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【宗教2世ごろごろケア日記08】ピアサポートの現状と課題


 まいどおなじみ、ごろごろケア日記のお時間である。

 宗教2世の支援やケアにおいて、以前から「トラウマインフォームドケア」の考え方を紹介したりしているのだけれど、その中にも出てくる

「ピアサポート」

というものがある。これは平たくいえば「仲間同士の支え合い」のことで、「同じ環境や境遇に遭った人同士が、互いに支援しあうこと」みたいな意味で捉えれば大丈夫だ。

 よく、アルコール依存症の人たちの問題解決の時に「自助グループ」みたいな会に入って、互いに相談したり励ましたりするようなことがあるが、あれと構造的には同じと思ってもらっていい。

 wikiにも書いてあるけれど、やっぱりこの方法が生まれた経緯はアルコール依存症についてからなんだって。なるほど。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88

 どちらを読んでも、基本的な考え方は共通だとわかる。


 ちょっとおもしろいのは

「言いっぱなし、聞きっぱなしが原則で、感想や意見を言わない」

というルールを持つことがある、ってことだ。


 同じ体験を持つ人同士がサポートし合うのは、ぶっちゃけて言えば「体験して無いヤツには、わたしの気持ちはわからん」という気持ちの壁があることでもあるし、「おなじ体験をしている人がいるんだ」という共感によって、気持ちが安心する部分があるからだろう。

 その意味では、「基本的」にはピアサポートは、一定の効果が見込めると思う。


 なぜ、「基本的」と書いたのか。実はここから先には裏があって、ピアサポートの現場や現状では、いろいろな課題もあるからだ。


<ピアサポートの課題>

◆ 実際に出かけてゆく対面グループでの活動は、時間と場所が限られること。
◆ 実際の参加型では顔出しの必要があること。(仮名はOKだろう)
◆ 同じ体験・似た体験という共通項への反論として「自分の体験は違う、もっと特殊だ」という感情を持つ場合があること
◆ 対面後、実際の人間関係が反映されてしまう場合があり、こじれることがあること。
◆ ピアサポートの「その後、それから」については曖昧であること。
◆ メンタルが不安定な人たちの集まりの場合、別方向での心の乱れが発生すること。
◆ 単発的の場合、参加メンバーが流動的で一定しない。
◆ 逆に、参加メンバーが固定化する場合もある。
◆ 偽当事者の紛れ込み、他の目的を持った当事者の参加等


 これまたぶっちゃけて言えば、これらの課題を平たく言い換えると

「ヤバいやつが入ってきた。ヤバい発言をするやつがいる」
「男女の色恋に発展して、もう泥沼」
「ていうか、ナンパ目的?」
「参加することでフラッシュバックに苛まされた」
「あの人、全然関係ない話ばっかりするよね」
「いつも同じ人が音頭を取ったり、発言している」
「居心地が良すぎて、ずっと永遠にそこにいる」
「結局、何も現実は解決してないんだけどね」

みたいなことはめっちゃ起きる。このあたりは運営者の力量にもよるので、まあ実態は様々だ。

なので、ピアサポートは万能ではない!

 問題解決の場ではなく、「ひとつの小さなツール」としての場として利用しないと、あまりにも過度な期待は禁物ということだ。


 むこがわさん個人的には、ごく初期において「自分と同じ悩みや苦しみの人がいるんだ」という共感と、発見の場としては機能するが、ある期間を過ぎるとそこから次のステップへ移行したほうがいいと思っている。

 また、これも運営側の問題だが「こういうデメリットやリスクがありますよ」ということは開催にあたって普通は公表しない。だって「安心して来てね!」と言いたいし、そうあるべきだからだ。
 ところが、実際に参加してみると、大小いろんな問題点に出会ってしまい、「がっかりだよ!」ということもあるだろう。
 このあたりは運営の課題としてもめちゃくちゃ難しいと思う。


 では次はもう少し具体的に、「宗教2世」の自助活動にどんなものがあるか見てゆこう。


◆ 実際の参加型自助グループ(公的)
 ・・・大学の先生とか、心理の専門家などが管理運営するもの。対面型が多く、その土地へでかけてゆく必要がある。日時なども当然決まっている。個人保護の考え方から、かなりクローズドな会になることが多い。
 ・・・コロナ後にはZOOM等を利用した、オンラインだけれどクローズドな会もあるようだ。

◆ 宗教2世オフ会(私的)
 ・・・twitterなどの呼びかけで、集まるもの。「宗教2世バー」などの形で、どこかの飲食店等の会場・イベントスペースなどで一日のみ開催されるものなどがある。

 書きたくないけど宗教2世オフ会に参加したために起きた女性の性被害とかもあるらしいので、あまりオススメしない。

◆ オンライン自助グループ
 ・・・twitterスペースなどを通じて、オンライン・匿名で集まり、話をするもの。非対面のため、個人情報は比較的守られるが、会の性質そのものはオープンであることが多い。

