンプの船


「うわあ…、きれい!」
「今さらだけどさー、地球って、ほんとに丸かったんだね」

 軌道ステーション<ポート・アース1>から見える青い地球に歓声をあげる同行者たちから離れて、カミーユ・ビダンは待合室のベンチに腰掛け、いそいそとバックパックから本を取り出した。サマーキャンプの出発前日に届いた、心待ちの一冊だった。出版元があるのは<サイド3>ジオン共和国で、そこで半年前に出版されると、瞬く間にベストセラーとなった。その噂を聞きつけ、ようやく手に入れることができたのだ。親元から逃れるために参加したサマーキャンプの間に、じっくり読んでやる。そう思って、カミーユは真新しいその本の表紙を開いた。

 ジュード・ナセル著
 『コンフィデンシャル・ソルジャーズ 連邦軍第13独立部隊の真実(上)』

 一年戦争時後期、連邦軍が量産型モビルスーツの投入に先立って開発した幻の試作機、ガンダムを運用し恐るべき活躍をした少年兵部隊があった、という事実を、関係者への取材をもとに白日の下にさらしたノンフィクションである。震える指先でページをめくったその時、背後から声がした。
「カミーユ? カミーユじゃない!」
 慌てて本を隠しながら顔を上げると、ハイスクールの同級生ファ・ユイリィがこちらへやって来るところだった。
「こんなところで、何しているの、カミーユ。ひょっとしてあなたも、このサマーキャンプに参加するの?」
「そうだよ、悪かったか?」無愛想に、彼は答える。
 彼らは、夏休み期間中<サイド1>ロンデニオンで開かれる「スペースコロニー・宇宙生活体験キャンプ」の参加者の集まる待ち合いロビーにいた。地球で暮らす十代の若者たちが対象で、1ヶ月にわたって、スペースコロニーや宇宙ステーションを舞台に宇宙でできる様々な体験や実験、研究をしながら同世代との交流を楽しむ、という企画である。
「だって、カミーユは東京に引っ越してくる前は、<サイド5>にいたって言ってなかった? スペースコロニーの暮らしなんて、別にキャンプで体験しなくても、よく知ってるんでしょ?」というファの一言に、カミーユはますますイラつく。
「だったら何なんだ、別に構わないだろ、参加したって」
「ふうん?」とファは腕組みする。
「っていうより、夏休みの間、家にいたくないからじゃないの? 親がうるさいとか、なんとか」
「どうだっていいだろ、それを言うなら、そっちはどうなんだ?」
「あら、私は地球生まれの地球育ちだから、この機会に宇宙を体験したいと思ったし、それに、新しい出会いとかあったらいいなー、と思って」
「くっだらない!」カミーユはそう言うと、プイッと横を向く。せっかくの読書を邪魔されたことに加えて、彼女の物言いが癇に障ったせいで、彼はいつもの癖で親指の爪を噛み始めた。
「その癖、やめなさいよ」ファが腰に手を当てて、まるで母親のような口ぶりで言う。カミーユは眉をしかめて、聞こえないふりをした。

 そのとき、彼らの前にスラリとした女性が一人、現れた。ショートカットに明るいピンクの口紅で、明らかにキャンプ参加者のティーンズたちとは雰囲気が違う。
「ロンデニオン・スペースキャンプ参加者のみなさん、お待たせしました! ロンデニオン行きの便の乗船ゲートが開きました。これから船に乗りますので、乗船口でコードのスキャンができるよう、手元に用意しておいてくださいね! 申し遅れましたが、私はキャンプリーダーのレコア・ロンド。レコアって呼んでくれていいわ。では! 荷物を忘れないようにね!」
 その女性の明るい声につられて少年少女たちは立ち上がり、<サイド1>ロンデニオンへ向かう船の乗船ゲートへ向かって行った。

 軌道ステーション<ポート・アース1>は地球の静止軌道上にある宇宙ステーションの一つで、地球とスペース・コロニー間を航行する船の発着場となっている。地球からどこかのスペース・コロニーへ向かう時には、必ずここで船を乗り換えることになっていた。地球と軌道ステーションを結ぶ航路を飛ぶのは地球の重力を振り切り、大気圏を通過して着陸することを想定した航空機型である一方、宇宙空間を行き来するのは、まさしく船、というにふさわしい大型の宇宙船である。地球との間を往来するシャトルと宇宙船が宇宙港の発着口に並ぶ姿は、壮観の一言だった。
 戦艦にも似た大型の宇宙船は、コロニーや月面都市間を旅する旅行者を乗せるだけでなく、 同時に貨物も輸送している。カミーユらスペースキャンプ参加者一行の乗る船にも、コンテナが積み込まれていた。
 その中に、アルファベットのAとEを組み合わせた大きなロゴの入ったコンテナがあった。アナハイム・エレクトロニクス。一年戦争のあと、地球連邦軍の工廠の一部が民営化されたとき、そこに入り込んだ企業である。軍需品として何を製造しているのかは社外秘とされているが、それが連邦軍のモビルスーツであることはある意味公然の秘密となっていた。
 カミーユがわざわざ夏休みを過ごす場所にロンデニオンのサマーキャンプを選んだ本当の目的も、そのコンテナの中身にあった。政府機関に勤める父の情報端末からこっそり抜き取った暗号情報を使ってネットワークに侵入し、ロンデニオンで新型モビルスーツのテストが行われる、という情報をつかんでいたのだ。それは、17歳の少年の好奇心と冒険心を刺激した。カミーユは、映像でしか見たことのないその兵器を自分のその目で見たいと思った。

 ミライ・ノアもまた、地球から<サイド1>のロンデニオンへ向かうところだった。一年戦争時、ホワイトベースの操舵手として活躍した彼女は、当時若干19歳で艦長を務めたブライト・ノアと五年前に結婚し、今は3歳になる息子のハサウェイがいる。ブライトは戦後、北米の連邦軍司令部で軍の再編成の仕事に携わったのち、月面都市フォン・ブラウンの基地に異動となり艦隊勤務に復帰した。そして今年3月からは、新設された特殊部隊の艦長としてロンデニオン基地に赴任していた。小学校の教師として働いていたミライは、7月の学期終了を区切りとして退職し、家族で暮らすためにロンデニオン行きの船に乗ったのだった。
 <ポート・アース1>からロンデニオンまでは、およそ40時間の長旅である。客室に荷物を置くと、乗客たちはそれぞれに、長旅を快適に過ごすための場所を求めて船内をうろつき始めた。ミライは子供を連れて、広々としたラウンジのソファに腰掛けた。ラウンジは頭上まで見渡せるガラス張りの展望室になっており、宇宙に出るのは初めて、と思しきサマーキャンプの少年少女たちが、窓辺の席を陣取っていた。そこから少し離れたところでは、青みがかった髪の少年が一人、読書にのめり込んでいる。

