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持続可能な組織マネジメントの実践と反省

第9回クリニカル・クラークシップに基づく作業療法臨床教育研究会研究大会が開催され、特別講演として「持続可能な組織マネジメントを目指したわれわれの実践と反省」についてお話をさせていただきました。
 クリニカル・クラークシップに基づく作業療法臨床教育研究会は、以下の趣旨で設立された研究会です。

(前略)作業療法教育の代表的な教科書である作業療法全書(改訂第3版)は13巻、3600ページを超えており、学生が学ぶべき量は膨大となりました。また慢性的な実習地不足は、臨床教育者へ過度な負担を強いる結果ともなっています。(中略)さらに、ケースレポートを中心とした指導は、終業後の1対1によるフィードバックとなりやすいため、学生からみるとパワーハラスメントやアカデミックハラスメントと捉えられかねない状況を作ってしまいかねません。このように高度な知識と技術を備えた作業療法士の養成という社会からの要請に、作業療法士の教育体制は十分に応えられていないのが現状だと思われます。
 しかし、(中略)知識偏重型あるいは教育者中心の教育システム(pedagogy)から、「作業療法を学ぶ学生は成人であり、学ぶためには長期に渡る修養と成熟を求められる」という学習者中心の成人学習システム(andragogy)へという教育観の転換が図られてきています。この転換は、養成校教育と臨床教育が車の両輪となって進めていかなければなりません。(中略)
 この会は、養成校教員と臨床教育者が協力して、学生が主体的に学び、臨床経験を深め、作業療法士としてのやりがいを感じられるような効果的な作業療法の臨床教育を探求し、もって作業療法士教育の向上に寄与しようとするものであります.

<https://ccs-ot-education.jimdofree.com/研究会概要/>の一部を引用

社会の要請に見合うOT有資格者の育成の課題は養成校のみではなく、われわれ臨床教育を行う側の課題でもあると感じます。
 臨床教育を行う医療機関等では、教育法の知識がある臨床教育者は少なく、日常業務にも時間的余裕がありません。このような状況では、臨床教育者にも過度な負担がのし掛かるため、変化し続ける社会の要請に応え得る作業療法士の育成は難しくなると感じます。しかし、このような負のスパイラルはただ待っていても好転しません。臨床のマネジャーを中心とした「仕組みとマネジメント」が悪循環を止める一つの契機となり得ると私は感じます。ただし、そのためには、やり遂げる覚悟と失敗を活かし続ける姿勢が必要ではないかというのが今回の講演の趣旨でした。

第9回クリニカルクラークシップに基づく作業療法臨床教育研究会研究大会での筆者講演資料

私の考える養成校と医療機関等の協業のあり方は、医療機関等の教育法の知識不足を養成校が支援し、医療機関等が時間的余裕の創出と人材育成の風土と文化をマネジメントする。そして、医療機関等は、そこで生じた余力を養成校側の課題である慢性的実習地不足や学生の知識と技術の未熟化の緩和に役立てることであると考えます。そのためには、上手くいかなくても最適解を求め続ける医療機関側の覚悟が実現の鍵だと思うのです。
 臨床現場のタイムスタディーを行えば、誰が何にどのくらいの時間を要しているのかが定量的にわかります。多くのスタッフと双方向的なコミュニケーションをとれば、減らすべき負担は定性的にわかります。そして、慣例や常識を疑えば、改善の伸び代を大きくすることができます。ただし、すでに習慣化した運用を変えるのは本当に大変です。「やる」と意思表示したその時から、さまざまな対立や想定外のリスクをすべて引き受け、どんなに面倒でも丁寧に解決し続けることが必要となります。
 本日お話しした幾つものわれわれの実践と反省を、ぜひ踏み台として参加者の皆さまには役立てていただきたいと感じています。同じ轍を踏む必要はありません。そして、マネジメントには正解がないかもしれませんが、クリニカル・クラークシップにはマネジメントが必須であることを今日の議論の中で確信しました。素晴らしい機会をいただき、ありがとうございました。
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