漫画の校正
文字がメインの話は教本から体験談と調べると見つかりますが、漫画の校正はそうでもありません。
なので今回は参考レベルで恐縮ながら漫画の校正について書き残しておきたいと思います。
さて本題。
漫画も校正を行います。連載の折にはそのままになっていたところが、全体を通して見た時に矛盾していたところが単行本では直っているのはこのためです。
漫画校正では小説やエッセイなどの文字だけの媒体と同じ見方をする箇所と違った視点で見る箇所があります。
以下、何をどう見るかを紹介していきたいと思います。
・誤脱字(小説漫画共通チェック箇所。以下共通チェック箇所とのみ記載)
誤字や脱字がないかチェックします。ルビは合ってるのに漢字が違う、なんていうこともあるのでしっかり見る点です。文字の大きさもあってシレッと誤変換や打ち損じがまじっていることがあります。
・誤脱字、手書き文字編(漫画独特)
漫画の場合コマの空いたところや吹き出しの隅に手書き文字が足されることがあります。勿論そこも見ます。ただ、文字の大きさが小さいことと手書きによるブレのせいで画数が一つ足りないように見えるですとか、略字になっているですとかの瑣末なものは許容します。
明らかに間違っている場合(漢字が違うレベル)は指摘出しをします。
・固有名詞などの事実確認(共通チェック箇所)実在の人物の名前から経歴、土地の名前、鉄道駅名などを確認します。
・実在のものがマイナスイメージになってないか(共通チェック箇所)
上記の事実確認の範疇になります。固有名詞は実在のものと合っていたとしても、それが不当に貶められている場合は注意喚起をします。
特定の商品などを取り上げて「使えない」「役に立たない」などマイナスイメージが付いていると感じたらそれが実在のものであるか気をつけます。
・差別表現(共通チェック箇所)
差別用語や差別表現に注意喚起を行います。ファンタジーやフィクションであろうとも明らかに現実世界の特定の人種を描いていると分かるものに対する差別表現にも気をつけます。
・名称統一(共通チェック箇所)
物語を通じてキャラの名前、土地の名前、建物の名前、道具の名前などが合っているか見ます。
漫画の場合、連載の中でキャラの名前が前と違うなんてこともままあります。表札の名前など手書き文字の箇所も気をつけたいところです。
・内容矛盾その1(共通チェック箇所プラス漫画独特の箇所もあり)
物語を通じて話の内容が矛盾していないかチェックします。状況はもちろん、登場人物の発言にも気をつけます。
漫画に関しては絵との照合が大事です。道具の持ち手が前後のコマで違うとか、描かれている絵とキャラの言ってることが噛み合っていない。こういう箇所に気をつけます。以下具体例を挙げます。
「右手に持った」とキャラが言っているのに絵では左手に持っていないかどうか(数コマ挟んでいる場合は持ち替えたと解釈できる可能性がある)。
右打ちのバッターが右のバッターボックスに立っていないかどうか(ややこしい)。
時間軸として連続しているのに前後のコマとキャラたちの立ち位置が変化していないかどうか(たまに瞬間移動します)。
首飾りを着けているキャラが明らかに首飾りが見える構図なのに着けていないところがないかどうか(細かいアクセサリ類は時折描き逃しがあります。ただし、角度的に見えないのはもちろんセーフなのでそのままにします)。
気にし始めるとチェック箇所かなり増えますが、文字以外を見るというのはそういうことなのでしっかり押さえます。
・内容矛盾その2(共通チェック箇所プラス漫画独特箇所もあり)
人数や日付、番号などの整合性を確認します。何か出る度に都度メモしておくと確認の際に役立ちます。
漫画の場合、連載の中で矛盾する可能性があります。その場合はどの基準に揃えるかの提案をします。また、数字が合っているかどうか自体は勿論、たとえば「何人いるか」の場合は絵に描かれた人数も含めて確認します。背番号のように服装とセットになっているものは出る度に確認します。
・各話のサブタイトル(共通チェック箇所)
誤字脱字も気にしますが、時折キャラクターの名前が入っている際は本文と差異がないか気をつけます。
・字形(漫画独特)
基本的にそのままです。フォントの種類によっては同じ字で正字と異体字が混じることもありますが、指示がない限り特に揃えません。
・送り仮名やルビ、特殊ルビ(共通チェック箇所)
これも柔軟に対応します。小説よりも漫画のセリフ内の方が口語体のためよく見掛ける気がしますが、表現としてその時だけの特殊な読ませ方、コマのスペースを考えた送り仮名の文字数調整などは著者の意図を尊重しそのままとします。
・数字の漢数字、算用数字統一(共通チェック箇所)
指示があればそれに従います。また、算用数字指示があっても慣用的な使い方や数を増やせないもの(「たった一度」の「一度」)は漢字のままにします。
・中途半端なセリフ(共通チェック箇所)
表現の一環ではありますが、漫画の場合は別途紙面の都合で言葉が略されることがあります。ありますが、略しすぎて意味が通じにくいところが出てきます。その際は補足する形で提案します。
・ルビ初出のみとの指示がある場合(共通チェック箇所)
指示があればそれに沿って作業をします。ただし、例外はあり。意味を強調するための演出として必要なルビと思えたならば2回目であろうと「既出ですがここはママですね?」などと確認を入れるに留める。
・慣用表現(共通チェック箇所)
慣用表現と似ているようでいて違っている場合且つ状況的にあえてもじったようでもない場合は指摘を入れる。
・図や表、地図やトーナメント表(漫画メイン)
要注意箇所。書き込まれた数字や名称が物語を通じて合っているかしっかりと確認する。また、手書きによるミスにも気を配る。
・乗り物や兵器の型番(共通チェック箇所)
型番を繋ぐ部分は二分ハイフンにする。時折ダーシになっていて間延びして見える。
・アルファベット略称への正式名称明記(共通チェック箇所)
何の略称か正式名称を提案する。字のみの小説などではアルファベットの後にカッコ囲いで入れる形がよく見られるが、漫画の場合はスペースの関係でルビとして付けるよう提案。
・アルファベットの綴り(共通チェック箇所)
漫画の方が頻度多いと思われる。ヘボン式か訓令式か確認しながらチェック。背景や名札にサラッと書いてあったりする。どれもそれっぽく見えるので注意する。
さしあたり以上になります。
漫画は文字プラス絵で表現してあり、不慣れであるといざ取り組んだ際に着目点に気付くまでは見落としがでるものです。
少しでもその予防になれば幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?