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回復期リハ病棟におけるリハ料包括化の流れ

本noteは、美原記念病院の石森卓矢ら(2023)の「回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーション料包括化に関する検討」(社会保険旬報 No.2896:2023.7.1)の要旨である。

回復期リハ病棟の役割は、一定期間の密度の高いリハによりその効率化を図り、ADL能力の向上による寝たきり状態の予防と早期退院、家庭復帰を促進することである。

石川誠:回復期リハビリテーション−病棟への意義−.日本臨床64,774-777,2006

回復期リハ病棟は、2000年度の診療報酬改定で制度化された病棟である。その後、リハ専門職の配置が進み、現在では豊富なリハ量を担保することが可能となった。しかし、必要な患者であっても1日9単位が上限として設けられていることや、チーム医療に対する評価が必要ではないかとの意見などから、日本慢性期医療協会は、回復期リハ病棟におけるリハ量包括化を提案している。

回復期リハ病棟の役割である、ADL能力の改善とリハ量の関連を示した調査報告は過去にいくつもあるが、石森氏らの検討の新規性は、多変量解析による統計分析や、患者の重症度別およびリハ投入時期について詳細に検討しているところである。
 当該論文の結果では、① ADL能力向上の規定因子として抽出されたのは、1日あたりのリハ単位数、年齢、発症から回リハ病棟入院までの日数、入院日数であった。② FIM合計利得点数と1日あたりのリハ単位数の相関関係は、重症患者群と中等症患者群で有意、軽症患者群は有意ではなかった。③ FIMを1点改善させるためのコストは、入院から1週目は約4万円であったが、その後時間の経過とともに増加して退院1週間前は20万円を超えていた。

石森卓矢、他:回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーション料包括化に関する検討.社会保険旬報2896,2023.7.1
石森卓矢、他:回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーション料包括化に関する検討.社会保険旬報2896,2023.7.1
石森卓矢、他:回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーション料包括化に関する検討.社会保険旬報2896,2023.7.1

これらの結果を受け、石森氏らは以下のように締めくくっている。

回復期リハ病棟に求められる効率的に患者のADL能力を改善する役割を果たすには、積極的に疾患別リハを投入することは必要であるが、患者の重症度やリハの投入時期によってその効果は異なることに留意しなければいけない。目下議論されているように疾患別リハを回復期リハ病棟入院基本料の中に包括化するのであれば、急性期DPC制度のような重症度や入院期間に応じた単価設定が設けられることが望まれる。このような制度改定は、入院期間短縮に対しても効果が期待でき、医療費の適正化に繋がると思われる。

石森卓矢、他:回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーション料包括化に関する検討.社会保険旬報2896,2023.7.1

私見では、時間の経過とともにリハ専門職が直接的に関わる直接的介入は減らしていく一方、対象者の主体的な活動機会への参画や家族の関わりなどの間接的介入を増やしていくマネジメントがリハ専門職には求められると考えている。
 つまり、入院期間が長くなるにつれてリハ量は減っていったとしても、マネジメントによる間接的介入の量は増やしていく必要性があるのではないか。

現在は、リハビリテーションのアウトカムとしてFIMが取り上げられ、FIMを改善させる介入だけで有効性が論じられている。しかし、FIMだけがリハのアウトカムではないため、FIM以外のアウトカムに対するリハの有効性についても積極的に論じられるべきである。
 住み慣れた場所ではなく、回復期リハ病棟に入院してまで行わなければならないリハビリテーションとは何か?この論点に対する検討が、今後必要になるものと考えている。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(参考)石森卓矢、他:回復期リハビリテーション病棟のリハビリテーション料包括化に関する検討.社会保険旬報2896,2023.7.1
※本noteは上記論文の一部を引用した。詳細は上記論文を是非ご確認ください。

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