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無知と無関心は誰かによってつくられている

今朝の朝日新聞の<論壇時評>で、政治学者の宇野重規さんが、
「無知学」について紹介している。

無知学は、1992年にスタンフォード大学で始まり、
これまでの学問が「何を知っているのか」を問題にしていたのに対し、
「何を知らないのか」と問う学問。

宇野さんは無知を3つのタイプに分けている。
・単に知識が欠如している
・社会的な優先順位が低い
・意図的に作り出されている

たとえば、ジェンダーについての問題はどうだろうか。
「LGBTQ理解増進法」では、G7広島サミットもあったため
海外からの圧力が強まったから前に進んだものの、
その中身の問題点については、
誰がどれだけ無知のままにされているか。
それは、意図的につくられた無知なのか、
それとも優先順位が低いのか。

ロシアのウクライナに対する戦争を非難する一方で、
アメリカの「テロとの戦い」では、この20年間で民間人が36万人も犠牲になっている。
ひとつの地方都市が空っぽになるぐらい殺されているし、
最初にドローンを使ったオバマ元大統領は「ドローン大統領」と批判されているのを知らないのは、
・単に知識が欠如している
・社会的な優先順位が低い
・意図的に作り出されている
のどれだろうか。

また同じく、ロシアのウクライナに対する人権蹂躙を批判する一方で、
ミャンマー国軍のミャンマー国民に対する人権抑圧には、
見て見ぬふりをしているのか、知らないのか。
いずれにせよそれは、
・単に知識が欠如している
・社会的な優先順位が低い
・意図的に作り出されている
のどれだろうか。

出入国管理及び難民認定法の改悪問題についても。
この国会で成立した改正入管法は、
前の国会で廃案になった法案をベースにしている。
なぜ廃案になったのかというと、
国際基準を満たしていないから、という理由だった。
そのポンコツ法案を骨子にして、
「そもそも日本に難民なんて存在しない」
という難民認定の審査委員の言葉を基礎にして、
そうやって成立したことを知らないのは、
・単に知識が欠如している
・社会的な優先順位が低い
・意図的に作り出されている
のどれだろうか。

わたしたちが何を知ってて、何を知らないかと、いま一度、考えるべきだろう。

2023年6月29日付朝日新聞「<論壇時評>『人権小国』にて 何を知らないか、問う」

宇野さんはこの論文をこうしめくくっている。