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陽炎7 仮面の忍者赤影 二次小説 3580文字

頭領は、髭面の|我山(がいざん)が、微動だにしないのが不思議だった


抜け忍になってからのこいつは、勝手にやれる事が気にいって、少しづつタガが外れていった。忍びのよう厳しくない生活
(こいつは、忍び入った庄屋で無駄に殺した後、音と騒ぎを聞きつけ集まってきた相手に、怪力を見るような腕をぐるぐる回し、刀を|風車(かざぐるま)のように使い、血の華を咲かせるように、人を斬り


忍びとしては、愚か
叫び声を飛び散らせ、大きく音を立て、
だが、見惚れた
美しくて
我らは音を立てぬ事に苦心する
抜け忍となって放たれた、その動作は
己本来の質を生かしたものであって
(役立たず扱いは、キツいよな)
あの時の俺は、遠くの景色でも見ていたように、花火でも見ていたように見ていたと思う


耳にした近くの奴らが鍬や鋤、刀を携えやってきて…  (近くの村民が鋤や鍬を持ってきた奴らが、命が下れば武装集団として合戦に参戦するにしても、瓦屋根迄軽々飛び走る我らと比べモノになるはずがなく、追うだけ無駄の我ら
派手に一回やってから、あいつは、どんどん自分を解放していった
山中で攫ったのを離しては…
場当たり的な行動も多くなった
まあ、それは読んでいた。抜け忍になって山賊だ、目に余るのは始末する事になると思っていた)



髭面は、女から目が離せず記憶が急速に引き出されたままでいた


(抜け忍になってから、我山がいざんは何十人殺した?
意外な程に雪が深く積もった山中、先に進んだ道から、吠えた声が響きで、隙をついて逃げた女を追う時のこいつは、棒を投げられ喜ぶ犬のようだった)苦く思う飛影



食わせてやればいいだけの女は、覇気がなくつまらない。もういらないと思えば、逃がせばいい。言う事を聞かせたければ、耳を削ぐ、鼻を削ぐと言えば話は早かった、と我山は思い出す


そう言えば、一人、ああ一人谷底に飛び降りた女もいたな、俺を嫌って、すがれば少しは生き延びれたものと思ったよ、あの時、かわいがってやったのにと思う
色の白い中々の美人
この女に似てなかったか?
似ていたように思う、思うだけか?
髭面は女をまじまじと見ていると、岩に顔を何度もぶつけ殺した女も思い出す


我山がいざんは、崖に飛び込んだ女を思い出そうとしているのか、岩にぶつけた女の顔を思いだそうとしているのか、わからなくなり、口の中が苦いように感じるものの、鼻腔をかする土や泥の匂いに、女の叫び声に混じる血の匂いへの狂喜を思い出し・・・


転び転がった女に、はぁはぁと舌を出して餌に食らいつく野良犬のように、四つん這いになり女の肌けた着物から見える首に齧つき、つんざくような女の阿鼻叫喚の中、食いちぎった肉をぐちゃぐちゃぐちゃ噛み、女は肉の千切れた箇所の痛みから体に力が入り激しく動き、強く押さえつけるように肩に齧りつき…


頭には「流石に、反吐が出そうだ」と言われたが、山合いから見る雪、雨の日でも、どんなにぐずついた天気の日でも晴天の景観変わらず見え、この山は俺の庭だと思った
抜けて、よかったとつくづく思った


別の女は、背中の荷物が邪魔をして刀がかすっただけかと「ちっ」と思っていたが、刀でばらけた荷物は落ち、中々の血の量に歓喜した
崩れ落ちるように倒れる女の腕を、いやな方向に捻り上げると音がバキと鳴った
また、必死な悲鳴と暴れる動きで、山の斜面落ちるように逃げてく女に、こちらは慣れた山の斜面を猿のように追いつくのは、揶揄うようで面白かった


殆ど崖のような斜面に突き出た木の根や生えている木の枝に掴み這い上ろうとしている男の手を斧でぶった叩き、下に落ちていく男の悲壮な顔、そう山の雪道を寒さ構わず逃げるのもいた


折角かどわかして連れて来たのに、普通は寒さと疲れで逆らう気力を無くし諦めるのに、あの女は逃げた。雪の中、隙をついて
振り切って、麓に出ようとするなど
その日は、雪降る風の冷たさは耳が千切れると思う程冷たかった
が、身も心も踊る気持ちだった
そんなに俺が怖いのかと、可愛く思ったさ
雪と風の山の中、坂道を走って逃げる女の後姿の黒髪は雪の中で揺れ…、吐く息は氷のように冷たかったが、女の方が辛いよなと、ははっ、はは、ははっと楽しく追いかけ、追いついた


