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雑談#1 ミライやセイラが、海水浴を楽しんだのは何月なのか?

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。
 宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。この1ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。人々はみずからの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り、8ヶ月あまりが過ぎた。

機動戦士ガンダム 第1話「ガンダム大地に立つ!」ナレーション

 永井一郎の、重々しいナレーションではじまる「機動戦士ガンダム」第1話。

 これを聴きながらずーっと疑問だったのですが、「機動戦士ガンダム」は宇宙世紀0079年のはじめに開戦して、その後膠着状態で8ヶ月あまりが過ぎたので、ガンダムが大地に立ったのは9月半ばあたりということになる。そうすると、どうしても地上に降りてからの行動が季節的に合わなくなるんですよね。

 13話の「再会、母よ」で小休止したホワイトベース、ミライやセイラは海岸で水着姿になってるじゃないですか。あれは日本海側の鳥取あたりだと思うけど、早く見積もっても9月終わりか10月初旬で、さすがに海水浴というシーズンではありません。

機動戦士ガンダム13話「再会、母よ」より、海水浴を楽しむカツ、レツ、キッカ
ビーチで日光浴を楽しむミライとセイラ、カイが手にしているのは
「ラジカセ」っていうんですよ。平成生まれのみなさま。

 そこで放映当時に編纂された「記録全集」を見てみると、ガンダム年表というのがあって、そこには、宇宙世紀0078年にジオンが侵攻を開始、その年の年末に南極条約締結と書いてあり、なるほどと腑におちたものの、今度はナレーションとの整合性が取れないという問題が発生します。

放映当時に発行された「記録全集」はマニア垂涎の品でした。

 そこで思ったのですが、宇宙世紀0079、のあとの「〜サイド3はジオン公国を名乗り〜膠着状態に入り」までが挿入部分で、「8ヶ月余りが過ぎた」のが冒頭の宇宙世紀0079年、とすれば、なんとなく、腑に落ちます。見ているときの感覚として、年初に始まったあの戦争が年末に終わる、というのは、ちょっと早すぎる感じで、物語のスタート時点が、いつかはわからないけど宇宙世紀0079年、と解釈すると、落ち着きます。

 ガンダムが大地に立ったのが6月半ばぐらいであれば、なんとなく全体的にバランスが取れる気がするのです。つまり、戦争が膠着状態に陥ったのが0078年の10月ぐらい、その2ヶ月後の年末に南極条約が締結され、それから半年後ぐらいに、サイド7にシャアが襲って来る感じではないでしょうか。

 「機動戦士ガンダム」本編にはまったく年月日についての言及がないので、本来、そこは自由な解釈が成り立つわけです。しかし、現在は「公式年表」なるものがあり、第1話「ガンダム大地に立つ!」でアムロが初めてガンダムに搭乗して戦った日が、9月18日とされています。そうすると、上記のような疑問が、むくむくと湧いてくるのです。
 しかも、テレビ版と劇場編では、ホワイトベースの航路も違っており、アムロの故郷の場所も変わっています(テレビ版は鳥取、劇場版ではプリンスルパート(カナダ)。いずれにしても9月下旬か10月あたりに海水浴ができるような気候ではないと思われます。そもそも航路が違えば、起こった出来事の日付も変わってくるわけで、そこに整合性を求めようとすること自体、無駄な労力となってしまうでしょう。

 作品で描かれた戦争の期間が宇宙世紀0079年1月3日から0080年1月1日までとされたのは、番組放映から10年後といわれており(Wikipedia「一年戦争」参照)、それまでは解説本等書籍によってバラバラな状態だったようです。「一年戦争」という名前も、続編である「機動戦士Ζガンダム」ではじめて設定されたもので、この名称から、「先の戦争の期間は一年」というイメージが定着したということも、あるかもしれません。

 今では公式年表が当然の設定として受け入れられ、これを元に「ガンダム解説」をしているユーチューバーなどもいらっしゃいますけれども、「ガンダム」はそうした設定を知らなければ理解できないような話ではないし、むしろ作った人たちは何を描こうとしていたのか、自分なりに感じて受け止める方に注力するのが、楽しむ方法としては良いかなあと思っています。

 何も知らないで「ゼロ」の状態から、「機動戦士ガンダム」を楽しめるって、最高ではないでしょうか。

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