 そこへドヤドヤと、場違いな三人がやってきてミライのそばのソファを占拠した。三人の着ているのは地球連邦軍の制服だが、その色は濃紺で、首元で開いた立ち襟からスカーフをのぞかせた洒落たデザインである。ミライが初めて見るタイプのものだった。
「なんで、俺たちがはるばるロンデニオンに、呼びつけられなきゃならないんだ?」ひときわ背の高い男が言った。豊かな金髪をリーゼントにした伊達男である。
「そういえばコウ、おまえの同期があっちの隊にいるらしいな。あっちはどういうメンツなんだ?」
「いやー、転属になってから全然連絡とってなくて」と答えたのはコウ・ウラキ少尉である。
「僕はともかく、あいつはそんな先鋭部隊に選ばれるような腕前かって奴だったんで、訓練でヒーヒー言ってるんじゃないですかね」
 金髪の男、ジェリド・メサ中尉がにやりと笑った。
「とにかく、今回のテストでの成績次第で、新型がどっちの隊に配備されるか決まるんだ。3機ともいただいて帰る、ってもんじゃないか?エマ。何しろ、一年戦争以来初の“ガンダム”の名のつく機体だ」
 エマ、と呼ばれた女性が思わずしっ、と人差し指を立てて口に当てた。
「およしなさい、ジェリド。機密事項なのよ」
 見ると、少し離れたところに背を向けて座っている少年が、こちらを向いて聞き耳を立てている。エマ・シーン少尉はその視線に気づくと、彼に声をかけた。
「あなた、私たちに興味があるみたいね、名前は?」
「カミーユです、カミーユ・ビダン」少年が答える。
「そう、カミーユ。いい名前ね。今聞いたこと、ここだけの秘密にしておいてくれないかしら」
 そう言って彼女はウインクした。カミーユと呼ばれた少年が、頰を赤らめて表情を崩した。

 アムロ・レイ少尉は、モビルスーツ・ジムIIのシートに身を沈めてシートベルトを締めた。コクピット・ハッチを閉じると、真っ暗な機内に気密シャッターの開閉確認ランプが点滅する。ランプの色が赤からグリーンに変わると自動的に、コクピットシートの周囲を球体で包み込むように配置された全天空モニターに外の風景が映し出される。それは、まるでモビルスーツの外装を透過してるかのようだで、慣れるまでには時間がかかった。人間の視界はせいぜい170度から200度程度しかないのに、モニターを360度にする効果がどれほどあるのだろうか。後方視界を得るために機体を旋回する必要はなくなるが、パイロットは首を回して後方を見なければならないし、敵を認識すれば、結局機体を旋回させて回避するなり攻撃態勢に入るなりしなければならない。しかしこの全天空モニターのおかげで、決して広いとはいえないコクピットでも、押し込められたような閉塞感を感じることはない。
 アムロは呼吸を整えると左右のレバーに手をかけた。

ゴウン…

 核融合エンジンの振動がわずかに伝わってくる。左側のモニターパネルに、機体の電気系統のチェック画像が表示される。オール・グリーン。カタパルトデッキに続くエアハッチはすでに開いている。
「アムロ少尉、左舷カタパルトデッキへどうぞ」
「了解、アムロ、ジムII、左舷カタパルトデッキへ進入する」

 北米・ボストン近郊の街ケンブリッジの大学生だった彼を、再び宇宙に呼び戻したのは父の友人でもあったジョン・コーウェン少将だった。学位は士官学校でも取れると彼が言ったので、アムロは大学を中退して士官学校に入り、4年の教育課程を経てようやく1年前にモビルスーツのパイロットとして勤務を始めた。当時士官学校の教官だったコーウェンはその後、連邦軍の大規模な再編成により中将に昇格し、現在は<サイド1>ロンデニオン基地司令を勤めている。
 再編成により新設されたモビルスーツの特殊部隊ティターンズに彼を引き抜いたのも、コーウェン中将だった。アムロは士官としては駆け出しだったが、パイロットとしての技能は士官学校時代から抜きん出ており、型破りなファイティングスタイルとも相まって、在籍校の名を冠して「ブライトンの魔術師」と呼ばれるようになっていた。
 アムロが新たに配属されたティターンズは、ここ数年、地球圏で頻発するようになったテロ事件や海賊行為に対処するために創設された部隊で、モビルスーツ部隊を主力とするところから、ギリシア神話の巨神族にあやかったこの名前がつけられた。<サイド1>ロンデニオンと、月面都市グラナダの2か所に拠点を定め、ロンデニオン基地駐留部隊は「ロンド・ベル」、グラナダ基地駐留部隊は「グラナダス・ガード」と呼ばれている。
 結成間もないロンド・ベル隊は、母艦である強襲揚陸艦グレイファントムの慣熟飛行を行っていた。艦長はブライト・ノア大佐、彼もまたコーウェン中将による抜擢で、「魔術師」と称されるアムロの能力を活かせるのは彼しかいない、というのがその理由だった。アムロは一年戦争後に除隊して以来の復帰を果たした。