怪我をした忍は、現場を退かないといけない
死にぞこないの目を向けられるのは、我慢ならん
老いての離脱ならば、致し方ないになるが
身体の故障は、なにヘマをした
自害を考えぬのかだ、隊にもよるが
脚の怪我、そこそこ程度の忍びが相手なら、やり過ごせるが、そんな悔しい事ができるか
自分を律してきた、いま迄
なのに
任を解かれた忍びなぞ
痛みで脚が引き攣り強張る時があった
日に日に痛みは増え、ままならぬ時がある
吹き矢の毒の処置がぬかったようだ
十分したと思ったが
何度里を、くれないに、染めてやろうと思ったさ 
だが、抜け忍ならば、そこまで細かくなくていい
派手に音を立てても、わからぬ
わしを怖いと思うなら怖いと思え
橋渡しなぞの任より、いいわ
落ちて何が悪い、落ちるしかないではないか



飛影もまた、己の意識にが過去に飛んでいた
里での修練、抜け忍になってからの事を急速に


忍びは厳しい、自らに
戒律に縛られ、そこには己の意志や行動がない
その戒律こそが、己れの意志とせざる所があり
身体にガタが来て任務が難しくなると
里から居なくなる者、いても対した役はない
使えない忍びは
田畑の世話や子供の指導
橋渡しの任務等で、酷い話じゃないか
活躍できる年齢でも、身体がダメになると距離を置いた蔑んだ目で見られる、邪魔者の目だ
そんな奴らの目を見てきた
自分も、忍びとして用が無くなったをそんな奴らを蔑んできた
実際自分の怪我に、傍目には分からなくしてたが、いずれはほころびがと心配した
腕のある忍びと対自した時が問題だ
山賊に身をやつしていても、忍びからは我らが元忍びとわかる
赤影、白影と対になった時、我ら3人で可能かどうかは...
皆多かれ少なかれ、怪我の可能性は不思議はなかった
だが、忍術のできる連中が一緒にいれば心強い


抜け忍になって、時々思う事があった
向かないないと判断された者達はと...
修行中、滝に落ち浮かんでこないのは、死んだと判断された
折しも、天候の悪い日が多かった
新人の初のお役目、任務随行の上忍は、落武者の亡霊に連れてかれたと、告げる事もあった。あやつは臆病風に吹かれ下手を打ったと
里の者達は、それは致し方ない、まだ早かったか、未熟だった、腑抜けて動けなかったのだと口々に言った


厳しいと思った
連れていく事が、間違いだった。だからこそ上忍と組むのではないかと、死ぬのは嫌だと思った。自分は失敗すまい、あやつとは違うと修行に精進した


修行中、木から木への飛び移りの時、足を滑らせ落ちたのがいた。十才だった
上忍との体術中、弟子達が見てる時だ。風の強い日で、立っているのもきつい風吹く場所は修行場所だった。上忍のクナイを交わしたと思ったら一陣の風に身体が攫われ、崖から落ちたと


深い崖だ、もう夕刻近く、直ぐに日が落ちると言った時だった。この崖の高さから落ちては助からないという事で、その日は、もう遅いからと遺体の確認はされず、翌日何人かが落ちた場所を探したが見つからず、獣の多い山中、山犬等に喰われたのだろうと、迷い込んだ者が喰われた話は、幾つもあり…


あれは、逃したのではなかろうかと、今になってそう思う
子供らが見てる前で、風に攫われ落ちたように見せるのは、現場を経た忍びには容易い
落ちたように見せかけて
落武者も、滝に落ちたのも遺体は見てない
行先も、伝えてあったのでは
無駄に命を捨てぬ事のないよう。師匠の中には身体を壊したのもいる。子供相手、修練見るは簡単、読み書き算術等教えるのに問題はない
今、思う


爆音響く川の水が落下する白い水煙の立つ谷底
踏ん張って立っていても風で身体がぐらつく風が吹く崖での修行
厳しい師匠で、知られていた
子供が事故で亡くなるのも多い師匠
場所も厳しい、険しい、難しい所ばかり
忍びを目指すなら当然の修練場所ではあるが
あやつは、子供にも厳しいと


飛影は、囲炉裏の小さな火だけが灯る洞穴のような暗さに、突き出し窓から見える月を見ても、闇の色と夜の静けさで閉ざされたようにしか思えず…
崖下を流れる川の音に、太い流木の落ちるが心の中に入った
「逃げろ!」、「里から去れ」と言ったのでは… 
逃走させても、童が一人で、里は抜けられない
絶えず里を、回っている者がいる
見つかる確率は、高い
皆、よくヘマをする奴らだった
逃すなら、組んでる者がいたはずだ
それとも、転落や事故はある事と見て見ぬフリをしていたのか


修練中のことと、いやそれはあり得んか

逃すなら、組んでいたのだろうな

・・・任務から外れるのが嫌だった

実践が良かった

里で田畑を耕し、童に修練させる等、まったく興味なかった

そういう生き方もあったか
童を、弟子を逃す


続く→陽炎8
仮面の忍者赤影 二次小説

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