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マティス展とうちの子

お盆中、東京都美術館で開催されていた「マティス展」にいってきました。
マティスの生涯の作品があらかたそろったかたちでの大規模な回顧展は、日本で20年ぶりだそうで。行ってみて、大変感動しました。

ひとつやりたかったことを達成することができました。それは『こどもと一緒に、アート展示イベントに行くこと』。

この記事では、「アート展示とこども」について自分の体験や気持ちを言語化にしてみたいと思います。


なんで、こどもとアート展示に行きたかったのか


ぼくは多摩美術大学を卒業しました。美術大学を志したのは高校2年生の頃で、早い方ではありません。それまでアートに対して強い気持ちはありませんでしたし、自発的にアート展示にも行ったこともなく、入学してから自分の意識の低さを感じて恥ずかしい気持ちになったのを覚えています。

両親も特にアートに興味はなく、家族のイベントでアート展示に連れて行ってもらった記憶もほとんどありません。

自分の中で、アート展示を楽しめるようになったのが遅いというのは、ややコンプレックスになっています。アートについて触れれば触れるほど、アートは思うほど高尚なものでもないし、知識をつける前に体験できるに越したことはないと考えていました。

なので、然るべきタイミングが来れば、こどもをアート展示に連れて行ってみたいなという気持ちが前々からありました。
娘は3歳、息子は8歳になります。息子の方は適齢期かなと思い、家族にプレゼンして展示に行ってみることにしました。


親の勝手な予想


マティス展は、こどもを連れていく展示としては最適だと思いました。
マティスは、アートに自己表現が求められ始めた時代を先導した超有名アーティスト。切り絵の作品に代表されるようなプリミティブな作風も、こどもが共感しやすい気がしました。

ただ、「うちの子は退屈するんじゃないか、まぁそれも経験、それでもいいか」とネガティブな結果も予想していました。

Youtubeの動画、サブスク、ゲーム。ゴージャスな表現の作品を見慣れていて、且つ日々大量の情報の渦の中にいる息子にとって、一枚の絵画を楽しむという体験は楽しめるか不安でした。
また、アート作品は、作品の受け取り方は鑑賞者に委ねられる側面もあります。ゲームプレイよりもゲーム実況に熱中する息子は、作品の見方がわからず混乱してしまうんじゃないかとも思ってました。

そうネガティブに妄想してしまう背後に、同時期に上映していた宮崎駿作品『君たちはどう生きるか』の巷のレビューもあったように感じます。
「よくわからんから、つまらなかった」「アーティなものを理解できるような、考えて作品を観る人にはたまらないよね」「こういう自己表現的な作品は、昨今では減ったよね」的な感想が飛び交っていて、「小学生を含む若者の過ごす環境では、アーティなマインドに触れる機会が少ないのかな」と思っていたので、息子がアートを楽しめない可能性は十分あることだと思っていました。

展示を楽しめるように

少しでもマティス展を楽しむ気持ちになって欲しかったので、息子にひとつルールを設けました。それは『見た絵の中で、ベスト5教えて。パパも考えるから』というもの。

「自分の感性に一番刺さる作品を探す」という目的があるだけでも、何か変わるかなぁと思ってのルールを付け足しました。


展示を見て


息子は結果的にとても楽しめたようです。
展示会場に入るまでのモギリの列では、ぐずっていましたが中に入ってからはご機嫌がキープできていました。

行くなら、土日

まずは、環境が良かったです。

お盆中の日曜日ということで、会場にはこどもがたくさんいる環境でした。
無言でじっくり作品を見る子、熱心に親に感想を伝えるため喋り続けている子、走り回る子、つまらないと泣き叫ぶ子。息子は、周りのこどもと自分を相対的に比較して、ちょうどいい鑑賞態度を見つけられた気がします。

正直、静かに作品を観たい人にとっては地獄だったでしょうw キレ気味のおばさまも何人かいらっしゃいました。ただ、息子からすれば過度に緊張せず楽しめる状態だったようです。

上白石萌歌さんの音声ガイド

音声ガイドもよかった。

結局、実況に頼ってしまった感もありますが、こどもでもわかる言葉を使った丁寧なガイドだったようです。(息子がガイドを手放さず、ぼくは聞けていない)
No.1からNo.18まである作品解説を、飽きることなく全て聞いていました。聞いて回る楽しさもあったようです。

ある程度ガイドラインがあることが、息子の不安を取り除いたように感じます。

『作品ベスト5』

展示鑑賞前に設けたルールに関しては、「やっぱりこいつが1番だなぁ」「順位入れ替わったかも」などと言いながら楽しんでいました。
それなりに効果はあったようです。

音声ガイドで解説される作品ばかりになってしまうかと思いきや、人だかりの少ないメインではない(?)作品の中からも好きな作品を見つけてきたのは、親としては感動です。

息子の「いち人間としての軸」を見られたような気分になりました。

やっぱり展示は行って体験してみなければ、何を思うかはわからない。
聞く話、動画などでは得れない経験ですね。


さいごに


ちなみに娘は、「はやくアイスたべたい」とずっとグズっていました。
流石に展示自体は3歳には楽しみにくかったようですが、次回の機会が楽しみです。

息子は、出口付近のショップで自己ベストナンバー1の作品がA2ポスターになっているのを見つけて喜び、買うことをねだってきました。
そして、その様子を見て、娘も「自分も欲しい」と慌てて好きな作品を探してポストカードをねだってきました。
娘にとっても、多少なりアート体験にはなったように思います。

結果、うちのリビングにマティスのポスターとポストカードが貼られ、少しアーティな部屋になりました。

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