 チャック・キース少尉はグレイファントムの右舷デッキから発進すると、ぐん、と加速して先行しているケーラ・スゥ少尉の機体と水平に並んだ。キースの機影を認めるとケーラは機体の左手を挙げて、合図する。3機編隊のリーダーを務めるのはアムロ・レイ少尉。3機のうち一番最後に発進したが、発進間隔が2機より開いたのか、少し遅れているようだ。
 こういうときは、少し減速した方がいいのかな。そう思ってケーラ機にサインを送ろうとした時、キースは後方から近づいてくる機影に気が付いた。並行する2機を追い抜きざま、逆噴射をかけて相対速度を2機とそろえる。全天空モニターには、機影とともにその認識番号が表示された。3機はVフォーメーションを取って、巡航速度で飛行を続ける。
「…キース、ケーラ、聞こえるか」編隊に加わって初めて、アムロが交信してきた。
「イエス・サー」とキースは答える。フォーメーションの変更か? 隊が結成されてまだ数日、訓練で飛ぶのは初めてだ。
「敵が来る。10時の方向」
「えっ?…敵?」思わず、キースは聞き返す。
「そんな話、聞いてないですよ」
 しかしレーダーを見ると確かに、10時の方向から近づいてくる機影には敵機役を意味するEの表示が点滅している。
「ちくしょう、抜き打ちテストじゃないか」
 機影は単機だ。パイロットはモビルスーツ隊隊長のブラン・ブルターク少佐なのか?
 怯むキースの耳に、アムロの指示が飛び込んでくる。
「下に回り込んで、向こうから手を出させる。ファースト・ストライクは必ず回避。相手が撃った瞬間の隙を狙う。相手の態勢を崩したら、懐に飛び込むんだ。いいな」
「り…了解っ」
 答える間もなくリーダー機は向きを変えて下降していく。確かにレーダーには機影が映っているが、まだ肉眼では何も捉えることができない。相手にとっても同じはず。撃ってくるなら向こうから距離を詰めてくるはずだ。
「見えた!」
 リーダー機の上方に、近づいてくる機影があった。点のようにしか見えないその機体から、ビーム弾の閃光が発せられる。
「きたー!」
 思わずキースが叫んだ。もちろん、実弾ではない。しかし直撃を受ければしっかり、スコアとして記録されるだろう。閃光はリーダー機に向かってまっすぐ伸びてくる。アムロがそれを回避できるのかどうか、見守っているヒマはなかった。キースは敵機にすばやく照準を合わせると、ビームライフルのトリガーを引いた。
 アムロのリーダー機が回避するのと、2機の僚機からビームが発するのは、ほとんど同時だった。ケーラ機の弾ははずれた。キースは自分の放った弾が敵機の右脚に当たったのを見た。回避したアムロ機がすばやく、敵機と距離をつめようとする。それを見越してか、それ以上、敵機は仕掛けて来なかった。そのまま後退してゆく。
「こちらキース、アムロ少尉、敵を追撃しますか?」
「その必要はない。これよりグレイ・ファントムに帰還する」
 やるもんだな。キースは帰還するコクピットの中で一人、つぶやいた。あれは確かに、ただ者ではない。あんなふうに敵の攻撃を回避できるとは。キースはなぜか、自分が敵機を直撃したことよりも、むしろそのことに感動していた。

 訓練後のミーティングは、もう始まっている。ロッカールームで着替えながら、想定外の「敵」を撃退したことに興奮していたキースはアムロとつい話が盛り上がり、気がついたら開始時刻をすぎていた。二人は身をかがめ、忍び足でブリーフィングルームに入っていく。
 その二人を睨みつけると、艦長のブライト・ノアは声を上げた。
「のっけからブリーフィングに遅刻とは、どういうことだ、チャック・キース少尉、それにアムロ・レイ少尉!」
 名指しで呼ばれた二人は、思わず肩をすくめる。
「も、申し訳ありません、つい、ブライト艦長の武勇伝で盛り上がってしまい…」
「余計なことを言うな、キース!」
 集まった面々の目がブライトに一斉に注がれる。ブライトは咳払いをすると、言った。
「遅刻は1分につき罰金10ドルだ」
「俺たち、何分遅れました?」
 ブライトはモニターの下にある時計表示を見て言った。
「8分だな」
「うへえ…、き、きつい…」
「わかったら、さっさと席につけ」
 二人は席についた。
「初っ端からいい根性してるわね」
 隣に座ったアムロに顔を近づけて、小さな声でケーラ・スゥが言った。
「腕はまあ、それなりのようだけど」
「どっちが?」
「あんたの方」
「それはどうも」アムロが言った。
「ブリーフィングはどんな話?」
 ケーラ・スゥが肩をすぼめる。
「<サイド1>周辺情勢よ。ロンド・ベル隊の守備範囲は ラグランジュポイントのL2、L5からルナツーまでのライン、だけどメインは<サイド1>のコロニー、スウィートウォーター。テロリストの巣窟らしい」
「…正直、あまり気の進まない仕事だね」アムロが言った。
「しっ!」とケーラが指を立てる。ブリーフィング中のブライト・ノア大佐が二人を見ていた。
「気が進まない、という気持ちもわからんでもないが、話はしっかりと聞いてもらいたいものだな」
「す、すみません」

「諸君も承知しているように、<サイド1>は一年戦争で最初にジオンの標的になったコロニーだ。戦後、コロニー数基を失ったことにより自給自足体制の維持が困難になり、需給バランスが大きく崩れて経済が不安定になった。しかし地球では戦争で減った人口を考えれば、コロニー復興に投資するより地球上を優先すべきという声に押され、連邦宇宙軍の増強やコロニー復興は後手後手に回っている。<サイド1>市民の中では、次第に連邦政府に対する不満の声が高まってきている。中でも不穏なのが、スウィートウォーターだ」
 ブライトが、モニターに映し出された<サイド1>の地勢図をポインタで示しながら、説明を続ける。
「スウィートウォーターは、一年戦争時に捕虜収容所が置かれたコロニーの一つだ。しかし終戦後の捕虜交換に応じず、そのまま居残ったジオンの軍人が多数いた。ジオン〝公国〟でなくなったジオンには帰還したくない、というわけだ。そこに、同様のジオン軍兵士や国民が難民となって流れ込み、10年たった今、ジオンの残党と反地球連邦を掲げる活動家の拠点になっている」
 ブライトは、全員を見渡して言った。
「我々の任務は、彼らが引き起こすテロから市民を守り、周辺空域の航行の安全を保障することにある。諸君らの活躍を期待する。何か質問は?」
 さっ、と複数が手を挙げる。ブライトが一人を指名した。
「モビルスーツ隊隊長のブラン・ブルターク少佐だ。質問は二つ。敵はテロリストと海賊、ということだが彼らの武装はどの程度のものか? もう一つ、テロ組織の拠点攻撃作戦の計画はあるのか?」
「いい質問だ」ブライトが腕を組んで言った。
「一つ目の、敵の武装についてだが、旧ジオン軍から放出されたと思われるモビルスーツが、これまでの事件で確認されている。過去2年間の事件の記録ファイルに詳細がある。諸君もデータリンクを確認しておいてほしい。ただし、2ヶ月前に起こった海賊事件では、過去のデータにない新型と思しき機体も目撃されている。武装強化が進んでいる、と考えていい」
 ブリーフィングルームが、どよめいた。
「二つ目についてだが、テロ組織の拠点、全容など詳細は情報部が調査中だ。武器・兵器の供給源もはっきりとわかっていない。我々としては、証拠物の押収などで情報部と協力体制を取っていくことになる。テロ組織の拠点攻撃については、少なく見積もっても数年先になるだろう。計画立案はジャブローが行い、議会の承認を経ることになる」
「了解した」ブルターク少佐が右手を挙げた。
「次の質問は?」
 手を挙げたアルファ・A・ベイト中尉が聞いた。
「武装強化を進めるテロリスト相手に、こっちの搭乗機がジムIIというのは、あまりにも不甲斐ないんじゃないですかね。我が軍の武装強化計画はどうなっているのか、知りたい」
「その話は、このあとだ」ブライト大佐が言った。
「他の質問は?」
 誰も、手を挙げなかった。パイロットたちの目が、爛々と輝いている。やはりな。こみ上げる笑いを嚙み殺しながら、ブライトはセキ技術大佐を講壇に招いた。平時ということもあり、どうもパイロットたちのモチベーションが上がらないようだ、とブライトがこぼしたとき、セキ大佐はこう言ったのだ。
「なに、目の前に新型をぶら下げてみろ。すぐに目の色を変える、あの蛮族どもはな」

