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ボロブドゥール遺跡の古代文字から読む失われたスンダランド文明の謎/有賀訓

遺跡の最下壇から見つかった奇妙なブロック石。
そこに刻まれた謎の文様は、遠い過去からのメッセージだったのか?

文・写真=有賀訓

裏庭に放置されていた奇妙な4つのブロック

 インドネシア・ジャワ島中部の「ボロブドゥール遺跡」を筆者が最初に訪れたのは1995年8月。ユネスコ世界遺産登録から4年が過ぎ、一辺120メートル、高さ40メートルを超す立体マンダラ型建築物の威容が復元され、遺跡観光地としてにぎわっていた。
 このアジア最大規模とされる石造仏教施設の本格的な修復作業は1973年から始まり、1984年には一応の完了が発表された。しかし筆者が遺跡周辺の史跡公園内を散策した際には、見学客が足を向けない離れたヤシ林や小さな展示室を併設した遺跡管理事務所裏などに、なぜかまだ大量の古びた石の遺物が置いてあった。
 ざっと見渡したところ、それらは神仏と神獣の立像・座像、ヨニ(女性器)とリンガ(男性器)を象徴したヒンドゥー教の祭祀台、大小のブロック石などで、いずれは元あった場所へもどされるのだろうと想像した。

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遺跡内には立像・座像、ヨニ(女性器)、リンガ(男性器)を象徴した祭祀台などが見られた。写真はリンガと思おぼしき石。

 ところが、さらに公園内を歩きまわっていると、どうも納得がいかなくなった。そこには考古学の研究に必要なはずの整理番号や記号が、まったく見当たらなかったからだ。
 ボロブドゥール遺跡の修復計画では、解体した石材パーツすべてに番号を記入し、コンピューターで登録管理していると聞いていた。実際、見てきたばかりの遺跡本体の石材のいくつかには、復元後に消し忘れたらしいローマ字と3〜4桁の数字が読み取れた。それに対してバックヤードの石製遺物が無印なのはどういうわけなのか?

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事務所の裏庭に並べられたたくさんの石。奇妙なことに、整理番号が割りふられていない。

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