伊豆の東府やさんには、大正レトロな穏やかな時間が流れていた
父親は、半年に一度ほど発作のように「家族旅行に行こう!」と言う。いつもはおうちでゴロゴロ♡が至福な人なのに、こと家族となると何時間でも車を走らす父はけっこうカッコいい(そのかわり予定合わせないとめちゃくちゃうざ絡みしてくる)
そんなわけで、伊豆の東武やさんという宿に泊まってきた。父が会社員時代に、大きなプロジェクト終わりの打ち上げでお偉いさんに連れてきてもらったことがあるそう。こんないい宿、酔っ払いのおじさんたちだけじゃ勿体ない、と妹たちと嘆くほど素敵な宿だった。
せっかくの宿だから、と16時にチェックイン。いつもは遅刻のオンパレードな我が家にしては、素晴らしい出来栄えだ。
玄関棟なるこのフロントの建物は、とても立派な木材が使われていた。
館内の説明を受け、ご飯の時間と貸切風呂の時間を決めたらいざお部屋へ。
木の美しい廊下を抜けて、本館へ移る。
お部屋へ。今回宿泊するのは、川沿いのお風呂付き(掛け流し)のお部屋だった。
さて、部屋でのんびりするのもいいけれど、ラウンジならドリンクが飲み放題と聞いた。我が家は背伸びしてこの旅館に来たので、泊まったからには飲み食べ尽くしたいお年頃なのだ。
私と妹たちは写真を撮りあって長いこと館内を散策していたので、私たちがラウンジについた頃には父はたいそう楽しそうだった(私が酔うと陽気になるのは、父の遺伝だと思う)
ラグジュアリーソファーや鏡でさんざん写真を撮ったあと、妹はフリースナックから茎わかめをとって食べていた。
ビールやワインも飲み放題のパラダイスだったけれど、夕ご飯をおいしく食べたいので私は遠慮した。なんて偉い!!
さてさてアルコールを我慢したとはいえ、お昼のお寿司が体に残りすぎているので散策をすることに。
この自然、なんと施設内なのだ。
東京の生活では、こういう自然に飢えがちなのでとても空気が澄んでいる気がする。さすがに夏の水辺は虫のオンパレードなので、食われすぎないよう適度に体を動かし続けたら家族で一列に踊っているみたいになった。
さて、次なる目的地は温泉だ。このお宿、なんといっても温泉が多い。お部屋についている温泉も掛け流し、内湯(大浴場)、露天温泉(男女入れ替え制)、貸切風呂(二種類)というバリエーションなのだ。
そう、普通に考えたら、チェックアウトまでの時間が足りなすぎる。温泉好きにはたまらないお宿となっている。
お腹が空いていないなら温泉に入るしかないだろうということで、貸切風呂に向かう。ちなみにここの温泉は奈良時代以降子宝の湯として有名だとか(!)で、年頃の娘三人と母とで子宝の湯に入るというシュールな体験をしてきた。
貸切をいいことにここだけは温泉の写真がある。四人くらいならこっちと進められた貸切風呂は、四人でも広いくらいの大満足の温泉だった。
私はここからも夕食後に二つの温泉を巡る構想があったので、ここでは体はお湯の前に軽く流すだけ。今シャンプーなんてしてもこのあとまたどっさり汗をかいてしまうからね。
さて、満足したところで夕食へ。夕食は二時間くらいはみるとされていて、私たちは七時半過ぎの遅い時間を選んだ。なんせお腹いっぱいだったので、温泉に入れて少しは空腹になったかな。
夕食は「水音」という部屋からほど近い会場へ。懐石なんて、どきどきしてしまう。
メニューを見て、美味しいんだけど腹一杯、というレストランあるあるが脳内を駆け巡った。楽しみという気持ちの裏で、家族みんながやや焦っているのがわかる。
ここでふと気づく。こちらのお料理、美味しいだけじゃなくて量がちょうど優しいと!!家族大歓喜。
父と末っ子は、父さんの声がでかい、うるさい、このくらい会話はしてもいいだろ、といつものように喧嘩していた。確かに目に見える範囲にお客さんがいないという素晴らしい席だったけど、ここで喧嘩するのはやめてくれよな。
炊き込みご飯は、残った分を五つのおにぎりにしてくれた。どう考えても食べきれなかったからありがてえ。
ごちそうさまでした!!お腹いっぱい〜〜〜ということで、間髪入れずに温泉へGO!