 講壇に立つと開口一番、セキ技術大佐が言った。
「では、これより第二次ガンダム開発計画について、説明する」
 ブリーフィングルームに集まったパイロット、そして整備員全員の目の色が変わった。

「カミーユったら、こんなところにいたの?」
 ファ・ユイリィの甲高い声に、カミーユはしぶしぶ本から目を離して顔を上げた。
「こんなところまで来て読書だなんて、本当に本が好きね?」
「本が好き、なんじゃなくて、書いてある中身に興味があるから読んでるんだ」
「何に興味があるって?」
「関係ないだろ。そっちこそなんか用?」
 ファはカミーユを見下ろしながら、言った。
「なんか用、じゃないわよ。スケジュール見てなかったの? 2階のカフェテリアでオリエンテーションが始まるのよ。リーダーのレコアさんが、カミーユがいないって探してたんだから」
 ぶすっとした表情で、カミーユは本を閉じて立ち上がった。そこへ、キャンプリーダーのレコアがやって来て言った。
「ここにいたのね、カミーユ。随分探したのよ」
「すみません」
 レコア・ロンドは彼のいるラウンジを見回した。幼い子供連れの女性が近くに座っている。その向こうには3人の軍人がくつろいだ様子でコーヒーを飲んでいた。
「もうすぐオリエンテーションが始まるわ。ファとカミーユは先に行ってて」
「あ、はい」
 カミーユはそう言って歩き出す。素直に従う彼の様子に拍子抜けしたファが、その後を追いかけた。ふと見ると、レコア・ロンドはラウンジの柱の影で端末を取り出して、どこかに連絡を入れているようだ。その表情が妙にこわばっているのが気になって、ファはひとり「変なの」とつぶやいた。

 カフェテリアには、50人ほどのキャンプ参加者が集まっていた。もう一人のキャンプリーダーのトーレスという青年が前に出て、アイスブレイクをしながら参加者をグループ分けし、グループメンバーどうしで自己紹介をさせる。これから、くだらないゲームなどして親睦を深めようということなのだろうか。こういうことの苦手なカミーユは、早く終わって自由時間にならないかとイライラしていた。
 しかし、そのあとトーレスは前に出てきて、言った。
「これから、みんなにノーマルスーツを着用してもらいます。ノーマルスーツは万が一、宇宙船が損傷したり、船外に放り出されたときでも宇宙空間で一定の間生命を維持できるように作られた宇宙服です。ちなみに、なぜノーマルスーツって呼ばれているか、知ってるかい?」
 誰かが、手を挙げて答える。
「人型の機動兵器をモビルスーツっていうのに対応して、普通の宇宙服っていう意味でノーマルスーツっていうんですよね?」
「その通り。宇宙で活動するには、なにをおいてもノーマルスーツの着用が基本だ。後ろに全員の分が用意してある。早速着用してみよう」
 トーレスが満面の笑みを浮かべて言った。
「運がよければ、本物のモビルスーツにも乗れるかもしれないぜ」
 興味津々の男子たちが色めき立つ。カミーユはもちろん、人一倍の興味があったが、そしらぬふりでノーマルスーツに四苦八苦しているファを手伝った。
「それにしても、なんでオリエンでいきなりノーマルスーツなんて着なきゃいけないんだ?」とカミーユは言う。
「これから船外活動をするってわけでもないのに」
「うーん、確かになんか変よね?」とファが言った。
「あのレコアって人、どっか行っちゃって姿が見えないし」
 そのときだった。巡航していた船が突然、急制動をかけた。キャー、という叫び声が上がり、反動で体が進行方向に吹っ飛ばされる。カミーユの体も浮き上がり、ファの上に折り重なるようになって倒れ込んだ。

 ドゥン…

 不気味な振動が船全体を震わせたかと思うと、船内に不気味な警告音が鳴り響く。
「ご、ごめん」とカミーユは慌てて体を離すと、ファに言った。
 キャンプリーダーのトーレスが大声をあげている。
「みんな、大丈夫か? すぐにヘルメットをかぶって生命維持装置のスイッチを入れるんだ!」
 事故なのだろうか。それとも、たまにニュースで見る「海賊」が襲ってきたのだろうか。いてもたってもいられず、カミーユは立ち上がると、さっきまでいた天窓のあるラウンジへ向かって走り出した。
「やだ、どこ行くの? 置いてかないで!」ファは叫ぶと、カミーユの背中を追いかけた。

