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いかにして人の温かさを伝えるか?

ネットでスマホのガラスフィルムを買った。これを貼っておくと、もちろん貼ったそばからすぐ落として割れるのだが、その下の本体のガラスは守られるので必ず貼るようにしている。で、一番評価の高いショップで買ったのだが、ここがスゴい。

もしうまく貼れなかったり、割れてしまっても購入後1年間保証があって、もう一枚だけ同じ物を送ってくれるのだ。また、おそらく初回購入時限定だと思うが、店長直筆の便箋1枚分の手紙と検品担当者のこれまた直筆の挨拶カード(小さい折り鶴付き)も入っている。また、貼りかたの説明文にはラインや電話で気軽に質問してほしいとか書かれていて、その下に「私たちは100回同じことを聞かれても笑顔で答えます!」と書いてある。ぼくはちょっと怖くなった。やりすぎではないかと思うのだ。迷惑系ユーチューバーとかが「本当に同じこと100回聞いてみた」という企画をやったりはしないだろうか?

保証とか質問できるとか貼りやすい小道具やガラス拭きやホコリ取りシールが完備とかそいういうのは単純に素晴らしい企業努力だと思うんだけど、直筆の手紙とか折り鶴とか要る?と思ってしまう。おそらく社長の信念によるのだと思うけど、ぼくだったら毎回同じ文面をわざわざ手書きで書かされるのは嫌だなあ。「人と人とのつながりが希薄になってる」のは確かだけど、「少しでも人の温かさを肌で感じて頂けるように真心を込めて丁寧に梱包した」という。

広島市が毎年全国から届く夥しい量の平和祈念の折り鶴に対し、保管とか処分に億単位のお金がかかってると聞いたことがある。それだけのお金でどれだけの人を現実的に救えるだろうか。

何かそういう気持ちを相手に伝える別の手段があればいいのに、と思う。

ある日我が家のインターホンがなる。
「はい」
「こんにちは。お忙しいところ、突然すみません。私、先日スマホのガラスフィルムをお買い上げ頂いた○○というショップの□□と申します。」
「・・・はい。どういったご用件でしょうか?」
「少しだけお時間よろしいでしょうか?」
ぼくはここで家のドアを開けて外に出る。門の前にかわいいアラサー女子が立っている。彼女はぺこぺこ頭を下げ恐縮しながら言うのだ。
「人と人とのつながりが希薄になりがちな時ですので、初回お買い上げのお客様には戸別訪問させて頂いております。」
「え、そんな。しかもアポなしで?もし不在だったらどうするんですか・・・」
門を開けて出たぼくの手をそっと取る女子。2月の寒空のもとで彼女の小さな手が冷たくかじかんでいるのがわかる。
「あの、もし差し支えなければ、なのですが、少しでも人の温かさを肌で感じて頂けたらと思いまして・・・」
ぼくの手をぎゅっと握りながら上目遣いに見つめてくる女子。その頰が上気している。
「いや、そんな・・・ダメですよ。ぼくはご覧の通り所帯持ちですし、どこの誰かもわからない人とそんな・・・あなただって、ぼくにそんなことを言うってことはあの何百万枚も売れた商品なんだから一体どれだけの男性のもとをこうやって訪れたか知れたもんじゃない。悪いことは言わない。もうこんなことをさせる会社はやめなさい。あなたにはまだ将来があるんだから」

この辺でやめとくか。
夜は妄想が捗るが、友人知人にメールを送るのはやめておいた方がいい。こういうしょうもないキモい妄想をキモいとも思わずにシェアしてしまうことがあるからだ。

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