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story ウロに棲むものは

ロンロン ロンロン…
ロンロン ロンロン…

あぁ、あぁ
ほらまた
聴こえてきたよ

ロンロン ロンロン…
ロンロン ロンロン…

どうしてこうも
寂しげなのさ

ロンロン ロンロン…
ルールル ルールル…

古木のウロに棲むものは

ロンロン ロンロン…
ルールル ルールル…

哀しい唄が好きなのさ

ロールー ロールー
ロンロンロンロン…

これぢゃあどうも気が滅入る

あたしは結構気に入ってるわ

森に大風吹く日には
古木の主が唄いだす

やるせないよな
哀しい唄を

あてどないよな
淋しい唄を

ロンロン ロンロン
ロンロン ロンロン…

いつの頃から
この森の
古木のウロに棲むものは

風の吹く日に
爪弾いて

誰にともなく
悼むのだ

ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。