 軽口を叩くうちに、長旅の疲れで居眠りをしはじめたジェリドは、ドゥンという衝撃音とけたたましい警報の音で目を覚まし、弾かれたようにソファから立ち上がった。
「な、何だ?」
 船内放送が流れ、船体に損傷の恐れありとして、乗客全員にノーマルスーツを着用するよう指示が出されている。ラウンジのカウンターの奥にいた給仕係が、受話器を握っているのを目ざとく見つけて、エマ・シーンは声をかけた。
「ブリッジにつながっているのね? 一体、何が起こっているの?」
「何者かが進路妨害をしたために急制動をかけたんですが、あの、どうもモビルスーツらしき機体が接舷したらしく…」給仕係が答える。
「なんだって? モビルスーツが接舷?」横で聞いていたコウが思わず言った。
「武装集団なのか?」
 おろおろする給仕係のところへ、泣きわめく子供を抱いてミライ・ノアが駆け寄ってきた。
「すみません、幼児サイズのノーマルスーツってあるかしら?」
「あ、あります、ここに」
 給仕係が、カウンターの下から、小さいサイズのノーマルスーツを取り出した。
「あなたがたも、早くノーマルスーツを着用なさってください」
「俺たちは軍人だ、子供より先にノーマルスーツを着ていいわけないだろう!」ジェリドが言った。
「俺は接舷箇所を探して敵の侵入を確認する。コウ、エマ、おまえらはブリッジに行って船長を支援しろ!」
 そこへ、カミーユが駆け込んできた。給仕係が走り去って行くジェリドらに向かって叫んでいる。
「エアロックが破られているかもしれません、軍人さん、ノーマルスーツを!」
「一体、何があったんですか?」
 給仕係が、カミーユを見て言った。
「海賊ですよ、多分…、暗礁空域によく出るとは聞いていたけど、まさか、こんな主要航路に出てくるとは…」
 カミーユを追ってついてきたファが、声を上げる。
「海賊? 宇宙に?」
 カミーユはその声に、思わずラウンジの天窓を見上げた。外は漆黒の闇で、とても襲撃事件の最中とは思えない静謐さがある。しかし船内にはまだ警報が鳴り響き、おびえた子供をミライが必死でなだめていた。カウンターの通信機が鳴り、給仕係が受話器を取った。やがて青い顔で周囲を見渡して言った。
「お客様の中に…、あのー、操船ができる人は…いませんか?」
「えっ」カミーユが思わず声を上げる。
「それ、どういうこと?」
「ブリッジに入り込んだ奴が、船長と操舵手を撃ったらしい…」受話器を持ったまま、給仕係が答える。
「さっき、ここにいた軍人は? あの人たちならできそうだけど」
「彼らは、モビルスーツのパイロットだそうです」
 そう言って、給仕係が受話器に向かって返事をしようとしたとき、後ろから声がした。
「カミーユって言ったわね、あなた、この子を預かってくださらない?」
 やだー、と子供は泣きじゃくっている。それに構わず、その女性は言った。
「ミライ・ノアと申します。一年戦争のとき従軍して、戦艦の操舵手をしていました」
 給仕係は受話器に叫んだ。
「ブリッジ? ここにいます、操船できる人が!」
 受話器を置いた給仕係は、案内しますと言ってミライを連れて行った。彼女はカミーユとファに、子供を頼むわね、と言い残してブリッジに向かって言った。
「あー、よしよし、大丈夫よ、あなた、お名前は?」
 ファが、預かった子供をさっそくあやし出す。カミーユは、ポカンと口を開けて、彼女の後ろ姿を見送った。
「あんな、普通のお母さんみたいな人が…、戦艦の操舵手だったって?!」

 新型ガンダムのテストに関するブリーフィングは、白熱していた。ロンデニオン基地に搬入される機体は3機、それに、同じティターンズからグラナダス・ガード隊のパイロットが3人ついてくる。この3人に機体を「奪われ」てはならないと、彼らの間に妙な連帯感が生じつつあった。
 そのとき、室内の通信機がけたたましい受信音を発した。ブライト・ノア大佐が受話器を取った。
「…何? ハイジャックされた? <ロンデニオン>に向かう航路上の船が?」
 ブリーフィングルームに緊張が走った。了解した、と言ってブライトが受話器を置くと、前に進みでて全員を見渡した。
「ロンデニオン基地から、緊急指令だ。<ポート・アース1>発<ロンデニオン>行きの貨客船エバーグリーン号がハイジャックされた。襲撃犯からの要求は今の不明だが、一つ、はっきりしていることがある。この船には、我々のところに届けられる新型モビルスーツが積載されている」
 一堂にざわめきが広がった。
「新型を奪おうっていうのか?」
「犯人の武装は?」
「モビルスーツで接舷した、という情報もあるが、詳細は不明だ。グレイファントムは、ただちに現場へ救援に向かう。総員、第一戦闘配備につけ!」
 ダッ、と全員が立ち上がり、持ち場に向かって駆け出した。

2:遭遇

 ブリッジに入るドアの前で、エマ・シーン少尉とコウ・ウラキ少尉は集まってきた乗組員数名と作戦を練っていた。ブリッジには船長と操舵手、それに二人のオペレーターがおり、アサルトライフルを持った襲撃犯が乗り込んで、操舵手と船長を撃ったという。オペレーターが犯人の目を盗んで、中の様子を端末で送ってきていた。
 乗り合わせていた医師のノーマンが、撃たれた二人を診ようとやってきていた。給仕係に連れられたミライが、そこに加わった。
「これで、こちらの陣容も揃ったわね」エマが言った。全員が、ノーマルスーツを着用している。
「ミライ・ノアさん。あなたは操舵手ね? ブリッジに入ったら、操船を頼みます。ドクター・ノーマンが来てくれたので、私とコウは看護師ということにして、一緒にブリッジに入り撃たれた二人を治療しつつ、相手の隙を見て取り押さえる」
「大丈夫ですかね?」乗組員の一人が言う。
「私とコウは拳銃を携行しています。それと、ロンデニオン基地に救援を要請しました。ロンド・ベル隊が動いているようです。できれば彼らが来る前に、ブリッジを制圧したいけれど」
「では、向こうを呼びましょう」
 給仕係がインターホンをつないだ。
「操船できる人を連れてきました。あと、撃たれた乗組員の手当てをさせてほしいのですが、医師と看護師二人も入ってもらっていいでしょうか?」
 インターホンを切ると、給仕係がうなずいた。
「では、ミライさん、ドクターノーマンとエマ、コウ、よろしくお願いします」

 ブリッジでは、着座式の操舵席のシートに、撃たれた操舵手がもたれかかっていた。ノーマルスーツを着用していたことが幸いして、傷は致命傷には至っていない。
 襲撃犯はライフルを構えた姿勢で、操舵席の横に立っていた。ノーマルスーツを着用し、ヘルメットのバイザーを下ろしているので、その容貌ははっきりしない。
「操舵手は誰だ」
「私です」とミライが手を挙げた。
「よし、代われ。他の3人は、こいつと船長を診てやれ」
 ミライは、血を流している操舵手に声をかけた。
「ミライ・ノアと申します。操船を代わります。あなたは医師の治療を受けてください」
「す…すまない」操舵手が言った。エマはコウとともに操舵手を席から下ろして横たわらせた。仁王立ちになって、その様子を襲撃犯が見ている。
「船長とこの操舵手は、私の指示に従おうとしなかったので、撃たれることになった。急所は外した。死にはしない。だが二度目はない。そう思ってくれたまえ」
「要求は、何なのだ」苦しげな声で、船長が言った。
「オペレーター、船のバックモニターの映像をメインモニターに映せ」
 メインモニターに映し出された船外後方の映像に、全員が固唾を飲んだ。2機のモビルスーツが、ビームライフルを構えている。
「我々の狙う積荷のコンテナが、船倉にある。それだけ頂ければ、他に用はない。もし渡せないというなら、あのモビルスーツが、この船のエンジンを破壊する」
「コンテナだと? それで済むのか?」船長が、言った。
「悪い取引ではないはずだ。アナハイム・エレクトロニクスのロゴの入ったコンテナが、三つ。オペレーター、積荷のリストにあるだろう?」
 オペレーターが、積荷のリストを画面に出す。そこで思わず看護師のふりをしていたコウが声をあげた。
「それって、俺たちの!」
「バカっ」と思わずエマが口走る。コウの一言を聞きつけた襲撃犯が、ヘルメットの奥でにやりと笑った。
「ほう、俺たちの、ときたか。俺たちの、なんだ?」
 くっ、と唇をかみしめながら、コウは後ろでで拳銃を握った。
「俺たちの、ガンダム。そうだろう? 君たちの情報は、我々に筒抜けだ。どうだ、船長。乗客乗員500人の命の値段としては、連邦軍の新型モビルスーツ3機は決して高くはあるまい」
 襲撃犯が言い終わったちょうどその時、後方にいたモビルスーツの1機がブリッジ前方へ回り込んできた。至近距離に、その機体がはっきりと見える。旧ジオン軍のリック・ドムによく似ている。ブリッジ前方でその機体はくるりと回転し、巨大なバズーカの銃口を向けた。
「では、我々の目的のものを、搬出させていただく」
 襲撃犯は、そう言うとブリッジから出ていった。

