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仕事辞めたってよ

コロナ禍。2020年も後半に差し掛かった頃、私の脳に飛来したのは、ウン年を共にしたベストフレンド的思考だった。

「いや、仕事辞めよ」

前の投稿を見てもらえれば分かるが、私はかねてから仕事を辞めたくて仕方がなかった。仕事内容は、同期に「なんでうちの会社に入ったの?」と素で聞かれるくらいには向いてなかったし、その不向きを乗り越えるほどの意欲もなかった。

とはいえ、大方の社会人が、働かずに生きられるものならそうしたいと思っているだろう(と私は勝手に思っている)から、私もその一人に過ぎなかったはずなのだ。

きっかけはなんだったか。別に、新しい出来事があって「もう無理!!!!」ってなったわけではない。いままでの経歴から言えば、「まだやれた」と思う。私に足りないのは、常に「言いだしやすい環境」だった。

三十路を迎え、私も中堅に片足を突っ込み始めていた。自慢じゃないが、弊社(もう辞めたので弊社ではないですが便宜上こう呼ぶことにします)、転勤と拘束時間が激しい代わりにまあまあ盤石な給料を維持している。いわゆる安定したお仕事だ。

繰り返す、コロナ禍だ。

このご時世に敢えて仕事やめにいく???という躊躇いがなかったわけではない。新卒で弊社に入って以来、弊社以外を知らない私が再び就活の荒波に揉まれることに耐えられるのかという不安だってもちろんあった。そんな中、職場環境の他に私の背中を押したのは年齢だった。冷静に考えるまでもなく、私のこれからの人生で今が一番若いってやつだ。

どうやら転職先を決めてから退職を願い出るのがベストらしいということは知っていたが、弊社、そのハードルはちょっと高かった。詳細は省くが、いずれにせよ仕事が詰まっていてこっそり就活なんてやる隙はなかったと思う。

というわけで、早速上司に申し出てみることにした。

「私、この仕事を辞めようと思っていて」

「えっ……そうなん????」

「そうなんです」

上司がテキトーなのではない。私が唐突過ぎたのだ。ごめん。当時の直上の上司は今まで出会ってきた上司の中ではもっとも程よい距離感で、私にとっては良いことも悪いことも比較的フラットに報告できる相手だった。今後私の退職に関するめんどくさい手続きをこの人にお願いするのが割と心苦しくはあったのだが、辞めたいタイミングで相性が本当に悪い上司に対して「辞めます」なんてとてもじゃないが言えるわけがない。

手続きは、驚くほどスピーディーだった。ひととおり理由だとか、今後の展望なんかは聞かれたりしたが、そこは辞めたいと思い続けてx年の経験が生きた。余計な手順は一切なかった。完璧だ。

残務処理なんかもそれなりにやった。引き継ぎ相手に恵まれて(これも退職のタイミング選定に影響している)、キリのいいところで仕事を明け渡すことに成功。ついでに経理絡みの諸手続きなんかももう逆に引くくらいコンパクトにすんだ。そしてあまりにもつつがなく迎えた完璧すぎる退職日。

私のこの職場への影響力ってこんなもんだったんだな、と思わずにはいられなかった。

ネガティブな響きだけど、意味合いとしてはそればかりでもない。

いつから私は、自分が辞めると周りに迷惑がかかるだなんて思い上がりをしていたのだろう。いや、厳密には迷惑ゼロじゃないかもしれないが、それを避けるために私が心身を犠牲にするほどのことでもないな、と。

会社の歯車としての私の存在は、じつにちっぽけだ。

社会にとってもきっと同じことだから、転職も簡単にはいかないだろうけど……。

でも、「さーて人生これから何しようかな!」なんていう感情に見舞われることなんてそうそうないだろうから、限界の人にはおすすめかも。

そのときには、自由に使える預金額だけは確認しておくことを同時におすすめします……。

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