◆ twitterそのもの
・・・山上事件後、ツイッター界隈そのものが実は「自助空間」として機能しているという実態がある。オンライン、匿名、オープン、時間と時を選ばないといった比較的多くのメリットがある。以下、詳述。


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 むこがわさんが着目しているのは、2023年1月現在において「twitter」というSNS空間そのものが、「宗教2世」にとってのかなり強力な「自助空間」として機能しているのではないか?という点である。

 これはまだ有識者の誰もが言っていないが、

「あえてどこかのピアサポートや自助グループに入っていなくても」

「twitterにおいて、#宗教2世 や #JW2世 #祝福2世  といったワードで各人のことばを読んだり、自分も書き込んだりすることで、ほぼ自助・共助そのものとして機能している」

という面があると思っている。

twitter空間をピアサポートとして利用するメリットは、かなりある。

◆ 時間と場所を選ばず、好きな時に読み書きができる。
◆ リアルな対面を伴わないので、個人情報が守られる。匿名で参加できる。
◆ 他人の体験を共感したり、自分の体験を吐き出したりできる。
◆ 参加人数がかなり多い。500〜1000程度のアカウントが常時活動している。
◆ 似た体験も、細部が違った体験も読み書きできるので、多様性がある。
◆ 意識的にtwitter空間から離れたり、卒業も可能。
◆ アカウントを分けることで、日頃の暮しとの両立もできる。

と、まあ良いことだらけだ。

 デメリットももちろんある。

◆ 意図しない不快なツイートが流れてきたり、強烈な呪詛に出会うことも。
◆ DMなどで、意見の合わない人からの言葉を投げられることもある。
◆ twitter上で良き人であっても、実際に合うとヤバいことがある。
(twitter上だけでは、その人の本質的な人となりは判別できない)
◆ フォロー・フォロワーの関係性が固定化されてゆくと、思想信条が偏ってゆく。

などが考えられるだろう。


 もちろん、こうした問題点や課題は、どの自助活動においてもまったく同様に発生するので、twitterだけが特段デメリットやマイナスが大きいわけではない。むしろ、メリットのほうが、現時点では多いのではないかな。


 逆に言えば、現時点においては「twitterが宗教2世ケアの最前線で、最大空間」であり、その界隈に出入りしていなければ「情報が他のSNSや空間ではあまり手に入らない」ということが起きていると思う。

 あとは個人ブログなどを読んだり、そこにコメントすることはできるだろうが、双方向性やピアサポートの面では、技術的にかなり弱いと思ってよい。


<ピアサポートの今後の課題>

 自助活動のその後、が実はまだあまり見つかっておらず、現状ではピアサポート段階で足踏みしていると思う。

 これは当人を責めているのでも、批判することもまったくないのだが、たとえばある宗教2世がツイッターやSNSで盛んに発言や活動していて、彼や彼女の問題が一定に解決してしまうと、その場からは卒業して

「ふつうの一般人として消えてゆく」

ということが盛んに起きている。中長期の5年スパンくらいで界隈を観察していると、経済的に成功したり、自分の生活や人間関係が安定すると

「なにごともなかったかのように、さらりと姿を消す」

人も多い。あるいは

「アカウントは同じでも、もはや宗教系の発言は皆無になってゆく」

ということもある。

 もちろん、こうした出来事は、本来であれば良いことだ。

「過去をきちんと清算整理して、納得して新たな人生をいきいきと歩んでゆく」

という意味では、完全に正しいし、すべての人がそうなるべきである。

 ただ、そうなると

「幸せになった人はいいよね〜」

というひがみとそねみだけが残り、自助空間には幸せになれない・卒業できない者のさらなる怨念だけが凝縮されてゆくことになるだろう。

 これはキモいし、よろしくない。


 なので、卒業した人にはちょっとだけ、ほんのちょっとだけお願いがある。それは

◆ 宗教体験を卒業して、過去をクリアできた人は、そのロールモデル、後輩への希望をなんらかの形ですこーしだけ残してほしい。それはブログなどで公開するものではなくても、クローズドな空間での「後輩へのことば」でもいい。

◆ 前半生から後半生へ向けて、自分ならではの言葉でよいので、「これが良かった。こうしたことが良かった」などの、具体的なヒントを後輩たちに預けてくれないだろうか。それ以上は望まない。あとはすべて忘れて消えてもらってかまわない。

◆ そして、できることならば、宗教2世支援の活動をしているどこかのグループや団体に、こころばかりの資金援助をお願いしたい。
 ぶっちゃけ、当事者はお金がなかったり、経済環境がすこぶる悪い。それは卒業生のみなさんが一番知ってるとおりだと思う。
 もし、”みなさんの暮しに余裕があるなら”でよいので、そうした隠れた手助けがあれば、めっちゃ嬉しい。


 今日はこのへんで。ぜんぜんごろごろしなかったけど(笑)



(つづく)








 


 

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