 モビルスーツの接舷箇所を見つけるのに、ジェリドは右往左往していた。外部の様子が見えるのは、天窓のあるラウンジのほかは、食事が供されるカフェテリアぐらいしかない。彼はカフェテリアへ走っていき、その窓から外を見た。右舷、左舷、どちらも見える範囲には接舷している機体はない。しかし、船後方に2機のモビルスーツが追尾しているのが見えた。その後ろに、彼らの母船と思しき船が見える。
「くそっ」
 おそらく接舷箇所は、後方下の貨物搬入口か、最下部の緊急脱出口だろう。いずれにせよ、ノーマルスーツを着用しなければ安全に行動できないエリアだ。彼はカフェテリア後部壁面のロッカーを開けて、自分に合うサイズのノーマルスーツを探した。
「おじさん、ひょっとして連邦軍の人?」
 ノーマルスーツを着込んでいると、サマーキャンプの高校生が声をかけてきた。
「そうだ、俺は連邦軍のパイロットだ、おじさんじゃない」
 ジェリドが答える。
「一体何が起こっているんですか? 僕たち、何もわからなくて」
「キャンプリーダーがいるだろう」
「それが、どこへ行ったかわからないんです」
「なに?」
 50人ほどの高校生の目が、一斉に注がれる。ジェリドは腰に手を当てて、言った。
「いいか、落ち着いて静かに聞いてくれ。この船は何者かにハイジャックされた。後ろをつけてくる、あの2機のモビルスーツ、あいつらはテロリストだ」
 一同の間にざわめきが広がる。
「おれは連邦軍のパイロットだ。たまたま基地へ移動するためにこの船に乗り合わせたが、他の仲間と連携して、襲撃犯を制圧すべく動いている。連邦軍への救援も要請している。君たちは、指示があるまで、ここで待機だ。いいな?」
 全員が、真剣なまなざしで頷いた。

 カミーユとファは、ラウンジで、ミライの3歳になる息子、ハサウェイを根気よく遊ばせていた。幸い、彼は泣き止み、少しずつ二人に慣れてきた様子だった。
「それにしても、びっくりしたわね。あの大人しそうな女性が、戦艦に乗ってたなんて」
「う…うん」
 ミライ、という名前にどこか引っかかるものを感じて、カミーユは上の空で返事をした。ミライ、戦艦、操舵手…。さっき読んでいた本にも、そんな人がいなかったっけ?
「あ…、あ、ああーーー!」
「どうしたの?」
「わかったよ、あの人! ホワイトベースで操舵手だった、ミライ・ヤシマだ!」
 そのとき、天窓の上を、巨大な物体が横切っていくのが見えた。黒ずんだ赤いその機体は、右手に大きなライフルを握っている。ガラスごしに見えたその「顔」の中央にあるモノアイがギン!と赤く輝いた。
「きゃあ!」
 思わず、ファが叫び声を上げる。遠ざかるモビルスーツを見ながら、カミーユは血がたぎるような感覚にしびれていた。

 カフェテリアを出たジェリドは、船の貨物搬出口へ向かって降りて行った。貨物エリアから向こうは真空状態で、ノーマルスーツなしで入ることはできない。エアロック手前で、彼はヘルメットをかぶり生命維持装置のスイッチを入れた。見ると、エアロックの手前で何者かが、ロックを解除しようとしている。ジェリドは拳銃を構えて、近づいた。
「そこで、何をしている!」
 振り向いた女の顔が、ヘルメットのバイザー越しに見えた。
「おまえ、あのガキどものキャンプリーダーじゃなかったか? こんなところで、何をしている」
「そう、私はキャンプリーダーよ。この船から、あの子供たちを安全なところへ脱出させなければならないわ。この向こうに、救命艇があるはず」
「嘘だな」ジェリドが言った。
「この向こうは貨物デッキだ。救命艇はここにはない」
「あら、そう。教えてくれてありがとう」キャンプリーダーの女が言った。
「じゃあ、どこかしら、右舷デッキ?」
「なんなら、俺が案内してやってもいいんだぜ? 子供も連れてな」
「結構です」女は、ひるむ様子もなく身を翻してエアロックの前を離れた。そこへ、エマから通信が入る。
「ジェリド、ブリッジから襲撃犯が出て行ったわ。彼はおそらく、接舷しているモビルスーツに戻るつもりよ。そこから離れて、ブリッジへ!」
「なぜだ、それならこっちへ来る襲撃犯を取り押さえるチャンスじゃないのか?」
「ブリッジの外から、私たちを狙っているモビルスーツがいるの。船長は、襲撃犯の要求を呑むことを決めた。ただし、こちらから援助はしない。船長に従って」
「その要求とは、なんだ?」
「積荷よ」エマが言った。
「新型ガンダムの入ったコンテナ、三つ」
「なんだと?」思わず、ジェリドが叫ぶ。
「奴らが新型を奪い去っていくのを、指をくわえて見てろっていうのか」
「民間の船なのよ。全員が人質に取られている。船長の判断はやむを得ないわ。ロンド・ベル隊がこちらに向かっている。あとは彼らに任せるしかない」
 気がつくと、キャンプリーダーの女は姿を消していた。ジェリドはしぶしぶ、ブリッジに向かった。