妹も誘って、まずは別棟西館の露天風呂にいくことに。河鹿の湯というところだ。
露天風呂は、空が突き抜けて見えるわけではなく、屋根とスノコでゆるく覆われていた。建物のいちばん端っこにあるので、一人で来なくてよかったなとちょっと安心した。こういう時賑やかな妹には感謝。
三十分くらいゆっくりあったまったところで、今度は内湯へ向かう。ここのお宿は同時に泊まっている人も少なく、お部屋でゆっくりする人も多いのか、本当にお風呂が空いている。とても寛げて大満足だった。
内風呂ではやっと髪まで洗い、さっぱりしたあとは延々と妹の恋バナを聞いた。いやあ、若いい!!ってなる。久しぶりにこんなに姉妹で話したなあ。
部屋に帰って、冷蔵庫の中の無料のポカリとペプシをそれぞれ飲み干した。また明日温泉に入るために、私は寝ます。
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翌朝、六時半のアラームで起きて、とりあえず部屋風呂に入る。家族が寝静まる中で、祖母の介護ですっかり早起きの習慣がついた母だけが起きてきた。
前日の夜には妹いわく、「でっけえバッタがいた!!」という外と直につながっているそこを恐る恐る覗く。
どうやら朝になって虫さんの多くは川に帰っていったようなので、あとは目を凝らさないようにゆったりお湯を感じる。たまに窓をよく見るといろんな虫さんがまだそこにいらっしゃったりもした。
さてさて、私は朝食前にもう一箇所温泉を巡らないといけない。昨日は男性用だった露天風呂だ。
私はどんな時でも温泉を一番に優先する温泉アスリートなので、早起きや入り過ぎなどは気にしない。制覇しないと帰れない。
朝温泉に入るのは父と私だけなのでダメ元だったが、後で羨ましいと言われても嫌なので妹には声をかける。
すると、今まで一度もついてこなかった末っ子が行くという!雨でも降るかと思った(実際前日の晴れが嘘みたいに降った)
敷地内には歴史的な展示もおおく、その横をすり抜けて階段を降りていくと、あった。
温泉は、またしても貸切状態で入れた。どこの温泉にもタオルが備え付けで部屋から持っていかなくてもいいのも大変ポイントが高い。
これぞ露天!という感じの青々とした空がひろがっていて、短い時間を惜しみながら浸かった。
さてさて、温泉という至福のミッションを達成し、お腹ペコペコで朝ごはんを迎える。昨日あんなに食べたのに!!
近年敷地の中にベーカリーができたとのことで、パンが食べられる洋食を選んだ。
パンを食べ過ぎているのは分かっているので、意図的に記憶は喪失させてもらう。あんなにお腹がすいていたのに、最後のデザートをとりわすれるくらいには最後はお腹いっぱいで苦しかった。
とても暑くて、夕べの涼しさが嘘のようだったけれど、ゆっくりと部屋に帰ってバルコニーから川を眺める。
あっという間のチェックアウトだ。家族とひさびさにゆっくり過ごせたし、いっぱいお話しできたし、何より父と母が楽しそうでよかった。
いつかはこういういい旅館に、私が連れてきてあげたいものだなあ。
帰宅後
素敵な写真を妹に撮ってもらったので、Twitterのアイコンを数年ぶりに変えてみた。
▽今回のお宿▽
東武や Resort & Spa Izu さん
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