ティルドラス公は本日も多忙⑤ 嵐の年、国滅ぶ時(6)
第二章 帰途の出来事(その1)
オーネドゥマルの港から船に乗ったティルドラス一行は、風にも恵まれ、四日でピウ湖を縦断して無事トーサラーの港に到着する。陸路をたどれば半月以上かかる距離であるから、大幅に日程が短縮できたことになる。
この地で一度船を下りたあと、今度は喫水の浅い川船に乗り換え、モイ河を下ってミストバル家の国都・サッケハウまで旅することになる。こちらも陸路で十日ほどの行程が三分の一の日数で到着できる見込みで、国元でサフィア一派の専権が強まっている今、なるべく帰