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むにみずべ 茨城編01.2 霞ケ浦葦舟世界大会「舟を漕ぐ」

さてさて、いよいよ自作葦舟によるレース、
スタートです。

前編では葦を刈って、舟を編みました。
こちらもぜひ。


舟に乗る

迎えた決戦の朝。
大会2日目は作った葦舟で速さを競うレース
昨日の朝は何でこんな休日なのに朝っぱらから起きなきゃならんのだと思っていましたが、今日は違います。我々には使命があります。

朝から目はギンギンです。
くしくも空は一点の曇りなき快晴
視界には優勝の二文字以外ありません。

意気揚々と会場に乗り込むと、開会式のあと少し舟に試し乗りできる時間がありました。

他のチームも続々と舟を岸に並べます。

我らが葦舟は中でも立派なのでは?と思わせる出来栄えです(親バカってこういうことか)。寒さもあってか振幅大きめの武者震いが全身に走ります。

3回沖合のポールを周って、コースを往復するタイムを競う大会。
あらかじめ決めておいたチームの漕順は2人ずつ3組で各1周するものでした。

一回乗ってみようと2人で乗り込みます。
すると葦舟の左右のバランスが若干ずれていてどうにも安定しません。

おや中々難しいぞ。。

そして2人で漕ぎ始めるや否や、危険な角度まで斜めに傾きます。

何とか体勢を建て直しもうひと漕ぎ。
今度は反対側に倒れそうになります。危ない危ないセーフ!と思ったその瞬間。わずか三漕ぎ目で横転
3月初頭の極寒の霞ヶ浦に放り出されました

寒い。寒すぎる。

思えば真冬のフィンランドで、現地の友人に「スイミング」に誘われ、凍った川にぽっかりと空いた穴の中に突っ込まれた時以来の生命の危険さえ感じる寒さ。
でもあの時はもっと心の準備ができていました。

サンタ村がある北極圏のロヴァニエミ
ここで真冬の川に突っ込まれました。

まさか昨夜あれだけ皆んなで自画自賛した愛舟がこんなあっけなく横転するなんて…

悔しさが募りつつも勝負は勝負。
急遽2人乗りは不可能であるとして各1人乗りとすることに変更しました。

直前にゴタゴタがあろうと、非情にも時間は過ぎます。

そしていよいよ、
決戦の火蓋が切って落とされました。
第4回葦舟世界大会の始まりです。


舟を漕ぐ

青い空には優勝の二文字しか見えません。

第一漕者は、舟漕ぎに慣れているだろうということで、ムニです。

スタートと同時に少し沖合に出て他の舟をかわした後、全力で湾の外に向け漕ぎ出しました。

横目で見ると先には1艘のみ。
優勝はまだ手の届く位置にあります。

いけるぞ…!

しかし湾を出ると途端に船の舵が効かなくなりました。
葦が水を吸って重たくなると同時に、波の影響をもろに受けるためです。
特に我々の舟は2人乗りを目指して大型で作ったので、どんどん重たくなります

さらに普段は手漕ぎボートなど楽しく漕いでいるものの、競漕なんてしたことがなく、腕の疲労がたまって来ました

ふと背後に、初っ端に突き放したと思っていた後続の影を感じます。沖に出た後、いつの間にか後ろの舟にどんどん距離を詰められていました。

迫り来る後続艇

抜かれる…そう思ったその時、
上から声援が聞こえて来ました。

がんばれーーーっ!

何とチームメイトの1人が、スタート地点の岸から橋の上まで応援に駆けつけたようです。

この辺りまで駆けつけたチームメイト

なんだか少年漫画に出ているような気分になりました。限界を迎えた時に仲間の声でふと視界が開けるような。

しかし視界は開けても、腕は既に言うことを聞きません。
いつもあんなに楽しく漕いでいるパドルが全く進みません。
わざわざ作った足置き場で踏ん張り最後の力を振り絞りますが、既に逃げ切るだけの力はありませんでした。
どうやら漫画と現実って違うみたいです。

インコースを獲って喰らいつくも、徐々に抜かれていく舟。
一瞬で過ぎ去らずゆっくりと、
でも確実に差が開いていきます。

なす術はもうありませんでした。

無念の3着で岸に戻る

ヘロヘロになってどうにか帰還。こんなに疲れる舟は初めて乗りました。近代文明の有り難みを感じます。

その後は他のチームを全く寄せ付けない圧倒的な漕ぎを見せたチームが優勝し、我々は健闘虚しく5位になりました。

チームメイトも本当にお疲れ様です。そして参加ありがとう。
世界5位、FIFAランキングで言うところのブラジル(2024.02現在)。そう聞くとだいぶ誇って良いレベル。


運命の技能部門発表

残念ながらスピードでは負けてしまいましたが、我々の愛舟はまだ負けたわけではありません。
そう我らが本命、技能部門の表彰が残っています。

運命の発表が始まります。

どうやら運営側としては技能部門に、3チーム候補があったとのこと。
そして、うち一つは大会史上初の足置き場を作ったとのこと!

さぁ土俵に上がりました。
(建築ですが)設計者として日々技術力で飯を食う6人が結集したチーム、ここが正念場です。無意識に手を合わせ、久しぶりに本気で念じてしまいました。

栄冠を、獲ってくれ!

そして呼ばれたのは…

舟の構造を大胆に変えて来た別のチームでした。

聞けば全然違う作り方をしていたようで、最後にちょこっと足置き場を足したような代物ではありませんでした。

スピードと技能で二冠を取り、優勝杯二つ使って乾杯しちゃおうかと言っていた昨日の自分が恥ずかしくなりました。


世界大会の壁の高さ

やはり世界大会でした。スピードでも技能でも、壁の高さを見せつけられました。

これが世界か。

付け焼き刃で戦えるようなレベルではありません。悔し涙で前が見えないような気持ちで来年のリベンジを誓いました

来年こそは。

とりあえずもしこの一年で自己紹介の機会に預かりましたら、葦舟世界大会第5位ですとお伝えしたいと思います。皆さんきっと恐れ慄くことでしょう。サインも今から練習しておきます。

以上葦舟世界大会でした。



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