「ブライト艦長、通信つながりました。エバーグリーン号です」
 通信席のオペレーターがそう言うと、通信をブライトのいる艦長席に回した。ブライトは艦長席の受話器を取り、ブリッジ全員に聞こえるようスピーカーをオンにした。
「エバーグリーン号? 私は地球連邦軍・グレイファントム艦長のブライト・ノアだ。現在、救援に向かって航行中だ。そちらの状況はどうか」
「…こちら、エバーグリーン号。ハイジャック犯は現在、モビルスーツ2機で船の前方と後方から、当船を狙っている。彼らの要求は、連邦軍の新型モビルスーツの入ったコンテナ3個だ」
「なんだと?」と声を上げたのは、セキ技術大佐である。ブライトは続けて質問した。
「船長は、その要求に対してどう対応しているのか」
「…我が社のマニュアル通り…、ハイジャック犯の要求は一旦聞き入れる…、現在、犯人グループは輸送船の係留を試みています」
「なんてことだ! なぜ、みすみすテロリストに新型を手渡さねばならん! なんとかならんのか、ブライト艦長!」セキが息巻く。
「…苦渋の選択です、こちらには乗客乗員500人の命がかかっている…」エバーグリーン号のオペレーターが、苦しげにいう。
「ブリッジに乗り込んできた犯人に船長と操舵手が撃たれ、負傷しました。次に要求を拒んだら、命はないと言っています」
「待て」とブライトが言葉を挟む。
「船長と操舵手が負傷して、今、誰が操船しているんだ?」
 オペレーターが答える。
「乗り合わせていた民間人の中に、以前連邦軍で戦艦の操舵手をしていた、という人がいて、その人が買って出てくれました…、ミライ・ノアっていう人です」
「ミ…ミライが?」
 ブライトは動揺を隠そうと、言葉を続ける。
「で、なんだ、そのコンテナを搬出して敵の輸送船に移送するのには、どれくらい時間がかかるんだ?」
「…輸送船の係留に、手こずっているようですが、コンテナは自走式なので、手慣れた乗組員がやれば1時間ぐらいで、搬出できるかと…」
「我々が現場空域へ到達するのに、あと2時間近くかかる。それまで、なんとか奴らの作業時間を引き延ばす工作をするんだ。いいか?」
「…了解しました」
 受話器を置くと、ブライトはふうっと大きく息を吐いた。まさか、ハイジャックされた船に妻が乗り合わせ、しかも操舵手に代わって操船しているとは、想定の範囲外だった。新型モビルスーツが狙われたことも、ハイジャック犯がモビルスーツを駆使して乗り込んできたことも。
「これが、我々が相手にする〝敵〟なのだな…」
 一人つぶやくと、彼は指示を出した。
「ポイントF59まで、最大戦速! モビルスーツ隊は全機、スタンバッておけ!」

 ブリッジで操縦席についたミライは、負傷してストレッチャーに横たわる操舵手の助言を得ながら、ようやくこの貨客船の操船に慣れてきたところだった。かつて操舵手を務めていたホワイトベースの倍以上の大きさがある。自動航法装置が完備されているため、巡航時はリラックスすることができるが、今は緊急時である。前後で銃口を構えるモビルスーツと一定距離を保ちながら空域で位置を確保するのは至難の技だった。
「通信、入りました。連邦軍の艦艇、グレイファントムからです」
 オペレーターが言った。
「…エバーグリーン号、こちら、グレイファントムの艦長、ブライト・ノアだ。我々は、およそ5分でポイントF59の空域に入り、ただちにモビルスーツ隊を発進、展開させ、前後2機のモビルスーツをこちらに引きつける。回避運動をよろしく頼む」
「了解です」オペレーターが答える。
「ハイジャック犯の動きはどうか、積荷の移送は?」
「かなり手間取っているようです、まだ搬入口まで目的のコンテナを出せないようです」
「よし、なんとか間に合いそうだな」ブライトが言った。
「いや、待て」と、重々しい声で船長が言う。彼は手当を受けた姿で席に着いていた。
「モビルスーツは3機だ、もう1機が見えない、どこかに潜んでいるのではないか。後ろには輸送船もいる。軍からの攻撃で、彼らが当船に反撃してくるかもしれん。狙いは軍のモビルスーツなのだ。それらを相手に渡してから、彼らとやり合っても遅くはあるまい」
「しかし我々は、ハイジャック犯に新型が渡らないうちに、手を打ちたいんです、船長」
「そのために、乗員乗客の命を危険にさらすというのか」
 そこへ、操舵手を務めるミライが口を開いた。
「船長、そしてブライト艦長。私から、提案があります」

 一瞬、モビルスーツの動きが見えたあと、ラウンジの窓の外は闇ばかりとなった。ミライ・ノアから預かった子供は、待ちくたびれて眠りこけている。一体何が起こっているのか、何の説明もないまま、もうかれこれ2時間ほどが過ぎていた。
 退屈になったカミーユが大きく伸びをしたとき、端末が鳴った。さっきのオリエンテーションで同じグループになった、メズーンからだった。
「どこにいるんだ、カミーユ」
「3階の、ラウンジだ。ファ・ユイリィも一緒だ」
「そうか、よかった。ひょっとしたら、ハイジャック犯に捕まっているのかと思ってドキドキしたよ」メズーンが言った。
「こっちは静かだ、なんともないよ」カミーユが答える。
「それはそうと、ラウンジの方にキャンプリーダー、いる?」
「いや、いないよ、二人とも。そっちはどう、何が聞いてるか?」
「連邦軍のパイロットだっていう人がいて、この船がテロリストに襲撃されたって、それで、軍に救援を要請しているって言ってたけど、全然、なんも来ねーし…」そう言ったメズーンが、端末の向こうで突然大声をあげた。
「うわー!!」
 カミーユもそのとき、同時に声を上げていた。
「な、なんだ?」
 天窓の向こうから、突き刺すような閃光が向かってきて、一瞬、目の前が真っ白になった。次の瞬間、ラウンジの窓の外を覆い尽くすように、巨大な人型兵器の姿が眼前を通りすぎてゆく。白と赤とのツートンカラーで、赤地に黄色い十字のマークが入った盾を持っている。赤く塗られた「胸」あたりに、E.F.S.Fの文字。それが地球連邦宇宙軍の略称であることを、カミーユは知っていた。
「来た、本当に、来たーー!」
 連邦軍の、モビルスーツだ。彼は、窓辺に駆け寄った。その姿は一瞬のうちに遠ざかり、遠くで、ピンクに輝く光の筋が交錯している。そこは、戦場だ。自分も今、戦場にいるのだ。

…こちらエバーグリーン号ブリッジです。乗客の皆様には、大変ご迷惑をおかけしております。本船は武装集団の襲撃を受けて立ち往生しておりましたが、ただいま、地球連邦軍からの救援が到着しました。本船は、この空域を離脱します。10秒後に加速を開始します。乗員乗客の皆様は、加速の衝撃に備えて身の安全を確保してください。繰り返します…

