朝井リョウ『正欲』で、多様性を謳う覚悟を問われた
社会の中で「そんなものが現実にあるわけがないだろう」「普通に考えておかしい」「きちがいは隔離してほしい」。そう多数派が笑って済ますようなこと、あるいはさも当然という顔で主張することが、誰かの人生を抑圧する。その事実を突きつけられた時、多くのことをマジョリティとして深く考えずに享受し、さらに恵まれた環境で育った私は自分の無力さに愕然とする。自分なりにコンプレックスと向き合ってきた人生はおままごとのように見えて、そこで試行錯誤、時に涙を流していたようなこと自体が、誰かを傷つけうる