 その船内放送を、レコア・ロンドとトーレスは、貨物搬入口で聞いていた。やっと、アナハイム・エレクトロニクスのロゴの入ったコンテナを見つけ、コマを動かしてパズルを解くように、それを搬入口付近まで動かしてきたばかりだった。放送の直前、突然搬入口の扉が閉まり、彼らは貨物エリアに取り残された。
「アポリー!」
 レコアは、外でモビルスーツを駆使して作業していた男に呼びかけた。
「レコア、トーレス、ただちにそこから離れろ、奴らが来た、ティターンズだ! 我々も離脱する」
 その瞬間、衝撃が彼らを襲った。

…ただいま、地球連邦軍からの救援が到着しました。本船は、この空域を離脱します。10秒後に加速を開始します。乗員乗客の皆様は、加速の衝撃に備えて身の安全を確保してください…

 その放送を耳にして、カミーユはとっさにファとミライの子供の腕を掴むと自分の方にぐっと引き寄せ、身を低くして二人に覆いかぶさるようにした。今、この船を操舵しているのは、客船の操舵手ではない、一年戦争を戦った戦士なのだ。

 ドドドドド…

 ラウンジの床から、これまで聞いたことのないような、この大きな貨客船のエンジンの咆哮が伝わってくる。
 そのとき、ブリッジでミライが告げていた
「エンジン出力、120%! これより、この空域を離脱します! 全速前進!」
 次の瞬間、体が吹っ飛ぶような力を全身に受け、カミーユは必死に抵抗した。周囲にいた人も、床に這いつくばるようにしている。叫び声が上がり、不用意に立っていた人が腰砕けになって倒れ込んだ。ロケットを打ち上げるように、ミライは貨客船のエンジン出力を最大限にして一気に加速、上昇したのだ。俊敏なモビルスーツに加速力では到底かなわないが、彼らは今、連邦軍の5機のジムIIの攻撃を回避するので精一杯だろう。ミライは、想定される敵モビルスーツの射程距離を超えるまで加速を続けた。
 吹き飛ばされるように、襲撃犯の輸送船とモビルスーツの機影が小さくなってゆく。
「ミライ・ノアさん、もう大丈夫だ」船長が言った。
「敵は追ってはこれまい。巡航速度に落として、目的地をロンデニオンに再設定してください、そうすれば、あなたも少しお休みになれます」
「ありがとう、船長」
「いや、大したものだ。あなたがいなければ、我々もどうなっていたか…」
 船長が言った。
「船長、貨物エリア周辺にいたハイジャック犯の一味がまだ残っているはずだ。我々は、捜索に行くがよろしいか?」
 ジェリド中尉が言った。
「よろしく頼む」
 連邦軍パイロットの3人は、ブリッジをあとにした。

 カミーユはファとミライの息子、ハサウェイを連れてカフェテリアへ向かった。騒動が去り、無事船が巡航に戻ったことで安心した途端、腹ペコになっていることに気がついたのだ。母親から離れていることに疲れたハサウェイが、ぐずり出したのも気になった。
 カフェテリアは、彼らと同様に食事を摂ろうと集まってきた乗客たちで、ごった返していた。サマーキャンプの参加者の顔を探していると、先ほど連絡をくれたメズーンが手を振り、彼らを呼び寄せた。
「いやー、すごかったな」メズーンが言った。
「とにかく、無事でよかった」
「キャンプリーダーは見つかった?」カミーユが聞いた。
「さっき、二人してここに来た。なんでも、脱出用の救命艇があるはずだ、と思って探していたらしい」
「ほんとかしら?」とファが口をはさむ。
「なんか、あの人たち、変な感じがするのよね」
 そこに、連邦軍の制服姿の3人がやって来た。
「あ、連邦軍のおじさん!」とメズーンが声をかける。振り向いたジェリドが言った。
「おじさん、じゃない。おれはジェリド・メサ中尉って名前と階級があるんだ」
 しかし、その顔に悪気はなさそうだ。
「例の、いなくなったキャンプリーダーは、見つかったか?」
 カミーユは、連邦軍の軍人が自分と同じことを聞いたので、なんだか愉快な気分になった。メズーンが答える。
「さっき戻ってきた。脱出用の救命艇を探しに行ってたんだって」
 ジェリド中尉が、他の二人と顔を見合わせた。
「何か、怪しいことでもあるんですか?」とカミーユが聞いた。
 ジェリド中尉が、肩をすぼめた。
「いいや…、おれもさっき、貨物搬入口手前のエアロックで、確かに彼女を見た。なんでこんなところにいるんだ、と聞いたら、そう言ってたよ」
「そうですか」
 彼らの様子を見て、エマ・シーン少尉が口を開いた。
「彼らも必死だったと思うけど、キャンプリーダーとしては、緊急時に何の説明もなしに参加者の前を離れるのは、少々無責任な行動だったわね。でも事態も収まったようだし、せっかくのサマーキャンプ、これから楽しんでね?」
 立ち去ろうとする彼らに、カミーユが声をかける。
「あ、あの…、あなたたちは、あの〝新型〟のパイロットなんですか?」
 ジェリド・メサ中尉が、肩をすぼめた。
「これから、テストしに行くところだ。新型に乗れるかどうかは、腕次第だ」
「何ていう部隊にいるんですか?」
「<ティターンズ>、よ」エマが答えた。
「まだできたばかりの新設の部隊なの。救援に来たのも、そうよ。覚えてくれるとうれしいわ」
「ええ、もちろん!」

 カミーユはファ、ハサウェイ、メズーンとテーブルを囲むと、ようやく食事にありついた。カミーユとメズーンの顔を見て、ファが言った。
「やっぱり、あのキャンプリーダーたち、怪しいと思わない? レコアって人、ラウンジにカミーユを呼びに来た時、連邦軍のさっきの人たちがいるのを見て、なんか顔色変わってたし」
「君も、そう思う?」メズーンが言った。
「救命艇を探すなんて、絶対に変だよ、この状況でさ」
「…〝新型〟を狙っていたんだよ、きっと」カミーユが低い声で言った。
「新型?」
「〝新型〟のモビルスーツが、積荷の中にあるって、さっきのパイロットが言ってるのを聞いたんだ。それを、狙っていた。だから貨物の搬入口にいたんだよ」
「すごい、その推理当たってない?」ファが言った。
 まだキャンプは1ヶ月もある。彼らが何をしようとしていたのか、カミーユは探ってみようと思い立った。


〜第2話「ロンデニオン」につづく


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